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大島僚太のチョイスに問題はない。ハリルホジッチの本当の失敗とは?

清水英斗サッカーライター
ワールドカップ・アジア最終予選、ホームのUAE戦(写真:ロイター/アフロ)

「いつ言うか」「どんな態度で言うか」。それは、「何を言うか」よりも重要ではないだろうか?

ワールドカップ最終予選の初戦、UAE戦は1-2で敗れた。ハリルホジッチは人選を悔やみ、「私のチョイスが悪かった」と試合後に反省している。

“チョイス”とは発言から察するに、二点ある。ボランチの大島僚太を重要な初戦でデビューさせたこと。そして左ウイングについて、清武弘嗣と宇佐美貴史、武藤嘉紀の誰を起用するのか迷い、清武を選んだことだ。

正直なところ、筆者はスタメン表を受け取ったとき、驚いた。大島の名前があること以上に、想定したスタメンとは方向性が異なったからだ。

個人的には3月にホームで行われたシリア戦と同様に、ドリブラーの宇佐美貴史を左ウイングに置き、ボランチに守備力の高い山口蛍、あるいは遠藤航を起用するプランをイメージした。すなわち外から攻めて、中を強固に守る、リスクマネージメントの効いた戦い方だ。

なぜなら、UAEは引いて守備をすることが予想されるので、日本が簡単に裏のスペースを突くのは難しい。サイドは個人で仕掛けるドリブラーを置く一方、中央は守備のできる選手を起用し、カウンターへの対抗力を高める。プレーメーカーの柏木陽介を起用できない以上、シリア戦と同じように、攻守のバランスを重視した布陣がベストに思えた。

ところが、ハリルホジッチのチョイスは違った。宇佐美と山口ではなく、清武と大島を起用した。

前半はサイドに開いた清武のクロスを、ファーサイドから本田圭佑が詰めてヘディングで折り返すパターンが意識された。これは効果的だったが、UAEは馬鹿ではない。ハーフタイム、本田に対面する左サイドバックを代えて修正した。

この形が減ってくると、やはり日本は、清武も本田も中央に入り、中をベースとするパス回しになる。そして相手を中央に寄せておき、両サイドバック、特に酒井宏樹を走らせて逆サイドを突く。

しかし、この上がったサイドバックの裏こそ、2015年アジアカップでUAEに突かれた箇所であり、カウンターの起点にされやすい。そうなったとき、長谷部誠と大島でカバーし切れるのだろうか。ハリルホジッチは、あえてリスクの大きい布陣をチョイスした。率直に言えば、意外だった。

だが、それはそれで、自信の表れと捉えることができる。

強気な布陣だが、それでやれると言うなら、問題はない。いちばん重要なことは、何を選ぶかではない。選んだ戦術に、全員が迷いなく傾倒できるかだ。“チョイス”の本当の意味は、そこにある。

しかし、ピッチ上には、その一体感がなかった。

選手がボールを持って立ち止まり、考える時間が長く、攻撃がテンポ良く動かない。それができるメンバーを“チョイス”したはずなのに。個々を見ても、裏をねらうのか、足下で回すのか、意識がズレている。早々と先制したことが、逆に意識のずれを引き起こしたのか、日本が強気でまとまった様子は、試合の序盤に限られた。

戦い方がちぐはぐだったことについては、指揮官の責任を問わざるを得ない。

ハリルホジッチの本当の失敗は、チョイスを間違ったことではない。そのチョイスをぎりぎりまで引っ張ったことだ。前日に長谷部が「監督も決めかねている」と発言したように、自分の判断に迷いがあることを、選手に感じさせてしまった。

使いたい選手が多すぎて選べない“嬉しい悲鳴”なら、「当日の朝までメンバーはわからない」という状況は、ポジティブに受け取ることができる。しかし、今回は違う。明らかにネガティブな悲鳴だ。

選手選考についてリスクを取らないと語るハリルホジッチなら、柏木が出場不可能になったり、試合勘に問題を抱えた選手がいる状況を想定したはず。柏木に問題があれば、競争相手の大島が出る。得意なプレーを中央で好きなだけやってやれ! 強気な布陣を組むなら、少なくともチーム内では、そう発信すればいい。しかし、実際は迷った挙句に、デビュー選手を指名することになった。

戦術に何を選ぶか、メンバーに誰を選ぶか。それはあまり重要ではない。極端に言えば、何をチョイスしても、その日の状況により、はまったり、はまらなかったりする。

大島を選んだことも、清武を選んだことも、問題ではない。今回のハリルホジッチの“チョイス”は、迷いを伝染させた。そこに本当の問題がある。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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