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Googleに次いでFacebookもインドの駅で無料Wi-Fi 提供か

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

人口約13億人をかかえるインドでGoogleは、インド鉄道(Indian Railway)と鉄道向け通信事業者Railtelと協力して、まず2016年末までに利用者の多い100駅にWi-Fiを敷設していく予定を明らかにしている。

Googleは既に主要駅で無料Wi-Fi提供、毎月200万人以上が利用

そして、Googleの計画は既に順調に進んでいるようだ。Googleはインドの鉄道向け通信事業者Railtelと協力して、2016年4月には9駅で提供が開始され、2016年7月までにムンバイ、プネ、チェンナイ、ジャイプールなど乗降客が多い23駅で無料Wi-Fiを設置している。

Googleのサンダー・ピチャイCEOによるとインドの駅での無料Wi-Fiの利用者は毎月200万人いるそうだ。ムンバイ中央駅で提供を開始した時には1週間で10万人が利用している。そして無料Wi-Fiにアクセスしている人は、通常の携帯電話のネットワークを利用している時よりも15倍も多くデータ通信を行っており、インド人にとってもGoogleが提供している無料Wi-Fiは重要なインフラとなっているようだ。

そしてGoogleとしてはインド全土の400の鉄道駅にWi-Fiを敷設する予定で、これが完備されると、世界最大規模の利用者をかかえるWi-Fiサービスとなる予定だ。無料でWi-Fiを提供しているが、Googleとしては通信費用を徴収するつもりもない。

Googleの売上の95%以上は広告収入であり、そのためにはまずネットにアクセスしてもらって、Googleの検索、Gmail、YouTubeなどのサービスを利用してもらう必要がある。ネットにアクセスするインフラへの投資は広告収入で十分回収できる。さらに人口約13億人をかかえるインドで多くの人がGoogleのサービスを利用してもらうことによって、多くの情報やデータを収集することができ、それらは人工知能の開発や強化にも貢献できる。Googleは世界最大の人口をかかえる中国ではサービス提供ができないので、インドという巨大市場は重要な収入源であるため、無料Wi-Fiの提供のような投資には積極的だ。

Facebookもインドの駅でWi-Fi提供か

Googleだけでなく、FacebookもインドでのWi-Fi提供に注力している。Google同様に売上の95%以上を広告収入に依拠しているFacebookは現在世界で17億人以上が利用している。インドでも多くの人がFacebookを利用しているが、まだまだ開拓の余地がある。Facebookは現在世界でネットにアクセスできない「残りの40億人」もネットに接続できるようにするために「Internet.org」という取組みをインドだけでなく新興国で積極的に行っている。Facebookとしても、Facebookやメッセンジャー、Instagramなどのサービスを提供してもらうためには、まずはネットに接続してもらう必要がある。そのためのインフラ整備に向けた投資は重要である。

Facebookはインドでは「Express Wi-Fi」という名称で2016年8月から現地のISPや通信事業者と提携して地方部を中心に125か所で試験を開始した。ただこの「Express Wi-Fi」は無料ではなく低価格で提供するようだ。但しインドのような新興国では価格に敏感であるから、無料なら多くの人が利用するだろうが、費用がかかるものは低価格であっても利用されにくい傾向がある。Facebookが本当に「Express Wi-Fi」を低価格で提供したとしても、無料Wi-Fiに比べたら優位性はないだろう。

駅だけでなく周辺の村や町にもWi-Fi提供を目指したい

そして、Facebookもインドの鉄道向け通信事業者Railtelとインドの駅でWi-Fiを敷設していくことを協議していると、RailtelのチェアマンのRK Bahuguna氏が明らかにした。さらにFacebookは駅だけでなく、地方の村や町にもWi-Fiを設置していくとのことだ。Railtelはインド全土の4,000駅で通信サービスを提供している。Facebookと提携することによって、まずは駅から10km圏内に村や町でもWi-Fiを提供していき、将来的には駅から25km圏内ある40,000以上の村や町でもWi-Fiを提供していきたいと語った。

まだ約10億人がネットに未接続のインド

人口約13億人を抱えているインドではネットにアクセスできるのは約3億人だけだ。つまりまだ約10億人がネットにアクセスできない環境にいる。この10億人の人が早く高速なネットに接続してGoogleやFacebookのサービスを利用してくれることによって、GoogleやFacebookは広告収入を稼ぐことができるし、多くの情報やデータを収集することができる。

広告収入に依拠しているGoogleやFacebookにとって、ネット接続が生命線であることから、現地の通信事業者らが低価格で回線を提供するのを待っていられない。インドでは中古のスマホも多く流通しており、一部のカーストや地方以外を除くとだいぶ普及してきた。あとはいかに「ネットに接続してもらい、GoogleやFacebookを利用してもらうか」が2社にとっては収入に直結するため、人がたくさん集まる駅などには無料でWi-Fiインフラを積極的に提供してネットへのアクセスを促進していきたいところだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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