加入者が鈍化したNetflix:これからも「お金を払ってでも見たい動画を定常的に配信」できるか
Netflixは2016年7月18日に2016年第2四半期(2016年4~6月)の業績を発表した。売上高は全世界で前年同期比売上高は28%増の21億500万ドルで、純利益は55%増の4,000万ドルだった。
純増数の伸び悩み
2016年第2四半期のNetflixの業績の一番のポイントは、純増数の伸び悩みだ。2015年の同時期には674万人増だったが、今期は168万人にとどまった。Netflixでは250万人増を予測していたが、大きく下回る結果となった。Netflixは新料金プランへの移行し、値上げしたことから解約率が若干上昇したことを要因に挙げていた。
Netflixは2016年1月から全世界130カ国でサービスを展開している。全世界で8,318万人の加入者がいるが、そのうち56.7%の4,713万人がアメリカである。そしてNetflixの売上の60%がアメリカ市場で、利益をあげているのもアメリカだ。サービス提供を開始したばかりの国外市場ではまだ赤字だ。新規顧客開拓や番組制作のコンテンツ費用がかかっている。つまりアメリカ市場で稼いだ利益を海外市場の開拓に投資している。
たくさんあるSVOD、差別化はどれだけ面白いコンテンツを提供できるか
動画配信サービスは、常に新しいコンテンツが求められる。新しい動画コンテンツがないとユーザーはすぐに飽きてしまいアクセスしなくなってしまう。しかも動画コンテンツは端末やネットワークの品質のように数値化して客観的に判断できるものではなく、「好き、嫌い、面白い、つまらない」とユーザーごとの主観によって大きく異なり、万人に受けるコンテンツはニュースやスポーツなど一部のコンテンツだけだ。
また競争も非常に激しい。アメリカは従来からケーブルテレビ(CATV)が主流だから、お金を払って動画コンテンツを視聴するという文化には慣れ親しんでいるものの、ネットでの動画配信が主流になった現在ではNetflix以外にも、Hulu、Amazon Primeなど多くのネットでの有料動画配信サービス、いわゆるSVOD(定額制動画配信、Subscription Video on Demand)が大量にある。さらにYouTubeには大量の動画がアップされており、無料で視聴できる。動画視聴はYouTubeだけで十分だという人も多い。さらに新興国などでは、まだSVODで課金してまで動画を見たいという人は限られている。近い将来、多くのSVODが淘汰されていくだろう。
これだけ多くの動画コンテンツがあっても、人間の時間とお金には限りがあるから、全てを見ることはできない。SVODの場合、自分が見たいものから優先的にお金を払って視聴することになる。つまらなかったら、すぐに解約されてしまう。そこでは、いかに他のSVODよりも興味ある、つまり「お金を払ってでも見たいというコンテンツ」を提供できるかが生き残りの鍵になる。どうしても見たいコンテンツであれば料金プランを改定して高くなっても支払ってくれる人はいる。
これからも「ユーザーがお金を払ってでも見たいというコンテンツを定常的に配信」していかない限り、加入者は増加するどころか減少してしまう恐れがある。そしてそのようなコンテンツを制作し、宣伝費用をかけてユーザーを獲得し、配信するには相当なコストがかかる。それがSVODの宿命であり、Netflixだけでなく世界中のSVOD提供企業の共通の課題だ。
広告収入に依拠する動画配信も厳しい時代へ
広告収入に依拠している地上波のテレビやネット動画配信も同じで「つまらないもの、興味ないコンテンツ」は見られないから集客できない。様々な動画コンテンツが氾濫し、有料であれ無料であれ自分が見たい番組だけを見るようになり、実際に多くのテレビ番組がかつてのように視聴率が取れずに苦慮している。
さらに視聴率が良いと言われている番組に広告を出しても、製品の売り上げ向上や認知度向上にほとんど貢献しないことから、多くの企業がテレビへの広告出稿のコストパフォーマンスに懐疑的で、他のプロモーション手段へ移行している。そのため広告収入に依拠している番組の方がこれからは厳しくなるだろう。