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W杯アジア最終予選。A組はウズベキスタンが2連勝で単独首位に。急死したカリモフ大統領に捧げた勝利

柴村直弥プロサッカー選手
カタール対ウズベキスタン。先制ゴール後、集まるウズベキスタンの選手たち。(写真:ロイター/アフロ)

ロシアW杯アジア最終予選、グループAは、ウズベキスタンが、シリアとカタールに勝利し、2戦2勝で単独首位に立っている。

2位にはカタールに勝利し、中国に引き分けた、1勝1分けのイラン。中国に勝利し、シリアに引き分けた韓国が得失点差でイランを下回り、現在3位となっている。

前回のブラジルW杯アジア最終予選でも、グループAはこの3か国の三つ巴となり、最終戦までウズベキスタン、イラン、韓国のどの2チームがW杯の出場権を得られるかは分からない状況であった。

参考記事:W杯アジア最終予選、日本のライバルとなるのは?

最終的にW杯の出場権を得たのは、イランと韓国。ウズベキスタンは2位韓国と勝ち点で並び、得失点差でわずかに1点下回り、出場を逃した。

実力はあると言われながらも、毎回アジア最終予選で勝ち切れずにW杯出場を逃し続けているウズベキスタン。試合運びが安定しないことが多く、精神面の充実が課題として指摘されていたウズベキスタン代表チームだが、昨夜は強い精神力を発揮してみせた。

試合4日前に大統領が急死

昨夜、ウズベキスタン代表DFイゴール・クリメッツが、86分に先制ゴールを決めた直後、駆け寄ってきたウズベキスタンの選手たちは、手を高く上げ、空を見上げた。

9月2日、20:55(現地時間。ウズベキスタン政府発表)に脳出血のため急死した、カリモフ大統領に捧げたものだ。

1991年の独立以降、25年間に渡り初代大統領を勤めたカリモフ大統領の急死は、選手たちの精神面にも多大な影響を与えたことは想像に難くないが、その4日後の試合で、選手たちはその影響を感じさせないプレーを魅せた。

例えば昨夜ゴールを決めたイゴール・クリメッツは現在24歳。産まれたときからカリモフ大統領が国を指揮していた。その大統領が急に死去したことで、今後自国がどうなっていくか、不安が大きかったとしても不思議ではない。

結果的にこのゴールが決勝点となり、喪章をつけてプレーしたウズベキスタンの選手たちは、カタールに1-0で勝利、故カリモフ氏に勝利を捧げることができた。

これまで精神面が課題と言われていたチームは、昨夜、見事な精神力で1つの試練を乗り越えてみせた。

しかし、ウズベキスタンは、カリモフ大統領の明確な後継者がいない中、政情が不安定になる可能性もある。

今後の国の政情不安による代表チームへの影響は少なくないことが予想される中、前回W杯の出場権を獲得したイラン、韓国、そしてカタールなどその他の国々がこの後どのように追随してくるか。

W杯アジア最終予選は、日本が戦っているグループBはもちろん、グループAの戦いからも目が離せない。

プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

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