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インドで話題「サムスンの動画広告に感動」テレビの修理に山奥まで行くと・・・

佐藤仁学術研究員・著述家
(Samsung India)

インドでいま、一番話題になっているのが、現地のサムスン・インドが2016年12月末に公開した広告動画だ。YouTubeでは動画公開後、まだ2週間程度だが、既に3,670万回も再生されている。

「感動的だ」とインドで話題沸騰の動画広告

サムスンのエンジニアが修理の依頼を受ける。「今日の7時までに来て、テレビを直せる?」との依頼に、バンに乗って山奥の家まで道なき道を走りながら、テレビの修理をしに行く。その家でエンジニアを待っていたのは目の不自由な女性だ。そしてテレビを修理すると、2Fから多くの目の不自由な子供たちが降りてきて、テレビを見る。そのテレビでは歌番組をやっており、そこに映っているのは、かつてその施設にいた子供というストーリー。この動画が「感動的だ」とインドでは話題になっており、動画の再生回数もあっという間に3,600万回を超え、現在でもSNSなどで多くシェアされている。下記がその動画だ。

競争激しいインドのテレビ市場、求められるサービスの差別化

サムスン・インドではインド全国で535台のバンがあって、このようにエンジニアがどこにでもテレビの修理に駆け付けるようだ。サムスン・インドのCMOのRanjivjit Singh氏は「サムスンはインドの地方にもサービスを拡大しており、お客様がいる所にはどこにでも行く。今回も多くの賞賛の声を頂いて、とても嬉しい」とコメントしている。

サムスンにとってもインドは非常に重要な市場の1つだ。サムスン・インドはニューデリー近郊のノイダにある白物家電やスマホの工場での生産能力を2019年末までに2倍にする計画を明らかにしている。現在サムスン・インドではインド全土で4万人が働いている。

今回のサムスンの動画はテレビの修理だ。インドのテレビ市場もサムスンだけでなくLG、ソニー、パナソニックといった従来からのメーカーだけでなく、最近ではさらにインドの地場メーカーVU Technologies(VU)なども台頭してきて、競争はますます激しくなっている。さらにスマホメーカーとしてもインドでは有名なMicromax、 Intexもテレビ市場ではライバルだ。製品での差別化は難しくなり、ほとんどが価格競争になっている。テレビメーカーには、サムスンの広告動画で訴求しているような「全国のどこにでも、素早く修理に駆けつける」といったサービスの差別化が求められている。

さらにサムスンはインドではテレビだけでなく、スマホでもお馴染みで、高価なハイエンド機種から廉価なローエンド端末まで多くのラインナップを揃えており、シェアは1位だ。しかし最近では地場のスマホメーカーや中国のメーカーに相当追われており、テレビ同様に決して安泰ではない。

全国どこにでも修理に駆け付けるサービスの差別化が求められているインドのテレビ市場(Samsung India)
全国どこにでも修理に駆け付けるサービスの差別化が求められているインドのテレビ市場(Samsung India)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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