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インドネシア:「ポケモンGO」に便乗したキャラクターTシャツも大人気

佐藤仁学術研究員・著述家

日本だけでなく世界中で「ポケモンGO」が流行していたが、インドネシアではリリース前から多くのインドネシア人が「ポケモンGO」を楽しんでいた。

「熱しやすく冷めやすい」人が多いせいか、インドネシアではリリース前の方が盛り上がっており、学校では生徒が勉強に集中しなくなるから学校内での「ポケモンGO」禁止を大臣が通達したり、フランス人がゲームに夢中で軍事施設に無断侵入して拘留されたり、「ポケモンGO」がリリースされる前から政府は公務員や警察は職務中にはゲーム禁止命令を発出していたほどだった。ゲーム好きな人は今でもやっているが、飽きてしまった人も多く、現在ではだいぶ沈静化してきた印象だ。

「ポケモンGO」で通信事業者への改善ニーズも

「ポケモンGO」の影響で、インドネシアなど東南アジアでは通信会社も対応を迫られているという記事がロイターに出ていたので、下記に引用しておきたい。

ポケモンGO、東南アジアで通信環境改善ニーズ生むと報じられていたが

任天堂などが開発したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」は、インドネシアから香港やカンボジアといったアジア地域でも人気を集めており、ゲームファンらの間ではより良い通信環境を確保するため電話会社を乗り換えたり、データ通信モデムを購入したりする動きが起きている。

東南アジアの多くの国では、米国などから1カ月遅れの8月5日にゲームの配信が始まった。しかし、熱心なゲームファンは携帯の電波の不安定さという問題に直面。インドネシア中部ジャワ州の銀行員(29)は携帯電話会社を乗り換えた。その友人は、電波の弱いところでも遊べるようデータ通信モデムを複数購入したという。

人口2億5,000万人のインドネシアでは2週間前に正式にゲーム配信が始まったが、その前から数万人が国外からゲームをダウンロードしていた。同国のスマートフレン・テレコムの4Gモデム(1個約30万ルピア=23ドル)の全国販売は2カ月ほどで5倍に増えた。

一方で新しいキャラクターなど、ゲーム内容の刷新を求める声も強まっている。前出の銀行員は「ポケモン探しやアイテム集め、ジムバトルは何度も何度もやった。ファンの興味を引き続けるためには新しいコンセプトが必要なのでは」と話している。

出典:ロイター(2016年8月22日)

「ポケモンGO」がリリース前から配信されて1か月以上が経ったインドネシアでは、以前のような熱狂的なブームは感じられない。現在、この記事もジャカルタで書いているが、ロイターが報じているようにインドネシアの通信会社が「ポケモンGO」のために通信改善を行って、劇的に通信環境が良くなったとは感じない。

ジャカルタのような大都市では誰もがスマホを所有しているが、そのほとんどが100ドル~200ドルくらいの廉価端末で、スマホで「ポケモンGO」をやっていると電池がすぐに無くなってしまうこともブーム衰退の要因だろう、一時のようなブーム感は感じられなくなった。そのようなスマホが多いので、携帯用充電器は「ポケモンGO」の前からよく持ち歩いているが、それでも「ポケモンGO」をやっているとすぐにバッテリーがなくなってしまうし、もう飽きてしまったからやらなくなったというインドネシア人の声はよく聞く。

通信環境よりも盛り上がる「ポケモンGO」キャラクターTシャツ

インドネシアで「ポケモンGO」以降、一番盛り上がっているのは、キャラクター周辺のビジネスだろう。一番多く見かけるようになったのはポケモンのTシャツだ。子供向けのTシャツに「ポケモンGO」やポケモンのキャラクターが描かれている。正式版ではないから任天堂の許可などは取っていないだろうが、このようなキャラクターのシャツやグッズはインドネシアでは大人気で、そのほとんどが海賊版だ。

インドネシアではこのようなキャラクターが大人気で、日本でお馴染みのLINEが流行したのもスタンプ(インドネシアではスティッカー)のキャラクターがインドネシア人にうけたことに一因がある。一番人気は30年以上前からインドネシアでもお馴染みの「ドラえもん」だろうが、最近ではネットのおかげで人気あるキャラの多様化が進んでおり、日本人でも知らないようなコミックのファンや世界中のあらゆるキャラが人気ある。

今回の「ポケモンGO」リリース直後にも、すぐにポケモンはTシャツになって、町のあらゆる所で販売されている。例えば、ジャカルタの数少ない観光地の1つの「独立塔(モナス)」では、土産物店にモナスとポケモンのキャラを描かれたTシャツが大量に販売されている。観光地以外にも、一般市民が購入する露店などでも1枚100円から300円くらいで販売されている。

インドネシアではこのようなキャラクターは番組や映画が終了してからも人気があり、例えば「アナと雪の女王」は映画が終了してからも、そのキャラのTシャツは売れているし、ドラえもんのシャツはジャカルタでは何十年も人気がある。「ポケモンGO」のブームは沈静化してきたインドネシアだが、ポケモンTシャツの人気はしばらく続きそうだ。

ジャカルタの独立塔(モナス)で販売している「ポケモンGO」のシャツ
ジャカルタの独立塔(モナス)で販売している「ポケモンGO」のシャツ
ポケモン自体、前から知られてはいたがTシャツとして販売はされていなかった
ポケモン自体、前から知られてはいたがTシャツとして販売はされていなかった
子供向けシャツが人気。1枚150円で、7枚で1000円
子供向けシャツが人気。1枚150円で、7枚で1000円
路上のシャツ売店もキャラTシャツが多く、ポケモンGOも仲間入り
路上のシャツ売店もキャラTシャツが多く、ポケモンGOも仲間入り
大人向けのキャラTシャツも人気があり、ポケモンGOのシャツも登場。3枚1000円
大人向けのキャラTシャツも人気があり、ポケモンGOのシャツも登場。3枚1000円
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ポケモンGOのキャラグッズを路上で販売
ポケモンGOのキャラグッズを路上で販売
インドネシア人はキャラのTシャツが好き
インドネシア人はキャラのTシャツが好き
子供のシャツの多くは人気キャラが描かれている
子供のシャツの多くは人気キャラが描かれている
ドラえもんのシャツを着ている人は大人にも多い。子供の頃からの馴染みのキャラだ
ドラえもんのシャツを着ている人は大人にも多い。子供の頃からの馴染みのキャラだ
最近では人気キャラの多様化が進み、日本のコミックなども人気がある。1冊50円で販売
最近では人気キャラの多様化が進み、日本のコミックなども人気がある。1冊50円で販売
アメコミのキャラも人気がある。そのキャラがどこの国のものかは意識していないし、知らない人も多い
アメコミのキャラも人気がある。そのキャラがどこの国のものかは意識していないし、知らない人も多い
インドネシアのスマホは電池の持ちが悪いから充電器は昔から人気商品
インドネシアのスマホは電池の持ちが悪いから充電器は昔から人気商品
食事中に携帯用充電器でスマホに充電するのはよく見る光景
食事中に携帯用充電器でスマホに充電するのはよく見る光景
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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