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ピース綾部さんはまず実績と貯金を捨てるべき~NYコメディで成功した日本人が語る2/5

佐藤智子プロインタビュアー、元女性誌編集者
コメディクラブの楽屋にて。10年来のプロコメディアン仲間と出番待ち

「何もない状態で、ニューヨークに行くピースの綾部さんは、当時の僕そのもの」。

英語力なしコネなしカネなしキャリアなし。ゼロから登りつめた成功には秘訣があった。

「できるはずがない」と周りからバカにされながらも、アメリカ版M-1グランプリの全米お笑いコンテスト、NBC『ラストコミックスタンディング』で準決勝に進出。非英語圏の外国人初の偉業を成し遂げた。

あのビヨンセも笑わせた、世界唯一の日本人プロスタンダップコメディアン、RIOさん。NYのコメディクラブを中心に1万回以上の舞台経験を誇る。20年間の活動で世界中のセレブゲストを含む40万人以上を爆笑の渦に巻き込んだ実力派エンターテイナーから学ぶ「無謀とも思える挑戦へ向けての準備と心がまえ」。

スタートラインに立つために、絶対に必要なこととは? 日本にいるうちに、やっておくべきこと。

Q ピースの綾部さんがハリウッドスターを目指しているのに、ニューヨークに行って、大丈夫ですか。

A 大丈夫。彼みたいに、ハリウッドでスターになりたいのに、ニューヨークに来るっていうのは王道なんです。偶然なんですけど。知っているのかもしれませんけど。ハリウッドに出たいやつが、いきなりハリウッドに行っても、大きくはならないです。力がない状態で、ハリウッドに行っても。ハリウッドは自分から行くものではなくて、連れていかれるものなんで。特にコメディアンは。

Q はあああ。

エディマーフィーとかも、全部ニューヨークからです。ニューヨークでやってて、力をつけて。こんな話があるんです。クリスロックっていうアカデミー賞の司会もつとめるような有名人が、まだ無名の頃、ニューヨークの舞台に出てて、すごいウケた舞台をたまたまエディマーフィーが見ていて、自分の映画に呼んで、売れたという。そんな話がよくあります。

Q そうか、ハリウッドの人たちもニューヨークに行って、人材を発掘しているわけですね。

A そう。スカウトとか。ハリウッドに新たな人材がいるとは思っていない。あれは、上がった人たちが行くところだから。

Q なるほど。しかも、ニューヨークは狭いじゃないですか。狭いところに、エンターテイメントがひしめきあっているから。

A そう。だから、綾部さんのチョイスはすべて当たっている。

Q わああ。でも、今から行きますではなくて、来年の4月から行きますって言っているわけですから、まだ行くまでの間に時間がありますけど、どういう準備をしたらいいですか。

A やるとしたら、頼る気持ちを今からゼロにすることですね。今は無理だと思うんですよね。ゼロにするための準備じゃないですかね。

Q じゃあ、何かをインプットするんじゃなくて。そぎ落とす期間。

A そう。日本にいるうちに持っているものをそぎ落として。ニューヨークに行って、フラットな形ですぐに始められるように。みんな、それができなくて、失敗しているような気がします。

Q なるほど。じゃあ、今のうちに稼いで、とにかく貯蓄を増やしておこうではなくて。

A そう。あと、コネクションね。誰かに頼ろうとかしなくて、なるべく一人でやろうとすること。どうせ日本のコネなんてアメリカ人は信用してないんだから。ほんとに、身一つで自力突破してやろうと覚悟している人をみんな助けたいわけだから。「あいつ、日本でコネクションあるみたいだぜ」という人が助けられると思います?

