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金崎夢生や柴崎岳らを封じた大宮の守備。キーポイントは仕事のシンプル化

清水英斗サッカーライター
大宮アルディージャDF菊地光将(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

第4節でサンフレッチェ広島に5失点を喫して以来、大宮アルディージャは公式戦9試合で負けなし。4勝5分けと好調だ。2失点以上を喫した試合はゼロ。非常に安定した戦いを見せている。

前節の鹿島アントラーズ戦では、日本代表の金崎夢生や柴崎岳など、攻撃力のある選手たちをシャットアウト。スコアレスドローで勝ち点1を獲得した。この強豪クラブを封じたキーポイントは何か?

前回の記事に続き、大宮の守備に注目したい。

J1昇格組の大宮が好調の理由は何か? 鹿島は第三、第四の手に乏しかった

第4節の広島戦の後からセンターバックに菊地光将が復帰し、河本裕之とコンビを組んでいることは大きい。鹿島は金崎や土居聖真など個の力に優れた前線をそろえているが、裏への飛び出しを封じ、足元にパスを入れさせ、ディフェンスラインを破らせなかった。

重要なのは、彼らが中央の守備に集中できたことだ。

前回の記事からの繰り返しになるが、脅威の大きいサイドハーフのカイオのカットインに対し、ボランチの横谷繁がサイドバックとの連係で中へのドリブルコースを防ぎ、中央のバイタルエリアを自由に使われないようにした。また、そのとき、もう一人のボランチの金澤慎は、後方から飛び出してくる柴崎に注意を払っている。

鹿島の中盤に対して周囲がしっかりと対応することで、大宮はセンターバックの2人が鹿島の2トップへの対応に集中することができた。ここが大きなポイントだ。

「後半は鹿島に押し込まれて下がらざるを得なくなったが、スペースが縮まったことで、FW2枚のチャレンジ&カバーが自然とできるようになった。そうやってスペースが無くなる中で、(鹿島は)裏をねらってくれた。もし、あそこでストライカーにボールを付けて3人目が入ってきたり、ワイドからのクロスをねらわれると、(守るのは)難しかったのかなと思う」(渋谷洋樹監督)

鹿島としては、大宮のセンターバックが2トップにばかり気を取られるわけにはいかない状況を作れば、より脅威になったが、そのシーンは限定的だった。

また、流れの中で決定機を作りづらいときは、セットプレーが重要なきっかけになるが、大宮は危険な位置でフリーキックを与えないように注意していた。

ボランチの金澤らは、鹿島のミドルシュートに対して、手を後ろに回したりしながら、相手に危険な位置でのフリーキック、あるいはPKを与えないように集中していた。

攻撃スタイルが中心の大宮だが、実は守備面でも、やるべきことをやっている。この失点の少なさは、やはり伊達ではない。守備の仕事をシンプルに整理できていることが大きな要因だろう。センターラインに経験を積んだ選手が多く、その点が功を奏している。

【前回の記事へ】J1昇格組の大宮が好調の理由は何か? 鹿島は第三、第四の手に乏しかった

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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