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ウィルチェアーラグビーがリオパラ出場権獲得! チーム一丸で受けとめた“ハカ”

瀬長あすか障がい者スポーツライター/健康系編集ライター
チーム一丸となってニュージーランドのハカを受けるウィルチェアーラグビー日本代表

ウィルチェアーラグビーのリオパラリンピック予選を兼ねた「三菱商事2015 IWRFアジア・オセアニアチャンピオンシップ」は31日、千葉ポートアリーナで予選リーグ最終戦が行われ、日本が54-40でニュージーランドを下し、リオパラリンピックの出場権を獲得した。

大会2日目に2012年ロンドンパラリンピック金メダルで昨年の世界選手権王者オーストラリアに9年ぶりに勝利するなど、予選リーグをオーストラリアに次ぐ5勝1敗の2位通過でリオ出場を決めた。

今大会では、すでにリオの出場権を手にしているオーストラリアを除く最上位国にリオの切符が与えられる。予選リーグでは、出場した4ヵ国(オーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国)が総当たり戦を2巡行い、オーストラリアと日本が5勝1敗に。当該チーム間の得失点差により、オーストラリアが1位、日本が2位で決勝に進出。その時点で日本がリオの出場権を獲得できることになった。

日本は、アテネ(8位)、北京(7位)、ロンドン(4位)大会に続くパラリンピック4大会連続出場。リオでは悲願のメダル獲得を目指す。「もう4位ではなく、メダルが欲しい。切符をどう使うかが大事」と、荻野晃一ヘッドコーチが話す通り、このリオ出場権獲得は通過点に過ぎない。ウィルチェアーラグビー日本代表は、ついにリオへのスタートラインに立った。

ロンドン予選と異なる試合前の行動

4年前のロンドンパラ予選で日本は、準決勝でニュージーランドと死闘を演じた。結局、日本がロンドンへの切符を掴んだものの、最後2点差まで詰め寄られ、試合が終わった瞬間、選手たちは安堵の涙をこぼした。

だが、現在の日本は強い。目指すのはあくまで世界の3強だ。ニュージーランド相手に2戦とも危なげない試合運びで勝利し、リオ行きを決めた試合後もすぐに翌日の決勝に気持ちを向けた。

4年前との違いは実力差だけではない。ニュージーランドの“ウィールブラックス”が試合直前に行う戦いの舞“ハカ”の受け方だ(車いすのラグビーにも、雄叫びのリズムに合わせて両手でタイヤを叩く“ハカ”がある)。

これまで日本は腕を組んだり、相手の動きを真似たりと、それぞれのスタイルでハカを受けていた。

だが、今大会は選手間で話し合い、肩を組むように隣の選手の背もたれを持って一列になり、正面を向いてチーム一丸で受けとめるようになった。

この試合の前にもキャプテンの池透暢(ゆきのぶ)は「相手にどんなに気迫があろうと、必ずリオの切符を獲る強い気持ちを持とう」と話し、“チーム力”という一体感を得たのだ。

実は4年前の決戦で、日本はハカを受けとめなかった。ハカが始まっても、選手たちは日本のベンチから離れなかったのだ。「自分たちのミーティングを行っていたから」「当時はハカの意味を知らなかった」などと当時を知る選手は証言するが、この日、リオを決める舞台で日本の選手たちが冷静にハカを受けとめられたのは、自信の表れなのかもしれない。

世界3強入りへ

今大会の日本は、最大の課題である第2、第3のラインナップを強化するため、強豪国相手でも繰り返しメンバーチェンジを行いながら戦っている。そんな中、日本最強のライン(選手の組み合わせ)で臨んだオーストラリアで価値のある勝利。世界ランキング4位の日本は、リオのメダル候補に名乗りを上げたと言えるだろう。

1日の決勝では、再びオーストラリアと対戦する。日本が勝てば、IWRF(国際ウィルチェアーラグビー連盟)による世界ランキングが入れ替わり、世界3位に浮上する。チーム一丸でパラリンピックのメダル獲得を目指すウィルチェアーラグビー日本代表に注目して欲しい。

障がい者スポーツライター/健康系編集ライター

1980年、東京都江東区生まれ。大学時代に毎日新聞で記事を書き、記者活動を開始。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、2004年のアテネパラリンピックから本格的に障がい者スポーツ取材をスタート。以後、パラリンピックや世界選手権、国内のリーグ戦などに継続的に足を運び、そのスポーツとしての魅力を発信している。一方で、健康関連情報のエディター&ライターとして、フィットネスクラブの会報誌、健康雑誌などに携わる活動も。現場主義をモットーに、国内外の現場を駆け回っている。

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