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テスラ、完全な自動運転を全車に搭載「2017年中にロスからニューヨークまで完全な自動運転を目指す」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

アメリカの電気自動車メーカーのテスラモーターズは2016年10月19日、今後生産する全ての車で、完全な自動運転に必要な装置を搭載すると発表した。

人が運転するよりもはるかに安全な自動運転車を目指すテスラ

テスラによると、新たな自動運転用のハードウエアを搭載した「モデルS」と「モデルX」が既に生産中とのこと。現在でもカメラやセンサーを搭載しているが、カメラは8台まで増加させて車の周囲250mを認識できるようにする。また従来の半自動運転機能装備よりも約2倍の距離を検知する超音波センサーなど12のセンサーを搭載することによって周辺に建物があるか、人や動物がいるかを精確に認識する。また前面レーダーでは濃霧や大雨のような天候でも精確に前方の障害物を検知できるようになるとのこと。さらにコンピュータの処理能力は40倍以上で、完全な自動運転を目指しており、人が運転するよりもはるかに安全になるそうだ。これら完全な自動運転を行う新装備は合計8,000ドルとのこと。現在も試験中で人工知能を強化するためのデータ収集なども行っているとのこと。

テスラは2016年5月に自動運転車がオハイオ州でトラックに追突して死亡事故が発生し、現在アメリカ運輸省が調査しているが、それでも開発を加速しており、CEOのイーロン・マスク氏は「2017年中にはロサンゼルスからニューヨークまで、ハンドルに一度も触れないで完全に運転できる自動運転を実現することが目標」とコメントしている。

人が車を運転する必要のない時代へ

テスラだけでなく多くのメーカーなどが自動運転車の試験を進めている。実際にシンガポールでは公道で自動運転タクシーのテスト走行も開始されている。Uberもピッツバーグの路上で試験運転を行っており、自動運転車が現実になりつつある。

これから、各国において規制など法制度の整備も並行して必要になってくるが、技術開発は着実に進んでいる。近い将来、自動運転の車の方が主流になるだろう。さらに各家庭で自動車を所有しないで、必要な時に自動運転車を呼べば良い時代になってくる。今までのように車の運転をするからお酒飲めないということもなくなる。

テスラは自動運転車でロスからニューヨークまでハンドルを一度も触らないで到着することを目指している。そのような長距離移動だけでなく、通勤や通学の時にも自動運転車を利用して車内で仕事をしたり、おしゃべりしたり、動画を見ながら移動できる時代がやってくるだろう。自動運転車の普及によって「気が付いたら目的地に到着している」のが当たり前になる。

大きく変わる社会構造

また現在のタクシーや物流はドライバーが運転しているから、人件費がかかっている。だが、自動運転車が主流にばれば、夜だからタクシーが高いということもなくなるだろう。ドライバーの人件費がかからなくなるとタクシーも低価格で気軽に呼べるようになる。また大量に24時間いつでも配送できるようになるから物流コストも安くなるので、食料品や日用品の値段も安くなるだろう。

そして、自動運転車の普及によって社会構造も大きく変わるだろう。特に雇用の変化だ。ドライバーの仕事が激減することによって、今までのように深夜にトラックの運転手向けにサービスを提供していた食堂やショップなどでも姿を消すだろう。自動車免許を所有することの価値が低減するから、個人で自動車の免許を取る人も少なくなり、自動車学校も淘汰されていくだろう。また自動運転車による配車(タクシー)が低価格で普及したら、地方でも個人で自動車を所有する必要もなくなってくる。そうなるとメーカーや保険会社も、いつまでも個人の自動車購入者に依拠することはできなくなる。自動運転車が普及のインパクトは大きい。将来、社会がどう変わり、自分の生活や仕事がどうなるのか真剣に考えて準備しておいた方がいい。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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