Yahoo!ニュース

米国Amazon「広告が配信される格安スマホ」販売:初の「プライム会員向けスマホ」は売れるのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

米国Amazonは2016年6月29日に、プライム会員向けにAndroidスマホ2機種を特別価格で販売することを発表した。2016年7月12日からアメリカで発売する。

Amazon初のPrime Exclusive Phone

Amazonが提供するのは、レノボの「Moto G」とBLUの「R1 HD」の2機種で、それぞれ50ドルずつ値引きして販売する。レノボの「Moto G」は199ドルが149ドルに、BLUの「R1 HD」は99ドルが49ドルと特別価格である。

Amazonではこの2機種をプライム会員専用向けの初の「Prime Exclusive Phone」と位置付けている。アメリカで7月12日から販売開始する。スペックはミドルエンドとローエンドだ。BLUは日本では全く馴染みのないメーカーだが、2009年に設立されたアメリカの会社で中南米やカリブ諸国では非常に人気があり、アメリカでもヒスパニックなどを中心に多く利用されている。

Moto GとBLU R1 HD (Amazonリリースより)
Moto GとBLU R1 HD (Amazonリリースより)

スマホに広告配信、アプリがプリイン

この2機種がどうしてプライム会員専用で、50ドル値引きをしているのかというと、スマホのロック画面に会員向けの広告が表示される。もちろん、広告をタップするとAmazonの商品ページにリンクされて購入することが可能である。またAmazonが提供しているPrime Music、Prime Photosなどのアプリがプリインストールされており、端末から削除(アンインストール)できない。広告を表示しないようにするためには、値引き分の50ドルを返金しなくてはならない。

Amazonは2014年6月にオリジナルスマホ「Fire Phone」を199ドルで販売開始した。アメリカだけでなく欧州でも展開を試みたが、全く市場から受け入れられずに、2015年9月に販売終了している。「Fire Phone」は売れ残り在庫の減損処理費用1億7,000万ドルにもなったので、後継機種は当面出てこないだろう。

プライム会員はこの格安スマホが欲しいか?

今回は他メーカーが製造したスマホにAmazonの広告配信とアプリをプリインしたスマホを販売するので「Fire Phone」とは異なる。メーカーの協力が必要で、Androidだから実現できることであり、iPhoneではAppleの規制があってこのようなことは出来ない。

ただプライム会員は年間100ドルで配達時間の短縮や音楽や動画のストリーミングなど様々なアプリを利用できるサービスだ。すでにプライム会員になっているアメリカ人はすでにハイエンドなスマホを所有しているだろうから、Amazonの広告が配信されるから格安という新機種を購入するのだろうか。BLUのような格安スマホを利用しているプライム会員はどれほどいるのだろうか。

むしろ広告配信やアプリのプリインは要らないが、例えば特定のスマホからAmazonで商品を購入したら、その商品が1割引きになるというスマホを販売した方が喜ばれるのではないだろうか。それならスマホの価格が少し高額でも「Amazonでの買い物で元が取れる」から受け入れられるだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事