Q 思いません(笑)。

A 「あいつ、お金あるんだぜ」でもなくて。素性だけ見て、ジャッジしてもらうためには、できるだけ煩悩的なものはそぎ落とすべきだと思う。

Q 逆に、全部捨てて行ったんだよ、というほうが、え? ということになるんですね。

A そうじゃないと、戦えないですもの。ニューヨークでのスタートラインに立てないですね。

Q 英語の勉強はしなくていいんですか。

A それはすべきですけど。英語の勉強にもいろいろありますから。自分の信じた道をやればいいと思います。間違ったやり方もあるんですけど、それも含めて、ムダと思えるような失敗をたくさんするべきなんですよ。英語の勉強はどんだけムダをしたかですから。

Q 助けてくれる人の中で、芸能とかではなくて、生活全般で頼れる人とか、言語的なブレーンみたいなものをつけるべきですか。バイリンガルの人とか。

「LIKABILITY(LIKE ABILITY)」っていうんですか、僕はよく言われるんですけど。「お前は、好まれ度が高いな」って言われましたけど。

Q 好感度、人に好かれる能力、人たらし度みたいなことですか。

A そうそう。それがあれば、大丈夫。それをいかにたくさん言われるかだね。綾部さんがニューヨークに行って、すぐにそうなれるかどうかですね。その準備は日本でしておくべき。

Q 人に好かれる人間力をつけるという。なるほど。アメリカ人が助けたくなるのは、一生懸命やっていて、

A どんだけムダなことをやっていて、

Q 不思議ちゃんで。

A ムダしてんなあ、こいつ助けたらな、あかんなと思わせる。

Q じゃあ、どんくさいほうがいいんですか。

A そうですね。そういうところありますね。キレキレのやつも中にはいますけど。ダサくて馬鹿っぽいけど、一点だけ光るみたいな。綾部くん、見込みあると思うよ(笑)。

Q そんなあ(笑)。つまり、ズル賢いではなくて、バカ正直なほうがいいんですね。

ズル賢いのは、LIKABILITYから一番遠くなる人ですね。

Q じゃあ、あんまり野心をギラギラさせないほうがいいですね。つまり、昔の日本人的な。おしん的な。真面目でコツコツやる感じの。ラーメン屋でバイトしているんだけど、人知れずトイレを一生懸命、毎日掃除しているみたいな。「なんでそこまでやるの?」とみんなに言われたら、「キレイにすると気持ちいいじゃないですか」なんて、目をキラキラさせて答えるような。

A そうそうそう。そういうことです。

Q それを密かに見ている人がいて、声をかけられるみたいな。

A そうです。実際、僕もですが、バイトを一生懸命やるやつは売れやすいんです。ミュージシャンで、レストランで手を抜いて、お客さんにぞんざいな態度をしているやつがいたの。そいつの言い分は、「俺は、ミュージシャンをやりにきたんだから、なんでこんなことを一生懸命やらなきゃいけないの。生活のお金だけのためにやっているだけだから」と。それを聞いた人たちは、「あの人のミュージック、聞きたいと思う? こんな誰でもできることを満足にできない人が、もっと難しいミュージックを作れると思う?」と。

Q 人はちゃんと見ているんですね。その態度で、ジャッジしているんですね。

A 僕も配達の仕事をしていて、一生懸命やったら、やっぱり、テレビに出る道筋を作ってくれたのは、それを見ていてくれた人たちだったんだよね。僕の実力で上がったとは思っていなくて。見ていた人がお膳立てしてくれたと思っている。お膳立てしてもらえるかどうかが勝負なんですよね。

Q 普段のやっていることが見られている。

何でもないことを、いかに普通の人たちと同じようにやらないかだね。毎日毎日一生懸命やることはできるんで。たとえ舞台に出られない日であっても。

Q なるほど。普段の生活がすでに舞台なんですね。観客は見ていると。失敗する人は?

ズル賢い人ね。あさましいというか。みんな、能力がなかったから日本に帰ると言うんだけど、実は能力は十分にあったんだよね。能力があって、助けがあるかどうかは、そこの違いです。

Q 例えば、日本だと、売れない芸人さんに、尽くす女性みたいな感じで、サポートが入る場合があるじゃないですか。自分は稼いでないけど、彼女が貢いでくれて、生活ができているみたいなことは、ニューヨークでは。

