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ドバイで自動運転バスの走行テスト「2030年までにドバイの車の25%は自動運転車へ」

佐藤仁学術研究員・著述家
(RTA)

ドバイ道路運輸局(Roads and Transport Authority:RTA)はドバイで2016年11月から自動運転車の走行試験を実施している。バスの乗車人数は10人(6人が座席で4人が立ち乗り)まで、自動運転なのでハンドルがないし、運転手もいない。自動運転バスのテスト走行はビジネスベイ地区の650mの路線を時速10キロで運行している。

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2030年までにドバイの車の25%は自動運転車

ドバイ政府は2030年までにドバイで走っている自動車の25%を自動運転車にすることを目標にしている。ドバイでの公道での自動運転のテストはこれで3回目だ。1回目は2016年9月にワールドトレードセンター近辺での走行、2回目はUAEの不動産開発デベロッパーのエマールと提携してMohammed bin Rashid Boulevardで走行し近辺のホテルやレストランを自動運転バスで周り、ともに成功している。RTAの報道担当Ahmed Bahrozyan氏によると、1回目では95%、2回目は96%の乗客が満足したそうだ。

自動運転バスのテスト走行は、安全性の確認以外にもドバイの気候や環境条件でも正常に無人バスが走行できることを目的としている。ドバイの自動運転バスは、電気バスを利用しているので環境にも優しいことをウリにしている。1回の充電で8時間の自動運転が可能だ。

さらに2030年までにドバイの車の4台に1台を自動運転車にしようとしているドバイ政府では、ドバイの人々への自動運転車の啓発活動にも積極的だ。Ahmed Bahrozyan氏によると、88%以上の人が自動運転車の導入で交通渋滞が無くなることに期待、92%の人が無駄なガソリン消費が回避できることに期待しているとのこと。

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自動運転車普及での新たな社会課題、移民は何をするのか

もはや自動運転車の波は世界規模であり、その流れを止めることはできない。ドバイで2030年までにドバイを走る自動車の25%が自動運転車となることも決して夢物語ではないだろう。そうなるとタクシーやバスの運転手は世界規模で仕事がなくなる。ドバイにはインド、パキスタン、バングラディッシュなどから多くの移民が来ており、彼らの多くがタクシーの運転手をしている。

ドバイだけでなく、車の運転は特殊技能や知識を要求されないので、移民たちには人気の仕事だ。自動運転車が主流となると、このような移民の受け皿になるような仕事は世界規模で無くなっていく。自動運転車の世界規模での普及だけでなく、自動運転車の基礎となっている人工知能を活用したサービスの普及で多くの単純作業労働はロボットや人工知能に取って代わられる。これは移民労働者だけでなく日本や欧米の先進国の労働者も同じ問題に直面するようになる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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