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世界でもトラブルや逮捕が続出:「ポケモンGO」深夜徘徊などで東京都内では553人補導

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

2016年の夏は日本だけでなく世界中が「ポケモンGO」一色だった。とにかく町中でスマホを見つめながら多くの人が公園やマクドナルドの前などに集まっている風景をよく見かけた。駅や学校では「歩きスマホ」の注意喚起の放送も多く聞かれたし、総務省や消費者庁、内閣サイバーセキュリティセンターまでが「ポケモンGO」での遊ぶときの注意喚起を出していた。

増加する「深夜徘徊」

「ポケモンGO」はスマホを持って、外に出てポケモンのキャラクターを集めるのがゲームの特徴だ。従来のスマホのゲームのように家や学校の中だけで楽しめるものではない。そして、24時間いつでも、どこでもゲームを楽しめることから、深夜に外で「ポケモンGO」でポケモンを探していて、補導される子供が急増したそうだ。以下に読売新聞の記事を引用しておく。

「ポケGO」都内で補導553人…深夜徘徊など

スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」を巡り、警視庁が7月22日の同ゲーム配信開始から8月28日までの1か月余りの間に、東京都内で少年計553人を補導していたことが同庁への取材でわかった。同庁は夏休み明けの9月以降も繁華街などの巡回を行う方針。

同庁幹部によると、ゲーム配信直後から、都心の公園や繁華街などで深夜にポケモンGOで遊ぶ子供たちが急増。都条例で「深夜」と定められた午後11時~午前4時に出歩く「深夜徘徊」などで、7月末までの10日間に449人を補導した。

8月に入るとブームはやや落ち着き、1~28日の4週間の補導数は104人にとどまった。ただ、インターネット上で珍しいポケモンが現れると紹介された場所を高校生が集団で訪れ、深夜まで遊ぶケースなどが目立っているという。

出典:読売新聞(2016年8月30日)

553人のうち約8割は高校生だったそうで、12歳以下も6人いたそうだ。実際にはもっと多くの人が深夜も屋外でゲームを楽しんでいただろうから、この数字も氷山の一角にすぎないだろう。「珍しいポケモンが出現する」とネットで紹介された公園や繁華街に集中する傾向があり「子どもが集まってゲームをしている」などの110番も相次いだと報じられている。

「ポケモンGO」をやらない人や知らない人にとっては、たしかに異様な光景だった。特に突然、昨日までは誰もいなかったマクドナルドの前や公園に、深夜になっても多くの人が集まってスマホを見ている集団を見かけたら、近隣住民としては、何事かと不審に思って警察に連絡してしまうだろう。スマホの地図で近くにポケモンキャラが登場すると、その周辺にいる人達が一斉にスマホを見つめながら、そこに向かって行く姿はゲームをやらない人にとっては怪しい集団に映ったようだった。

青少年の「深夜徘徊」による補導以外にもゲーム中にスマホの充電が切れた中学2年の男子生徒が充電器用の乾電池を万引したり、ポケモンを探しに行こうとした中学3年生が自転車を盗んだりするなどの窃盗行為が5件あったそうだ。これは明らかに犯罪だ。

日本だけでなく世界でも補導や逮捕

「ポケモンGO」をめぐるトラブルは日本だけでない。世界中で「ポケモンGO」に起因する警察沙汰となるトラブルや事故が報じられている。特に軍事施設や原発など立ち入り禁止のスポットに勝手に侵入してしまい、逮捕されるケースや民家の庭への不法侵入による通報などがとても多い。特に軍事施設への不法侵入にはセンシティブで、インドネシアでは「ポケモンGO」に夢中だったフランス人が軍事施設に侵入して拘留された。

カナダの10代の子供2人はポケモン探しに夢中になっていて、知らぬ間に国境を越えてアメリカに入ってしまい、国境警備隊に補導されるトラブルもあった。またアメリカのオハイオ州では14歳、15歳の少年2人がポケモンを探して、学校に深夜に侵入して警報がなって警察に補導される事件もあった。未成年だけでなく大人でも多くの人が民家の庭などへの不法侵入で逮捕されている。オハイオ州では、ポケモンを探して動物園のトラの檻のフェンスを越えて侵入したカップルが逮捕された。

このような事件やトラブルは多発しているものの本当に「ポケモンGO」で遊んでいて知らなかったのか、実は最初から不法侵入が目的だったのかは不明である。そのようなことから、世界中の警察が『「ポケモンGO」で遊んでいる振りをして民家や立ち入り禁止の施設などへ不法侵入してくる危険性がある』ということで警戒を強めている。日本でも深夜に徘徊していると、このような疑いをかけられるかもしれない。

他にもプレーヤーが恐喝されたり、喧嘩などのトラブルにまで発展したことも多数あった。さらにアメリカのアリゾナでは2歳の子供を放置したままポケモン探しに夢中になっていたカップルが育児放棄で逮捕される事件もあった。このようなトラブルは欧米だけでなアジア諸国でも同じだ。シンガポールではデパートの駐車場で、歩きながらゲームをやっていた人に自動車の運転手がクラクションを鳴らしてから大喧嘩に発展して2人とも逮捕される事件もあった。香港では痴漢事件にまで発展したケースもあった。ただ「ポケモンGO」に起因するトラブルは海外でも多発しており、最近では自動車運転中にゲームをやって大惨事の事故になったりトラの檻に入り込むような珍事にでもならない限り、ほとんどニュースにもならなくなってきた。

「ポケモンGO」はゲームの特徴から屋外で楽しむものだ。屋外の公共空間でゲームをすることから、そこには自分以外の多くの人がいるので、何かしらのトラブルがにつながりかねない。また他人の庭や立ち入り禁止区域はプライベートな空間であり、そこへの侵入は犯罪だ。そして24時間いつでも、どこでも楽しめるから深夜まで屋外でゲームに夢中で補導に繋がってしまう。「ポケモンGO」のブームも下火になってきて深夜徘徊も減少しているようだ。夏休みも終わり、これから秋や冬になり寒くなったら夜のポケモン探しは少なくなるだろうが、それでも深夜徘徊が続くと何かしらの対策が求められるかもしれない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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