ニューヨークでは、それが全員って感じです。女の人だけじゃなくて。

Q 周り全員が、サポーターというか、パトロンというか、出資者にもなり得るということですか。

A キックスターターみたいな発想が元々あるんで。

Q ああ、クラウドファンディング的な。夢があってやる気のある人には投資したい、応援したいという。

A そうそう。

Q 何も言わずに、お金を出すというのではなく、その人の思いに賛同するというか。夢という明確な目標があって、真摯に頑張っている人には、

A お金を出す。アメリカ人はお金に厳しいようだけど、そういうのには何十万と出すのは、いとわない。元々、ヘルプの国なんです。

Q 以前、世界中を旅している人が言っていたんですけれど、ニューヨークでは、ウィットに富んでないといけないから、街に立って、「お金ください」と物乞いするよりも「僕の笑顔に1ドルください」と言ったほうが、笑顔に対する対価と、その発想に、面白いねと笑ってお金を出してくれると。

その人そのものの人間力をジャッジしているからね。それを、「ください」だけでは、25セントもくれないのよ。同じことで、プロデューサーに「仕事ください」とはみんな言わない。ニューヨークは狭いからそこらへんにいるからすぐに会えるんだけど。効果がないとわかっているから。わかってないと、しちゃうけど(笑)。

Q スターになりたい人と、スターの人と、スターを見つけようとしている人が、同じ街の一角にいるということですね。

A そう。でも、「仕事ください」と頼み込んで、売れた人はいない。一人も。

Q コメディクラブにスカウトマンが来ていることはないんですか。

A 来ていることもあるかもしれないけど、ネタを見るより、人を見ている。舞台をしっかりやっているかどうか。見る目ありますからね。世界中の才能を見ているわけですから。

Q つまりは、面白いかとか、才能があるかじゃなくて、魅力があるかどうか、人間力なんですね。

A 要するに、ニューヨークは世界中の人に見られるわけだし、見ているわけだから。

Q そういう意味では、日本人は有利なんですか。

断然有利ですよ。いいと思う。日本人、日本人している人が。アメリカに来る人は、野心を持ってきてしまうから。

Q 逆に、かぶれているんじゃなくて。単純にニューヨークにすごく憧れているような。

A まあね。普通のことをやっている人が、すごく魅力的に見える。ステップアップがあからさまにわからない状態で、一つのことをコツコツやっている人が、ものすごく輝いて見える。一途さというのか。

Q 例えば、取っかかりとして、英語が話せない、才能もない、という場合は、何から始めたらいいですか。住むところは。どこに住んだらいいですか。例えば、郊外に住むのか、マンハッタンの中心地に住むのか。

ブルックリンからマンハッタンに向かう地下鉄にて、ネタ収集中
ブルックリンからマンハッタンに向かう地下鉄にて、ネタ収集中

A ゼロからスタートするなら、絶対マンハッタンのど真ん中には住めないはずだから。外に住むことになるとは思うけど。

Q でも、ニューヨークに住んでいるのに、マンハッタンになかなか出ることがないというのは。やっぱり見ておいたほうがいいですよね。空気感というか。

僕は、ニュージャージーを勧めますね。マンハッタンは旅行者だらけだから。生活をするなら。地に足をつけるならね。クイーンズとかから。生活をしているのか、観光で来ているのかは、すぐに態度に出ますからね。

Q あんまり日本人とつるまないほうがいいですよね。

A コメディを頑張ったら、日本人とつるむことはできないからね。いないから。

Q でも、綾部さんはコメディをするつもりではなく、ハリウッドを目指したいわけだから。

スターになりたいんだったら、むしろ、コメディがぴったりだよ。アメリカの芸能のトップがコメディだから。日本とそれが違うところなんですね。俳優さんを束ねるのが、コメディアンだから。一番の視聴率のアカデミー賞の司会は、いつもコメディアンでしょ。お金も一番コメディアンたちが高いから。俳優になってもしょうがないという。

Q そうか。俳優というのは、オファーが来て、役がつくわけだから。でも、コメディアンは自分が出るわけだから、まず自分というものを売っていかないといけない。そのほうが露出が多い。

A 綾部さんがスターになりたいんだったら、俳優になったら、スターにはなれない。

Q レッドカーペットを歩きたいというから、そうなのかなと。

A 僕も何十センチくらいの短いレッドカーペットを歩いたことありますけど(笑)。どういうレッドカーペットを歩くかで。本チャンのレッドカーペットなら、トムクルーズのような主役級の人でしょ。

