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ユニセフ、アフリカのマラウィで「世界初のドローンによる人道支援・開発支援」

佐藤仁学術研究員・著述家
(C) UNICEF/UN013395/Bodele

マラウイ政府とユニセフは2016年12月、無人航空機システム(UAS)いわゆるドローンでの人道支援利用の可能性をテストするための飛行ルートを開設したことを発表した。

世界初のドローンによる人道支援・開発支援

この飛行ルートは、アフリカ初のドローンのテスト飛行ルートで、人道支援・開発支援の利用に特化したものとしては、世界の中でも初めて設定されるものの一つ。飛行ルートは最大距離40キロメートルで、2017年4月に運用を開始。このドローンのルートは、民間セクター、大学、その他のパートナーが、コミュニティに寄与するサービス提供にどのようにドローンを活用できるかを研究するための、管理された空域を提供することを目的にしている。

(C) UNICEF/UN019230/Adriko
(C) UNICEF/UN019230/Adriko

「マラウイは、過去に何度も深刻な干ばつや洪水に見舞われています。このドローンのテスト飛行ルートの設置は、特に緊急事態において輸送インフラが使用できない、あるいは困難な状態にあるときに、輸送を支援し、データを収集する上で大変重要となります」とマラウイのジャッピー・ムハンゴ(Jappie Mhango)運輸・公共事業大臣は述べている。

ドローンによる血液サンプル輸送で実証済み

今回のドローンのテスト飛行ルートは、2016年3月に実施した、乳児のHIV感染の早期検査のために乾燥させた血液サンプルをドローンで輸送するフィージビリティ・スタディを経て開設された。フィージビリティ・スタディではドローンが、HIV検査に使われている既存の輸送システムに追加できる実行可能な手段であることが明らかになった。 マラウイは人口約1,600万人だが、国全体でのHIV罹患率が10%で世界で最も高い水準にある。2013年時点で推定100万人のマラウイの人々がHIVと共に生きており、同年48,000人がHIVに関連した疾患で命を落としており、対策が急がれているところだ。

移送手段がない、人が簡単に行けない場所にも空路で様々な物資を運んだり、自然災害などのモニターなど多くの人道支援や開発援助の観点からドローンが活躍するシーンはこれからもっと増加するだろう。これは人道支援や開発援助が必要な途上国だけでなく世界中で活用が可能だ。

様々な分野で期待されているドローン

ドローン技術はまだ開発の初期段階。ユニセフは世界のいくつかの政府や民間セクターのパートナーと共同して、いかにドローンを低所得国で活用できるか研究を進めている。

「テスト飛行ルートの開設により、開発・人道支援分野でのドローンの可能性を調査できる場ができました。このプログラムによって、 ユニセフは、急速に進歩しているドローンの技術に対応し、将来的に子どもたちの支援活動に取り込んでいくことができます」とユニセフのイノベーション部門部長のシンシア・マカフレイ氏は述べている。

ユニセフは、今後数カ月間、 参加申請をしている企業や研究所などとの契約の最終化を進めていく予定。また、マラウイ政府とユニセフは、今後地域で災害が発生した際に稼働できるドローン操縦士を調査中で、即座に緊急対応を確保するための待機契約を準備しているそうだ。

人道的目的のドローンのテスト飛行ルートは、 主に以下の3つの分野における試験を促進する。

1. 画像・映像:開発支援や人道危機に際して、航空画像・映像の撮影・分析。洪水や地震が発生した際の状況モニター。

2. 通信:特に緊急事態が発生した際に、通信困難な地域において、ドローンがWi-Fiや携帯電話通信電波を拡大することの可能性調査。

3. 輸送:小型で軽量の物資、例えば緊急時の医療物資、ワクチン、HIVテスト用血液など検査診断用の血液などの輸送。

飛行ルートの仕様は以下の通り

1. 最長距離は40キロメートル(効果的にドローンの輸送を試験できる距離)

2. 高度は地上500メートルに制限

3. 飛行ルートの使用は1年~2年間

4. テスト飛行ルートで試験されるすべてのドローンプロジェクトは、オープンソース・オープンデータ・共有性・規模の対応が必須

マラウィでの人道支援に向けたドローン活用のニュースがあるので、その様子を見ることもできる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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