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iPhone出荷減で2期連続の減収減益:「iPhone依拠からサービスへ」変わるAppleの収益構造

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Appleは2016年7月26日に2016年Q3(2016年4~6月期)の業績発表を行った。

売上高は前年同期比15%減の423億5,800万ドル(約4.3兆円)、純利益は27%減の77億9,600万ドル(約7,800兆円)と減収減益だった。2四半期連続の減収減益となった。

日本だけが前年同期で出荷増のiPhone

売上は前年同期比では日本だけが23%増で、それ以外の地域全てで売上が減少した。日本も前期(1~3月)と比べると減少している。Appleにとって日本は重要な市場である。

Appleにとってはアメリカに次ぐ巨大市場である中華圏(中国、香港、台湾)は重要な市場だが、その中国でも売上が前年同期比33%減少と大きく減少している。

前期の1~3月期は、中国は春節(旧正月)シーズンであらゆるものがよく売れるシーズンだったが、この時期にもiPhoneの売上は芳しくなかったが、連続して中華圏市場ではiPhoneの売上は減少している。もっとも4~6月は日本では入学シーズンだから端末出荷が伸びることもあるが、海外ではそれほど出荷が多い時期ではない。見栄っ張りで新しいもの好きの中国人だからiPhoneの新機種が販売されるのを待っていて、買い控えたことが大きな要因だろう。

まだ正式には明らかにされていないがiPhone7が出てからAppleの売上が各地域でどのように推移するかが注目だ。

▼地域別での売上高とシェアの推移

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)

Appleに占めるiPhone割合が57%までに低下、サービス売上の比率増加

Appleの売上高423億5,800万ドルのうち、240億4,800万ドルがiPhoneで、Appleの売上高全体の56.8%だった。Appleの売上に占めるiPhoneの割合が減少している。2015年Q1の頃はAppleの売上のうちiPhoneの売上が約70%もあったが、だんだんとAppleの売上の構造が変化してきている。

iPhoneの売上に占める割合が減少している一方で、増加しているのがサービス(AppleCare、Apple Pay、ライセンス事業など)だ。現在ではiPhoneに次ぐ売上の59億7,600万ドルで、全売上の14.1%を占めており、MacやiPadの売上よりも大きい。Appleの売上がいつまでもiPhoneに依拠するのでなく、サービス分野へシフトしている。

iPhoneの売上が世界規模で減少しつつあり、いつまでもiPhoneに依拠できなくなっている。これからもAppleの収益構造は「モノ作り」からサービスへと大きく転換していくだろう。

▼製品別での出荷台数、売上高および売上高に占めるシェア

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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