Q もし、アメリカで、「俺は、トムクルーズくらいになるのを狙っている」と言ったら、バカじゃないの? とは言われないんですよね。

A まあ、そこらへんの言動は大丈夫でしょうけど(笑)、僕はつつしみましたけど(笑)。

Q なんて言っていたんですか。

A 僕は、スターになろうと思っていなかったし。

Q 何を目指していたんですか。

A 毎日のコメディをやりたいだけ。

Q そうか、そういうところなんですね。

A 実際、そうしないと、明日がなかったんで。夢を語る状態ではなかった。

Q でも、今は語ってもいいですよね。ニューヨークに行ったら言えない。

A もう、始まってしまったら。

Q でも、動向が見られますよね。渡辺直美さんがニューヨークですごく人気があると。ライブも即日完売と。

A まあ、知り合いになってしまったから、何とも言えないけれど。日本人の客さんも多かったんじゃないかな。誰が来たか、誰に認められるかだから。1回は頑張れば出来ます。長井秀和くんも、きんに君も、大きなショーやったんですよ。ニュースにはなりませんでしたけど(笑)。

Q わあ、厳しいですね(笑)。渡辺直美さんみたいな、ああいう体当たりのネタはウケるんですか。

A 彼女に会った時に言っていましたけど、言葉は使わないと決めていましたから。コメディクラブに招待して、一緒にラーメンを食べました。実際に、言葉を使わないことに徹しているから。ああいう道もあるのだなと発見でした。長期戦は難しいのだろうけど。

Q キャラ的にはどうですか。

A あれはある。でも、既存していることをやっても。ああいう人はニューヨークにはすでにいる。手前味噌だけど、僕の場合は長期戦だから、外国人で、コメディで笑わせるやつは、ニューヨークにいなかった。だから、存在できた。でも、彼女は超短期戦だから。短期戦の戦い方の象徴。言葉を使わず、身体を使ってということ。彼女は日本でやっていることをそのままやっているから。他の人は、そのままをやって、さらにしゃべろうともするから、欲を出すから。彼女は、言葉を捨てた。その覚悟がある分、客はとれる。アメリカ人でもライブ1回もできない人もいますからね。欲を捨てて、言葉を排除したというのが、短期戦の成功例ですね。

Q 1回でもお客さんが来ない人もいっぱいいるでしょうからね。

改めて聞きますが、リオさんは、ポジションとしては、どういう感じなんですか。

スタンダップコメディを1万回以上やっている、中堅ですかね。

Q え? それでも中堅なんですか。1万回以上って、どういう?

A 毎日1回舞台に立ったとして、27年間かかります。僕は、17年やって1万回超えました。今はキャリア20年目ですが。

Q わあ、すごいですね。それで、5年目に、NBCの『ラストコミックスタンディング』の準決勝までいったんですよね。

A そうです。

Q 何人中ですか。

A 全米のコメディアンが全員集まったから、数千人でしょうね。

Q それは毎年あるんですか。

A 毎年ではないですが、今、6回くらいやったかな。2年に1回とか。

Q それはすごいことなんですよね。

A そうだね。外国人は僕だけだったから。

Q そうですよね、すごいですね。

今、綾部さんから、直接連絡あったり、会うことになったら、どうしますか。

とりあえず、ヘルプします。他の人にもしたように、コメディクラブに連れていきますね。舞台に立つのに、一番簡単な方法は、クラブにそのまま入っちゃうこと。

Q じゃあ、チャンスを惜しみなくあげたいと。

A はい。そっからは自分で。笑いを取らせることは僕にはできないんで。

Q 芸能クラスのような、スクールに行ったほうがいいですか。

A そうだね。それも教えたいなあと。いわゆるひと通りはサポートします。他の人にも同じようにしましたから。クラスは行ったほうがいいですね。コメディクラスとか。ネタをうまくやるとかじゃなくて、コメディアンの仲間ができるじゃないですか。仲間を作りにいって。そうすると、仲間同士で誘い合って、コメディをやったり。日本人の友だちを作らずに。

