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Google、まだ諦めきれないメッセージアプリ:大手通信Telenorと提携してRCSを世界展開

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Googleは世界規模で展開している通信事業者Telenorと提携して、RCS (Rich Communications Services)と呼ばれる「リッチ・コミュニケーション・サービス」を展開していくことを発表した。RCSというのは日本人には全く馴染みがないが、LINEやFacebookメッセンジャーのようなメッセージサービスだ。

見た目、使い勝手はLINEとほぼ同じ (Google)
見た目、使い勝手はLINEとほぼ同じ (Google)

Telenorはノルウェーに拠点を置き、世界規模で展開している通信事業者で、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ハンガリー、モンテネグロ、セルビア、パキスタン、バングラデシュ、タイ、マレーシア、インド、ミャンマーで事業展開。全世界に2億1,400万人の加入者がいる。TelenorのユーザーでAndroidを利用しているユーザーは自動でRCSが利用できるようになる。

メッセージアプリ・SNSでは弱いGoogle

海外ではショートメッセージ(SMS)がテキストメッセージの主流で、その延長としてRCSは世界中の通信事業者などがサービス開発をしていたが、世界規模でのスマホの普及に伴って世界中でWhatsApp、Facebookメッセンジャー、WeChat、LINE、カカオトークなどのメッセージアプリの利用が拡大していった。そのため世界中でRCSは忘れられた存在になってしまった。

そしてメッセージアプリの分野では圧倒的にFacebook陣営が強い。WhatsApp、メッセンジャーともに全世界で10億人以上が利用している。モバイル検索や動画配信YouTubeで圧倒的に強いGoogleだが、メッセージアプリやソーシャルメディアの分野では大きく遅れている。

Googleでは「Google Allo」などメッセージアプリを提供しているが、決して主流になっていない。メッセージアプリは利用する人が多くいるから普及する。ほとんどの人が利用しないメッセージアプリでは誰とも通信できないので普及しない。

世界中の情報を収集していきたいGoogleとしてはメッセージアプリも押さえていきたいところだ。メッセージアプリでやり取りされている情報は、個人のあらゆる情報の宝庫だ。誰と誰が繋がっていて、どこにいて、どういう情報のやりとりをしているのか収集し、把握することによって、個人に適した広告の配信や人工知能の強化も可能になる。

世界規模で展開している通信事業者Telenorとの提携でRCSも普及させたいだろう。だが、もはや世界中でスマホが普及しており、多くの人が既存のWhatsAppやFacebookメッセンジャーなどのメッセージアプリを利用している中で、相当なメリットや使い勝手の良さがない限り、RCSの利用に切り替えることはないだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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