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CLを制したのはレアル! 決勝でアトレティコが犯した痛すぎる失敗とは?

清水英斗サッカーライター
2015-16CL決勝、レアル対アトレティコ(写真:ロイター/アフロ)

2015-16シーズンのチャンピオンズリーグ決勝、レアル・マドリード対アトレティコ・マドリードのマドリーダービーは、延長戦を含めて120分を戦い、1-1でPK戦へ突入。5人全員が決めたレアルが5-3でアトレティコを破り、2年ぶり11度目のチャンピオンズリーグ優勝を果たした。

今シーズン途中にジネディーヌ・ジダンが監督に就任したレアルは、決勝までの勝ち上がりも決して盤石ではなく、綻びを見せる試合が度々あった。個のクオリティーはすごいが、組織としての完成度はそれほど高くはない。

一方のアトレティコは、ディエゴ・シメオネ体制の5シーズン目。組織力が非常に高く、レアルに比べると戦術の完成度や柔軟性において、明らかに上回っていた。この決勝でも、試合中にシステムを柔軟に変えながら、大半の時間帯で試合をコントロールした。

しかし、結果を手にしたのはレアルだ。

「これもサッカー」「ジダンもってる」「個のクオリティーの差」といった要素以外に、アトレティコの敗因を見出すならば、筆者は“キックオフ”を挙げたい。

前半のキックオフは、アトレティコのボールで始まった。

後ろに下げたボールは、MFガビを経由し、右センターバックのサヴィッチへ。そこから前線へロングボールを送り、敵陣で競り合って試合に入ろうとしたアトレティコだったが、サヴィッチのキックは、勢い良くプレスをかけてきたFWベンゼマにブロックされてしまう。

試合の入り方は、非常に悪いものだった。

敵陣にボールを蹴って試合に入ろうとしたアトレティコだが、結果的には自陣のスローインから入ることになり、逆にレアルは、ここぞとばかりに高い位置でプレスをかけ、その勢いを持って、序盤を圧倒した。レアルはそのまま、前半15分にセットプレーからセルヒオ・ラモスに先制ゴールをゲット。

今季リーグ戦38試合で18失点と、抜群の守備力を誇るアトレティコだけに、先制すれば滅法強い。しかし、その必勝パターンは15分で崩れ去った。

序盤でリズムに乗り切れず、レアルに勢いづかれたのは、キックオフの失敗が大きかった。

新ルールでキックオフが変わる?

現状のルールでは、キックオフはボールを前に蹴らなければならない。そのため、一旦後ろへ下げてからスタートしたいチームでも、キックオフではセンターマーク周辺に2人を置き、一度前に出してから、下げるという手順を踏む必要があった。

しかし、これは足かせになる。

キックオフで2人が同じ場所に固まってしまうため、他の8人がピッチに広がってポジションを取ると、どこかで数的不利に陥りやすくなる。そこでアトレティコは、全体が右サイドに絞ってポジションを取り、コンパクトな状態でキックオフしたが、その狭くなった右サイドに勢い良くプレッシャーをかけられ、ロングキックが引っかかってしまった。細かい箇所だが、この1試合を振り返ると、非常に重要なプレーではないだろうか。

6月から施行される新しいサッカーの競技規則では、このキックオフを、どの方向に蹴っても構わないと改正される。

この新ルールなら、キックオフ時に2人を使う必要がなく、ピッチ上にバランス良くポジションを取らせた状態で、ボールを後ろに下げてスタートできる。

地味なルール改正ではあるが、ポゼッションを得意とするチーム、あるいは序盤を様子見で試合に入りたいチームにとっては、重要なポイントになるかもしれない。

まずは6月の日本代表戦となるキリンカップ、あるいはUEFA EURO 2016などで、この新ルールを各チームがどのように活用するのか。注目したい。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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