Q じゃあ、ニューヨークに行くと、まず住む場所。できれば、ニュージャージーのようなところで、腰をすえて。

A 8年ということなら。マンハッタンにいないほうが、ネタも作りやすいでしょうしね。転々とするのが一番いいかな。マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、ニュージャージー。

Q やっぱり地域差がありますよね。

A 全然あります。結局、そこに住んでいないとウソになるんで。全部語ろうと思ったら。いろいろ住まないと、深みが出ないでしょうね。

Q リオさんは、どこから始めたんですか。

僕は、マンハッタン、42丁目。もう、中心地。タイムズスクエアのすぐそば。あそこに住んでいると、全然寝られないの。熱気というか、エネルギーがすごすぎて。朝の7時くらいまで。マックの朝ごはんを食べて、ようやく眠れるくらい(笑)。

Q わお(笑)。確かに、エネルギーがすごそうですね。

じゃあ、まず、ニューヨーク感を味わった上で。バイトを決めて。バイトはどんなものがいいですか。

A バイトは何でもいいけど、日本食以外のほうがいい。

Q 例えば、スターになりやすいエリアとか、バイトとかあるんですか。よく業界の人が来るとか。あ、そういう考えは浅はかなんでしたね(笑)。

自分を高めることを考えたほうがいいです。日本人があまりいない場所のほうがいいでしょうね。働きにくいかもしれないですけど。コメディクラブで働くのが一番いいですよ。舞台に出るためには雑用をすれば、舞台に立たせてくれるんで。それがオススメ。

Q そのバイトはいくらくらいもらえるんですか。

A これね、基本的にはもらえないですけど(笑)。日によって変わります。チップで3ドルもらえる日もあれば、300ドルの日もあるし。そういうこともすべてネタになりますから。

Q そうか、生活をすることすべてがネタになるんですね。

結局、ラクしてもネタにならないから。

Q なるほど。全部、ネタにすればいいんですね。後で、語れるように。住むところも、わざと雑居ビルみたいなところで、いろんな人種の人とシェアしたりして。

すごい家賃が高いところもネタになるし、そっから急降下するのもネタになる。そのために、マンハッタンの一等地に住むのもいい。僕も42丁目に住んでいたらネタになりましたからね。

Q コメディクラスみたいな、クラスはどうやって情報を得たんですか。

A 僕は、新聞で見つけましたけど。これは、いくらでも教えますよ。クラスはたくさんあるんで。

Q 語学学校は。

語学学校は、僕は行っていない。語学はゼロからで全然かまわないですね。ゼロのほうがいいね。

Q でも、綾部さんの場合、コメディクラブじゃなくて、スターになりたいわけだから、ダンスとか、やっていたほうがいいですか。

A そうだね。アクロバットなダンスくらいできたほうがいいですね。

Q 身体を動かして。

A 身体で見せるというのは実際にありますからね。僕もマジックや社交ダンスが役に立ちましたからね。女の人をリードするペアダンスが役に立ちましたね。一瞬で引きつけることができますから。

Q じゃあ、日本で、何か習っておくというのもありですか。

ペアダンスがいいね(笑)。

Q 例えば、空手や忍術を習っておくとかはダメですか。

そういう人はすでにいる。いないものを狙う。ペアダンスができる日本人は意外にいないから。ギャップが大きい。

Q そういえば、リオさんは、ダンスもマジックもできるのに、それをあまり言っていないんですね。

A でも、舞台の中でふと入れることもある。「インド人がさあ、カラオケバーに連れていったらさ」って、周りのインド人がこうやって踊っているんだよ、とさらっと踊って見せるとか。

Q さりげなく情景として、入れていくとか。

A そこが、踊れないのと踊れるのとでは、全然違ってくるんで。

Q つまり、今から、自分独自のものを作っておいて、チャンスが来たら小出しに出す。

まあ、ムダなことがムダにならないんで。いかに、ムダができるかですね。だって、8年間やるんだから。絶対、ネタがなくなっちゃうから。そういう点では、自分を高めていく。お金やコネもそぎ落としていって。そのバランスですね。

