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2016年もGoogle無双:これからの注力はYouTube、クラウド、ハードウェア

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2017年1月26日、傘下のGoogleの2016年第4四半期(10~12月)と2016年通期の決算を発表した。

2016年通期では初の10兆円超え

Alphabetの2016年第3四半期の連結売上高は前年同期比22%増の260億6,400万ドル(約3兆円)で、純利益は8%増の53億3.300万ドルだった。Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比22%増で258億200万ドルで、営業利益は17%増の78億8,300万ドルだった。そしてGoogleを支える広告収入は同17%増の224億ドルで、Googleの売上の約86%を占めている。従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていないものの、以前は90%以上が広告の売上だったから、広告以外の売上も着実に増加していることが伺える。また、2016年通年での売上高は前年比20%増の902億7,200万ドル(約10兆3,000億円)、純利益が19%増の194億7,800万ドルだった。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)

Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル検索やYouTube、広告が成長をけん引していることも、最近の決算発表と大きな変化はない。今回は売上、利益ともに過去最高を更新した。

「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。売上高は前年同期比75%増の2億6,200万ドルだったが、営業損失は10億8,800万ドルの赤字だ(前年同期は12億1,300万ドルの赤字)。NestやGoogle Fiberなどの売上は好調だったものの、まだ赤字は続いている。

その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)

これからの注力は「You Tube」「クラウド」「ハードウェア」

サンダー・ピチャイCEOは決算と今後の事業のポイントとして「You Tube」「クラウド」「ハードウェア」の3点をあげた。

YouTubeは言うまでもなく世界最大の動画プラットフォームで、Googleにとっても重要な稼ぎ頭の1つだ。今後はモバイルでのリアルタイムのストリーミング(生中継)、360度動画、VRなどに注力していくことを明らかにした。また途上国などでデータ速度に制限がある地域での対応強化も図っていくことや、有料チャンネルYouTube Redの積極的な推進も行っていくことによってGoogleの収益の柱として更なる強化を図っていきたいところだ。

2番目のクラウド事業の「G Suite」も2016年9月にクラウド系サービスを統一して新たなブランドとして出発し、Slackやインテルなど多くのパートナーと提携している。

最後に3番目の「ハードウェア」としては、Googleブランドのスマホ「Pixel」、Google Assistantを搭載した自宅用の音声アシスタントデバイス「Google Home」などがクリスマスシーズンの販売が好調だったことを明らかにした。AIによる音声アシスタントデバイスはGoogleだけでなくAmazonの「Amazon Echo」や他にも世界各地で多くのメーカーからホームロボットなども登場しており、これから熾烈な競争が想定される市場だ。モバイル検索や動画(YouTube)では「Google無双」だが、家庭での音声アシスタントデバイス市場での戦いはこれからだ。

Google Home紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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