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日本初、秋田県田沢湖畔の公道を自動運転バスが走行:期待される地方創生に向けた無人バスの導入

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

秋田県仙北市で2016年11月13日に、日本国内の公道では初めてとなる自動運転バスの走行の実証実験が行われた。自動運転バスなので、運転手は不在、運転席やハンドルもない電気自動車だ。

日本国内初の自動運転バスの公道での走行

自動運転バスの公道での走行実験は、内閣府と仙北市がDeNAに委託して実施した。フランスで開発された自動運転バス「ロボットシャトル」が用いられ、住民らが乗車した。この自動運転バスには最大で12人乗車できるが、今回の実験では1回6人ずつが乗車した。バスは時速10キロ程度のゆっくりした速度で、全面通行止めにした田沢湖畔の県道約400メートルを3往復した。時速10キロだから、かなり遅い。この速度で他の自動車と同じ道路を走っていたら、周囲の自動車にとっては迷惑になってしまう速度だが、初の公道での走行実験は、県道が全面通行止めにされていたこともあり問題なく終わった。

地方創生にも貢献が期待される無人バス

今回、自動運転バスの公道での実験が行われた秋田県仙北市は地方創生特区に指定されている。バスには山本幸三地域創生担当大臣も乗車した。山本大臣も「安全性確保が前提だが、新しい技術が日本の成長を支えていく」とコメント。

政府は今回の実験結果を基に自動運転バスの商用化に向けた安全性の検証を進めていく。その目的として過疎地での高齢化による運転手不足から路線バスの維持が困難になっており、自動運転バスが地方の市民の日常の交通手段として活用できるか検討していく。門脇仙北市長は「地域と病院を結ぶなどの用途も考えられる」とコメントしている。また仙北市では2020年までに田沢湖を回る観光路線も自動運転にしようとする構想があるようだ。

運転手は不足しているが、高齢者の買い物や検診など移動のニーズが多い地方での自動運転バスの実用化への期待は高い。運転手がいないので人件費もかからないし、電気自動車なのでガソリン代もかからないから、運賃も高くないだろう。また無人なので、従来の地方の路線バスのように1時間に1本といった本数でなく、頻繁に走行することもできる。無人バスの実用化が始まれば高齢者だけでなく地方に住む人にとっての利便性は非常に高くなる。

地方への観光客増にも期待される無人バス

さらに車がないと観光も不便な地域でも、無人バスが頻繁に走行するようになれば、日本人観光客だけでなく訪日外国人にとっても観光が便利になるだろう。地方の観光地では、いまだに公共交通機関が不便な場所がいくつもあり、日本人でも行くのが面倒な場所が多い。特に訪日外国人にとっては日本では都会であれ地方であれ、車を借りて運転するのは相当に困難だ。ハンドルが逆なうえに、日本語が理解できないから標識や看板もわからないので、日本の地方を外国人だけで車を借りて回るということはほとんどしない。

無人バスは地域の住民の移動手段も充実し、外部からの訪問者の交通も便利になるだろう。公共交通機関が不便な地方の観光地への自動運転バスの導入も期待できる。地方でもこのような無人バスが頻繁に走るようになれば、誰もが気軽に地方や公共交通機関の不便な観光地を訪問することができるようになれば、地方創生にも繋がるだろう。もう地方でも車を自分で運転する時代ではなくなってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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