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「歩きスマホは、視界が極端に狭くなります」関西の鉄道20社局がアピール

佐藤仁学術研究員・著述家
共同ポスターデザイン(関西鉄道協会)

関西の鉄道事業者20社局が、2017年3月1日から31日までの1か月間「歩きスマホは危険」を共通テーマとしたポスターを各駅構内や車内に合計13,000枚のポスターを掲示している。関西の鉄道事業者では1994年から「みんなでつくる みんなの快適」をコンセプトに共同マナーキャンペーンを実施。今年のテーマが「歩きスマホは危険です」

「歩きスマホは、視界が極端に狭くなります」

関西の鉄道各駅や車内のポスターには「歩きスマホは、視界が極端に狭くなります。やめよう、歩きスマホ」と書かれている。B1・B2サイズには「巻き込み、転落、衝突、視界が狭くなるほど、危険は多くなる。」とも書かれている。

駅での「歩きスマホ」の注意喚起は関西だけでなく全国規模で呼びかけている。特に昨年夏のポケモンGoがブームになった時は全国各地の駅で「歩きスマホ」をする人が急増した。ポケモンGoが下火になった現在でも、駅での歩きスマホは減少していない。むしろ増加している。スマホでニュースやLINE、FacebookやTwitterのチェック、動画や音楽の視聴、ゲームなどを電車に乗る前、電車の中、降りた後もずっとやっており、スマホの画面ばかり見ながら歩いている。通勤時間の電車や駅で周囲を見渡してみると、スマホを見てない人の方が少ないくらいだ。特にスマホは文字や画面を簡単に大きく出来ることから年配の方でもスマホを見入って歩いている。

駅で「歩きスマホ」をしている人にはポスターすらも目に入ってないだろう。だがポスターでも指摘しているように「歩きスマホ」は、視界が極端に狭くなる。そもそも神経も目もスマホの画面に注意しているので、周囲がほとんど見えてない。また視界が狭くなっているだけでなく、スマホの中のニュースやLINE、Facebook、動画などに夢中になっており神経がスマホの中に集中しているので、咄嗟の判断ができない。そのため自分が線路に転落する危険もあるし、周囲の人とぶつかったり、相手に怪我をさせてしまうこともある。全ての駅でホームドアが設置されているわけではないので、線路に転落したら死亡してしまうかもしれないし、例えば高齢者や視聴覚障碍者にぶつかり加害者になってしまう恐れもある。視聴覚障碍者の方は目の前から来る人が「歩きスマホ」をしているかどうかはわからない。

「自分だけは絶対に大丈夫」はない

さらに「歩きスマホ」をしている人は『自分はスマホの中のニュースやLINE、動画視聴で忙しいんだから、あなたが道を空けて』と自己中心思考になりやすいので、「歩きスマホ」をして自分が相手にぶつかっても、相手が邪魔で悪いと勝手に思い込んでしまい、イライラしてしまう傾向がある。「歩きスマホ」をしている人が、向こうからぶつかってきたのに舌打ちされた経験を持っている人もいるだろう。駅や車内での乗客同士のトラブルに発展してしまう。

それだけでなく実際には視界が狭くなっているにも関わらず『自分は絶対に大丈夫、スマホを見ているけど、ちゃんと周囲も見えている』と思い込んでいる。また「歩きスマホ」をしながら電車に乗ろう、降りようとしている人が多い。彼らはスマホを見ているので、歩くのが遅くなっており、それが電車の遅延にも影響している。

ここ数年、鉄道会社や携帯電話事業者が「歩きスマホ」の注意喚起をしてきたが、一向に減らない。事故やトラブルに巻き込まれたり、加害者になってしまうまで「歩きスマホ」はやめられないのだろう。だが、線路に落ちて事故になったり、相手に怪我をさせて加害者になってしまってからでは遅い。決して「歩きスマホ」では『自分だけは大丈夫』『自分はしっかり見えているから安全』ということはない。

共同ポスターデザイン(関西鉄道協会)
共同ポスターデザイン(関西鉄道協会)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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