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中国市場で再起を図りたいApple、北京にハードウェア開発拠点設置か

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Appleが中国の北京に1億元(約15億円)投じてハードウェア開発の研究拠点を設置すると報じられている。将来的には3億元(約45億円)投資していく予定で、500人規模の従業員でハードウェアの開発や通信デバイス、オーディオ、ソフトウェアの研究開発を行っていくようだ。

中国初となる研究開発拠点

Appleは米国外では日本、イスラエル、イギリスに研究開発拠点がある。噂では次期機種は「iPhone8」になり、それはイスラエルで研究開発が進められているという報道もある。

Appleのティム・クックCEOが頻繁に中国を訪問しており、2016年8月に中国を訪問した際に第一副首相の張高麗氏とも会談を行った。その会談の中でAppleは、同社にとって中国では初となる研究開発センターを設置することを明らかにしたと報じられていたことから信憑性も高い。中国政府も海外企業からの投資を誘致したいから、Appleからの申し出は喜ばしいことだ。今回、Appleは中国北京の北西の海淀区中関村で、Googleやインテル、マイクロソフトなども拠点を構える地域に研究開発センターを設置すると報じられている。

中国での出荷を復活させたいApple

Appleの地域別売上を見ると、中華圏での売上は前年同期比33%減少と大きく減少している。Apple全体に占める売上も2015年Q2は26.7%占めていたが、2016年Q2には20.9%まで減少してしまった。

Appleにとってはアメリカに次いで巨大市場だった中華圏(中国、香港、台湾)は重要な市場だった、中国での出荷と売上は年々減少し、現在では欧州市場の方が売上が大きい。但し、欧州市場は20か国以上もあるので、やはり1つの国としての中国市場はAppleとしても無視できない巨大市場であることは間違いない。2015年の1年間でAppleは中国市場で5,840万台のスマホを出荷している。

中華圏でのAppleの売上推移 (Apple決算資料を元に作成)
中華圏でのAppleの売上推移 (Apple決算資料を元に作成)

「iPhone7」で中国市場で復活できるか?

IDCによると、中国での2016年第2四半期(4月~6月)のスマホ出荷台数は前年同期4.6%増の1億1,120万台だった。同時期の全世界でのスマホ出荷総数が3億4,330万台だったことから、世界中で出荷されているスマホの3台に1台が中国となる。

中国ではスマホは中国メーカーが上位を占めている。特にOPPOとvivoの台頭は凄く、勢いがあったXiomi(小米)の出荷が落ちている。かつては1位だったサムスンは中国のスマホ市場の上位から姿を消してしまった。Appleも出荷台数は減少しているが、辛うじて5位に入っている。

それでもまだ中国人にとってスマホはiPhoneの人気は高い。見栄っ張りの中国人の多くが好んで利用しているのはいまだにiPhoneだ。中国人にとって最新のiPhoneを所有していることは、一種のステータスだ。先日の「iPhone7」発売の時にも、いつものように多くの中国人が新製品を買いに来ていたことが報じられていたことから、中国市場でのAppleのシェア回復が期待されている。

現在、中国では多くの人にスマホが行き渡ってしまい、スマホ自体での差別化が難しくなってきた。見栄っ張りだが実利主義的な中国人にとって、最新のiPhoneを所有していることがいつまでもステータスではなくなる可能性が高い。つまり、iPhoneに変わるステータスシンボルなスマホが登場したら、あっという間にそちらへ行ってしまうだろう。

中国市場で安定した売上を回復するためにも、Appleとしては中国の研究開発センターから中国人の購買意欲を掻き立てるような新たなサービスやプロダクトを創出していき、なんとかして中国市場で再起を図りたいところだ。

2016年Q2の中国におけるスマホ販売台数とシェア(IDC発表資料を基に作成)
2016年Q2の中国におけるスマホ販売台数とシェア(IDC発表資料を基に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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