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「あれはPKじゃない」と語る原口元気。しかし、「セーフティでも良かった」と自省

清水英斗サッカーライター
キリンカップ、日本代表対ブルガリア戦(写真:田村翔/アフロスポーツ)

7-2で快勝したブルガリア戦。“アモーレ”に沸く取材エリアの中で、原口元気だけは、あまり晴れやかとは言えない、悶々とした表情だった。

後半25分に清武弘嗣との交代でトップ下に投入された原口だが、37分のチーム2失点目の場面では、金崎夢生のポストプレーのずれから、ボールを収めきれず、カウンターを食らって失点に絡んでしまう。さらに後半45分には、ペナルティーエリア内で相手MFガリン・イバノフを倒したと判定され、PKを与えてしまった。

原口にとっては、散々な試合だ。不甲斐なさからか、「(この試合について)自分は手応えがないですね」と自虐的な笑みを浮かべた。

PKが宣告されると、原口はすぐに両手を広げて抗議し、さらにGK川島永嗣がPKをストップした後にも、再び主審に抗議をするなど、判定には到底納得できない様子だった。

「僕が先に(ボールに)触っているので、PKじゃないと思いますけどね。(ボールに触った後に、相手の足に引っ掛けられた感じ?)そうですね。先にボールに触っていることが重要なので、ファールにならないと思います。(判定は)理解できないです」

試合後も不満を抱えていた原口。しかし、次のように付け加えることも忘れていない。

「まあ……でも、セーフティに行っても良かったかなと。先に触れると思ったから、行ったんですけど」

ペナルティーエリア内という状況を踏まえれば、相手の前に割り込む形でのインターセプトは、より慎重にならなければいけない。

タイミング的にインターセプトに間に合っていても、その動きを相手に邪魔されれば、逆に自分のファールと判定される恐れがある。たとえば今季チャンピオンズリーグ決勝で、後半開始直後にレアル・マドリードのペペがF・トーレスを倒したと判定されたPK、あるいは2年前のブラジルワールドカップ、コロンビア戦で前半16分に今野泰幸が与えたPKも状況が似ている。

ワールドクラスのストライカーなら、原口がインターセプトに飛び込んで来るのを待ち、あえてファールを誘うような罠も当たり前のように仕掛けてくる。先にボールに触れるタイミングでも、警戒が必要だ。

相手は背中を向けており、ゴール方向へ進めていないので、直ちに危険が訪れる状況ではない。この状況でPKを与えるのはもったいない。ペナルティーエリア内であることを踏まえると、寄せて、じっくりと粘り強く相手の選択肢を奪うように対応しても良かった。

今回は納得のいかない判定だったが、ボランチという守備寄りのポジションにも活路を見出しつつある原口だけに、このPKを与えたことは良薬になる。「セーフティに行っても良かった」という言葉が本人から出たのは、良い兆しだ。

この苦い経験は、必ず今後の役に立つ。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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