Q 自分を高めるとは。例えば。

自分に投資。すべて、習得をする。だって、失っちゃうものはあってもしかたないから。お金もコネも失うから。でも、覚えたダンスは失わない。覚えた教育、技術は。

Q わあ、いいこと言いますね。

所有しているものは奪われる。失うものはね、奪われる。アメリカは、奪われるところでもあるから。足は引っ張られないかもしれないけど、自然と失われます。お金もコネも家も服も所有しているものは全部なくなる。だから、奪われても、丸裸になっても、生きていけるように教育をする。これはユダヤ人の考え方。

Q ああ。ニューヨークはたくさんの人種がいますけど。

A 結局は、ユダヤ人が牛耳っている社会だから。ユダヤ人に好かれるかどうかです。ということは、ユダヤ人と同じ考え方をしたほうがいいでしょう。

Q ユダヤ人はどこにいるんですか。

A そこらへんにいます。金融、経済、エンタメ全てのトップにいますから。

Q 頭いいですもんね。

頭がいいだけじゃなくて、トップは心がキレイ。だから、あさましいやつが嫌われる。ユダヤ人と呼応しようと思ったら。僕のクラブのオーナーもユダヤ人だから。結局、日本人と似ているんだよね、考え方が。

Q ほおお。なるほど。

日本にいるうちに、ビジネススクールに通って、勉強しておくのはどうですか。

ユダヤ人を研究したほうがいい。ユダヤ人になればいい。

Q ユダヤ人を研究したほうがいいって(笑)、まさかのアドバイス。

A だって、トップはユダヤ人だし、仕事を一緒にやるのもユダヤ人だし。

Q これ、でも、面白いかもしれない。日本人なら、同じ日本人同士で、成功者と見分けるというのは、難しいかもしれないですけど。人種ではっきりわかるんですか。

A 成功には、ユダヤ人が絶対からんでいるはず。僕をテレビにあげてくれたのもユダヤ人。

Q はああ。ユダヤ人に好かれるタイプというのは。

嫌われるのは、あさましい、お金に汚い。好かれるのは、心がキレイ、コツコツしている。教育に一番お金をかけている。

Q じゃあ、自己投資して、向上心があって、やる気があって。やるべきことはちゃんとやって、心がキレイで、人を裏切らず。

価値あるものをちゃんと見極めて。でも、普通のことでしょ。

Q 道徳的にも。

A そう。そういうところがしっかりしている人は、自分たちと同じ仲間として見て、信頼するから。だから、最初からお金を持っている必要はないんですよ。

Q この話は面白いですね。自然豊かな、離島のようなところに行って、心をキレイに過ごすのではなくて、ニューヨークの大都会に行っても、クリーンでピュアでいられる芯の強さというか。お坊さんのような生活ができる人。つまり、徳のある人ということですよね。

A そう。お金がなくても、この人はお金を将来持つ人になるべきだろうというジャッジをしてくれる街。その時に、何もなくてもいいんです。

Q わああ。なんて、素敵なお話。この人にお金を持たせたら、とんでもないことをしでかすではなく、世のため人のため活かしてくれると思わせる人になると。

A そう。この人を信じて、投資しようと思える人。

Q そのほうが、世の中的にもよくなると。

A そうです。世の中にとっても役立つ人なんです。だから、人間的に魅力があれば、必ず成功させられちゃうんですよ。社会に必要な人ですからね。

第3回につづく。

第1回はこちら。

第4回はこちら。

第5回はこちら。

プロインタビュアー、元女性誌編集者

著書『人見知りさんですけど こんなに話せます!』(最新刊)、『1万人インタビューで学んだ「聞き上手」さんの習慣』『みんなひとみしり 聞きかたひとつで願いはかなう』。雑誌編集者として20年以上のキャリア。大学時代から編プロ勤務。卒業後、出版社の女性誌編集部に在籍。一万人を超すインタビュー実績あり。人物、仕事、教育、恋愛、旅、芸能、健康、美容、生活、芸術、スピリチュアルの分野を取材。『暮しの手帖』などで連載。各種セミナー開催。小中高校でも授業を担当。可能性を見出すインタビュー他、個人セッションも行なう。

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