Google、有言実行「インド全国の100駅で無料Wi-Fi提供」残り300駅にも順次拡大
Googleのサンダー・ピチャイCEOは2015年9月に、インド全土の400の鉄道駅に無料Wi-Fiを敷設することによって、インド人が高速インターネットへのアクセスを可能にすることを発表。
「2016年末までに100駅でWi-Fi敷設」を宣言
そしてインド鉄道(Indian Railway)と鉄道向け通信事業者Railtelと協力して、まず「2016年末までに利用者の多い100駅にWi-Fiを敷設する」ことを宣言。この100駅で1,000万人が毎日電車を利用している。将来的には全土の400駅にWi-Fiを敷設していくことを明らかにしている。
2016年1月から敷設が開始され、2016年4月にはムンバイ中央駅という巨大な駅をはじめインドの10駅で無料Wi-Fiが整備された。2016年7月までにはプネ、チェンナイ、ジャイプールなど乗降客が多い23駅で無料Wi-Fiを設置、1か月あたり200万人がWi-Fiを利用していた。さらに、2016年9月までには52駅で提供しており、1か月あたり350万人がWi-Fiを利用していた。Googleによると、このインド鉄道の無料Wi-Fiによって、毎日15,000人以上のインド人が、初めてインターネットにアクセスすることができるようになったとのこと。そしてついに2016年12月22日にインド南部のOotyの愛称でお馴染みのウダガマンダラム駅で100駅目となる無料Wi-Fiが敷設され、これによって「2016年のうちに100駅でWi-Fiを敷設する」目標を達成することに成功した。1日に500万人以上が無料Wi-Fiを利用しているそうだ。Googleはインド全土400駅で無料Wi-Fiを敷設していくことから、残り300駅での敷設も順次進めていく予定。
さらに2016年9月には駅だけでなく、カフェやショッピングモールなどにまで無料Wi-Fiを拡大していくプラン「Google Station」を明らかにしている。カフェやモールも駅と同様に多くの人がスマホを持って集まる場所だ。
Googleにとっても重要なインフラ整備
人口約13億人のインドではここ何年かで1億人以上が初めてインターネットにアクセスできるようになった。それでもまだ、インドでネットに接続できるのは約3億人だけだ。まだ10億人以上がネットにアクセスできない環境にいる。
そしてGoogleの収入の90%以上は広告である。広告収入をさらに増加させるためにも多くの人に利用してもらう必要がある。そして多くの人が利用することによって、利用者の情報も吸い上げることによって、利用者に応じた広告配信も行うことができる。
どれだけGoogleのサービスを充実させても、インターネットへアクセスするインフラが整備されていなければ、Googleのサービスは利用してもらえない。Googleのサービスが利用されないということはGoogleにとっては広告収入の増加につながらない。「誰もがネットに接続できる」ことがGoogleの収入源である「ネット広告にとって最低限の条件」である。
人工知能強化に向けてGoogleが欲しいインド中の情報
さらにそのインフラに無料または廉価でアクセスできることが重要だ。インドではデータ通信もプリペイドで利用している人が多いことから、データ通信費用にもセンシティブである。駅やカフェなどで無料でWi-Fiが利用できることにメリットはインド人にとっても大きく、Googleの提供するサービスへアクセスする機会も増え、それは広告収入増につながる。Googleは決して慈善活動で無料Wi-Fiの提供をしているのではない。スマホが急速に普及しているにもかかわらず、まだ10億人以上がネットに接続していないインドという巨大市場での重要な先行投資だ。
さらに10億人以上のインド人から収集できる莫大な情報やデータはGoogleが注力している人工知能を強化していくのに貴重な情報やデータとなる。特に駅やカフェ、モールでの利用は鉄道での移動情報、店舗情報、買い物の記録など「人々の生活に根付いた多くの有益な情報」の収集が期待できる。そこで収集したデータを元に機械学習を通じて強化された人工知能で、さらに適切な広告配信や人工知能を活用した多くのサービスをインドだけでなく世界中で提供していくことが可能となり、そこから期待できる収入は無料Wi-Fi設置のコストをカバーできるのだろう。