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Apple、韓国ソウルに直営店出店か:サムスンの牙城を崩せるか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Appleが韓国ソウルに直営店をオープンするのではないかと報じられている。日本でもロイターなどが報じているので引用しておく。

ソウルに1号店出店、アップル韓国進出を検討か

新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の相次ぐ発火事故を受けて、世界的なリコールに踏み切った韓国サムスン電子にとって、新たな火種になりそうな報道が世界の耳目を集めている。米の有力紙「ウォールストリート・ジャーナル」によると、アップルはサムスン電子のお膝元の韓国に進出を検討している。

それによると、アップルはサムスンの本社から道路を挟んだ反対側や、江南区にある同社の旗艦店の近辺に店舗用地を探しているという。これに関して、アップルはコメントしていない。アップルはこれまで、ニューヨークなどの大都市にオシャレな店舗を構えて、話題作りと集客力の高さを示す販売戦略を取ってきており、日本に7店舗と中国に36店舗を展開している。

アップルの韓国国内でのシェアは10パーセント弱だが、韓国進出計画が実現すれば、確実にシェア拡大が見込まれることから、ライバルのサムスンやLG電子は安閑としてはいられなくなりそうだ。

出典:ロイター(2016年9月23日)

圧倒的にサムスンが強い韓国スマホ市場

Appleは現在、約20ヵ国で500店舗の直営店があり、ロイターも報じているように中国に36店、日本に7店ある。他にもアジアでは香港に6店舗などアジアで積極的に販売している。だが、ソウルにはまだAppleの直営店はない。韓国は圧倒的に地元のサムスンとLGが強い。かつてフィーチャーフォンが主流だった時代から、韓国市場ではサムスンが強かった。当時世界ではノキア(フィンランド)とモトローラ(アメリカ)が優勢だったが、韓国市場ではノキアも振るわなかった。モトローラも2007年にベッカムを起用して世界規模で人気があった端末「MOTORAZR」を韓国市場で展開したが、やはりサムスンとLGの牙城を崩すことはできなかった。

2007年にはモトローラも世界規模で販売されていた端末を韓国市場で販売するがサムスンの牙城は崩せなかった
2007年にはモトローラも世界規模で販売されていた端末を韓国市場で販売するがサムスンの牙城は崩せなかった

フィーチャーフォンの時代からサムスンが特に強かった韓国市場では、スマホになってからもサムスンの優勢は変わってない。各社から新機種が登場すると、シェアの増減はあるものの、サムスンやLGはAppleよりも機種数が多いことから優勢だ。少し古いが2015年7月に韓国未来創造科学部が韓国国内でのスマホ販売シェアの結果を発表した。Appleは2014年に「iPhone 6」「iPhone6 Plus」を投入するとシェアが上がり25%程度あったものの、サムスンが2015年4月に「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」を投入するとサムスンのシェアは69%まで上昇、他にもLGが2015年5月にLGが「LG G4」を投入すると、LGはシェアを20%まで回復している。このようにフラグシップの新機種が投入されると、各社が積極的にプロモーションを展開して販売を強化してくるのでシェアに増減はあるものの、サムスンのシェアはいまだに過半数を占めている。

サムスンに代わってAppleの一極集中か

世界規模で見ると、サムスンは年間で3億台以上のスマホを出荷しており世界1位で、Appleが2億台以上で2位だ。サムスンの機種数が多いので単純には比較できないが、サムスンとAppleの出荷台数の差は1億台以上ある。だがサムスンは中国市場でのシェアは中国メーカーの台頭で激減しており、さらに「Galaxy Note7」の発火事故でアメリカなど主要国でのリコールを受けて世界中でブランドが失墜しており、もはや安泰ではない。地元の韓国で、いつまでサムスンは牙城を維持できるだろうか。サムスンとしては何が何でも地元の韓国スマホ市場での地位は死守したいだろうが、現在でもソウルに旗艦店を持たないAppleが韓国市場でこれだけのシェアがあることは、旗艦店が登場したら、ますますAppleへ移行するユーザーが続出するかもしれないからサムスンにとっては脅威だ。そしてサムスンに代わって、世界のスマホ市場はAppleの一極集中になってしまうのだろうか。

韓国でのスマホメーカー別シェア(韓国未来創造科学部)
韓国でのスマホメーカー別シェア(韓国未来創造科学部)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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