Facebook、米国で太陽光ドローン「Aquila」初飛行に成功:僻地でのネット接続に大きな一歩
Facebookは2016年7月21日、太陽光を利用して飛行する無人機(ドローン)の試験飛行をアリゾナ州ユマで実施し、成功したと発表した。ドローンの名前は「Aquila」で、2015年7月に僻地でのネット接続を目指して、太陽光によるドローンの計画を明らかにしてから、約1年後に初飛行を達成した。
太陽光ドローンで僻地でもネット接続を可能に
太陽光発電のパネルを装着したドローンの翼はボーイング737よりも長く、炭素繊維で製造されており約500キログラムと軽量である。Facebookは今回の試験飛行では、約655メートル上空を約90分間の飛行だったが、商用時には、1回の飛行で60,000フィート(約18,000メートル)を90日間(約3カ月)飛行可能とすることを目指している。ドローンが飛行している直径100キロ圏内でネット接続を可能とする予定だそうだ。まだ技術的な課題がいくつか残っており、具体的な商用開始時期や飛行する地域は明らかにされていない。もちろん商用開始においては技術的課題以外にも規制の問題などもあるだろう。
Facebookは太陽光ドローン「Aquila」で目指しているのは、僻地でのネット接続だ。現在、世界の人口70億人のうち、Facebookによるとネットに接続できない人が約40億人で、僻地に住んでいてネットに接続できない人が約16億人だ。都市部などに住んでおり、貧しくてネットに接続できない人々は、所得が向上すればネット接続できる可能性は高いが、僻地に住んでいる人は所得が向上しても、簡単にネット接続はできない。
そもそも現地の通信事業者が僻地の方までネット接続を行うためのインフラ整備を行わないことが多い。モバイルだから基地局を設置すればいいだけだと思うかもしれないが、現地の通信事業者としてもあまりにも僻地に基地局を設置するのは、インフラの維持や運用保守など、僻地から生まれる収入を考慮するとコストパフォーマンスは決して良くない。そのような僻地に16億人以上が住んでいるようだ。
売上の95%以上が広告収入、世界中の情報が欲しいFacebook
Facebookはそのような僻地に住んでいる人々や貧困でネットに接続できない人々にもネットに接続する環境を構築するために「Internet.org」を立ち上げて、今回のようなドローンによるネット接続や現地の通信事業者との提携によるサービス提供などを行っている。
但しFacebookは慈善事業としてこのような僻地や貧困層へのネット接続インフラを提供しているのではない。現在、全世界で15億人以上が利用しているFacebookの売上の95%以上が広告収入である。Facebookとしてはネットに接続してもらわないと、ビジネスが始まらない。
世界中の誰もが料金を気にせずにネットに接続してFacebookを利用してもらうことによって、そこから多くの情報を収集することができる。誰と友達でどのようなことに興味があり、どこにチェックインして、どのような情報発信をしているのかなどのあらゆる情報を収集することによって、適切な広告配信も可能となる。貧困層だから広告の売上としては大きな収入は期待できないかもしれないが、彼らから膨大なデータや情報を収集することできる。それら収集した莫大なデータや情報を元に人工知能を強化し、メッセンジャーのボット開発などに反映することができる。
そのためにはまずネットに接続してFacebookを利用してもらうことが重要なのだ。太陽光ドローンによる僻地でのネット接続という巨額な投資も、慈善事業ではない。Facebookにとっては、これから開拓できる40億人市場に向けた重要な投資なのだ。
但し、ネットに接続できない人々や僻地の居住者は中国にも多い。太陽光ドローンが成功してインフラ整備を提供できる環境が整っても、中国ではそもそもFacebookにアクセスできない。このドローンも中国上空で飛ばすことは現時点では不可能だろう。