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Facebook、21歳以下限定アプリ「Lifestage」米国で提供:学校内交流アプリで何を目指す

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Facebookは2016年8月、21歳以下の若者のみを対象にしたアプリ「Lifestage」をアメリカで提供開始した。これは同じ学校に通学する学生同士がテキストでなくて撮影した動画でプロフィールが共有できるようだ。

22歳以上お断りの校内交流アプリ

Facebookが21歳以下向けにリリースした「Lifestage」はFacebookとはリンクしていないで、完全に独立している単体アプリだ。Facebookのアカウントがなくても利用できるようだ。そして22歳以上はアプリのダウンロードは可能だが、自分のプロフィール動画以外は見ることができないようだ。

自分の高校名を登録するだけで利用が可能で、同じ高校や近くの学校に通う学生同士のコミュニケーションを深めることを目的としているとのこと。他校の学生はロックが解除されないと、入ってこれないような仕組みになっているようだが、本当にその学校の学生かどうかを確認する手段はないようで、利用には電話番号やらの多くの情報登録が必要だが「なりすまし」もできるようだ。

ビジネスモデルが不明の「Lifestage」

Facebookは全世界で17億人以上が利用しており、売上の95%以上が広告収入だが、「Lifestage」のアプリは現時点ではiOSのみ対応で、無料で利用できるが、Facebookにとってのビジネスモデルは不明だ。Googleと同様にSNSを通じて世界中のあらゆる情報が欲しいFacebookとしては、高校ごとに通学している学生の情報や、そこでアップされた動画のデータを大量に収集して人工知能の開発を強化したいのだろうか。

一部の報道ではライバルのSnapchatへの対抗ともある。たしかにFacebookには傘下のInstagramという日本でもお馴染みの写真を共有するアプリがあり、若者に人気があるが、彼らもいつもスマホでそんなにたくさんの写真を撮っているわけではない。「Lifestage」も動画が中心のようだが、スマホが普及しているとはいえ、そんなにいつも動画や写真を撮影しているわけではない。

「Lifestage」は主に高校生向けに同じ学校や近くの学校の友人たちとのコミュニケーションを目的にしているようで、21歳以下に限定している。つまり特定の年代層の学校という限定されたコミュニティ向けアプリのようだ。学校を卒業してしまい、大人になったらもう利用できなくなるのだろう。Facebookとしては「大人になったらFacebookを利用して」と誘導したいのかもしれないが、それなら最初からFacebookを利用してもらった方が、大人になってからも年齢制限なく利用し続けてくれるだろうから効率的だろう。ネットの進化で若者でも大人と台頭に議論できるようになってきているし、さらに民族や思考など年々急速に多様化が進んでいるアメリカの高校生が同じ学校や同世代の友人らとのみ動画で情報共有したいのだろうか。特に若者に限定して年齢制限しているサービスやアプリでうまくいっているものは多くない。

「若者のFacebook離れが著しい」などと報じられているが、結局のところ若者も大人になったら全世界で17億人以上が利用して世界規模で「コミュニケーションのプラットフォーム」になってしまっているFacebookや傘下のメッセンジャー、WhatsAppに依拠せざるを得なくなるのが現状だ。

Facebook発の単体アプリは今度こそ成功するのか

Facebookは「Facebook」以外でうまくいっているのは、WhatsAppもInstagramも外から買収してきたものだ。Facebookは過去にもいくつかの単体アプリを開発してきたが、どれもすぐに提供を中止している。知らない人の方が多いと思うが、「Slingshot」(2014年6月に提供されたSnapchatのようなアプリ)、「Rooms」(2014年10月に提供された匿名フォーラムアプリ)、「Riff」(2015年4月に提供された動画の寄せ書きアプリ)なども現在では、もう姿を見ない。「Lifestage」もサービスの位置付けとビジネスモデルが不明瞭のままだと、いつのまにか市場から消えてしまうのではないだろうか。それとも今度こそFacebookから登場した単体アプリとして「Lifestage」は若者のコミュニケーションツールになるのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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