日本戦の前日、ブラジルが行った公開トレーニングのすべて
6月15日の16時(日本時間では16日早朝)、コンフェデレーションズカップ2013の開幕戦、ブラジル対日本が行われる。
試合会場となるブラジリア・ナショナルスタジアムで、前日練習に臨んだブラジル代表は、練習の内容をすべてメディアに公開した。これもサッカー王国の余裕か、あるいは隠すものは何もないという自信の表れか。いずれにせよ、せっかく見ることができたのだから、その内容を記しておきたい。
ブラジルは全員でウオーミングアップを行った後、選手をレギュラー組と思われるフィールドプレーヤー10人とそれ以外に分け、10人に対してはルイス・フェリペ・スコラーリ監督が直々に戦術パターンを指導した。
システムは4-2-3-1。メンバーは以下のとおりだ。スコラーリ監督は記者会見でも、アクシデントがない限り、このメンバーを日本戦で先発させることを名言している。
DF:(右から)ダニエウ・アウベス、チアゴ・シウバ、ダビド・ルイス、マルセロ
MF:(ボランチの右から)パウリーニョ、ルイス・グスタボ
(2列目の右から)オスカル、ネイマール、フッキ
FW:フレッジ
ブラジルが行っていたのは、守備者をつけずに10人でボールをつなぎながらゴールを目指す形を確認する、いわゆる『シャドートレーニング』だ。たとえばディフェンスラインから中盤にかけては、以下のようなパターンが確認されていた。
●DFからダブルボランチにボールを渡し、ボランチを起点として2列目に展開
●センターバックから直接2列目へ縦パス
●センターバックのチアゴ・シウバとダビド・ルイスがドリブルで持ち上がり、2列目に展開(この場合、ルイス・グスタボが連動して下がり、ディフェンスラインのカバーに入る)
また、中盤からゴール前の崩しについては、2列目の3人が距離を近づけながら、以下のようなパターンを確認していた。
●右サイドハーフのオスカル、左サイドハーフのフッキが中に入って縦パスを受け、トップ下のネイマールが飛び出す。あるいは両サイドバックがオーバーラップ
●FWのフレッジに縦パスを当てて、2列目が飛び出す
上記のような手順で、ブラジルはサイドからのクロスや中央からの飛び出しを確認していた。印象的だったのは全員がワンタッチ、ツータッチでシンプルにプレーしていたこと。ドリブラーのネイマールやフッキを備えつつも、今のブラジル代表はシンプルなパスワークによるポゼッションサッカーを重視している様子が見受けられる。
また、前線の並びはこれ以外にも、左サイドハーフがネイマール、トップ下がオスカル、右サイドハーフがフッキとなる形もあった。トップ下にオスカルが入る場合は、より飛び出しの割合が多くなるようだ。どのケースでも最終的にはやや上がり目のボランチを務めるパウリーニョがゴール前でフリーになりやすい。昨年0-4で敗れた日本対ブラジル戦で喫した最初の失点も、パウリーニョのミドルシュートだった。ここは注意すべきポイントになるだろう。
さらにブラジルは、フランス戦の後半に用いたBプラン、中盤の底にアンカーを置く4-1-2-3システムも用意している。練習ではハードタックルに定評のあるダビド・ルイスをアンカーに置き、センターバックにダンチを投入するシステムも試した。ブラジルがリードした展開では、このBプランに移行する可能性も充分にある。
そしてパスワークの確認をしつつ、シュートがゴールラインを割った際には、セットプレーの練習へ。コーナーキックのキッカーは、左サイドが右利きのネイマール、右サイドは左利きのフッキが務めた。ゴールに向かう軌道のボールを蹴る配置だ。
ニアサイドに立つのはルイス・グスタボ。ペナルティーマーク辺りからは、ダビド・ルイス、パウリーニョ、チアゴ・シウバ、フレッジの4人が走り込んでくる。また、4人のうちの1人が集団から離れてファーサイドに立ち、グスタボに当たって流れてきたこぼれ球をねらうパターンなど、変化もある。
さらにフリーキックの練習も行った。キッカー候補はダニエウ・アウベス、ダビド・ルイス、フッキ、ネイマール。ダニエウ・アウベスとネイマールはカーブをかけたキック、ダビド・ルイスは鋭く落ちるドライブボール、そしてフッキの場合はボールをずらすなどして、壁のいないところへ自慢のパワーシュートを打ち込むパターンだ。
1時間ほどで終了したブラジルの練習は、すべて攻撃の確認に費やされた。どれもこれもフランス戦でやっていたことを復習したに過ぎない。たとえザッケローニ監督が見ていたとしても、特に目新しい発見はなかっただろう。
しかし、この試合を心待ちにしている我々にとっては、新しいブラジルのイメージをふくらませる機会になった。果たして試合はどのような展開になるのか。今からキックオフの笛が待ち遠しい。