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2年後の平昌は大丈夫?キム・ヨナ不在の韓国フィギュアの悩み

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キム・ヨナと浅田真央の“フィギュア対決”は日韓を熱くさせたが……。(写真:アフロスポーツ)

ウインタースポーツ真っ盛りの2月。2年後の今頃は韓国の北東部の街で行なわれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪の話題で大いに盛り上がっていることだろう。平昌冬季五輪は2年後の2月9日に開幕する。

本番まで2年を切ったこともあって、韓国の各種メディアではその準備状況を点検する特集記事が多く組まれた。中でもとりわけ大きく紹介されているのが、施設の準備状況だ。

平昌冬季五輪では12の施設が活用される予定で、そのうち旌善(チョンソン)アルペンスキー場(アルペンスキー)、平昌アルペンシアリゾート(スキージャンプ、ボブスレー、スケルトンなど)、江陵(カンヌン)スピードスケート場、江陵アイスアリーナ(ショートトラックスケート、フィギュアスケート)、江陵ホッケーセンター(アイスホッケー)など、6ヶ所が新設となるが、新設6ヶ所の工事の平均進捗率は54・3%(1月30日現在)。それでもいずれに今年10月〜来年3月までの着工完了を目標に、突貫工事が進められている。

日本と韓国が共同開催したサッカーの2002年ワールドカップでも、準備段階で韓国のスタジアム建設問題が浮上したが、韓国は凄まじいスパードで見事に間に合わせた。おそらく平昌冬季五輪もキッチリ完成させてくれるだろうが、個人的に心配なのはハード(施設)面よりもソフト面(競技)の準備状況だ。

3度目の挑戦にして念願の冬季五輪の招致に成功した韓国。冬季五輪ではメダルの獲得数では日本を凌ぐ。

ただ、スキージャンプ、モーグル、ノルディックといた雪上競技でメダルを獲得してきた日本に対して、韓国はスキーがレジャースポーツとしてまだまだ定着しておらず、競技人口も少ない。

韓国ではオリンピックでメダルが確実視される競技や種目は「(国に)孝行している」という意味を込めて“ヒョジャ(孝子)種目”と呼ぶが、冬季五輪で韓国の“孝子種目”となっているのはショートトラックスケートやスピードスケ-トで、近年は女王キム・ヨナの登場でフィギュアスケートも一躍、韓国で人気の孝子スポーツとなった。

(参考記事:冬季オリンピックのメダル獲得数では韓国も、2年後の平昌五輪が心配!?

だが、そのフィギュアスケートが深刻なタレント不足に悩まされている。端的な例が2月18日から台湾の台北市で行なわれている四大陸選手権だ。

欧州を除くアジア、アメリカなどの4大陸の選手たちで競われる大会ということで、男女ともにメダル獲得が期待できる獲得として日本でも注目度が高い。昨日の女子ショートプログラムでは宮原知子が首位、村上佳菜子が2位と日本勢が上位を独占したが、韓国勢はパク・ソヨンが5位に入るのが精一杯。「パク・ソヨン、ショートプラグラムで初めて60点台突破(62・49点)、キム・ヨナ以降初!!」が見出しになるレベルなのだ。(ちなみに宮原は72・48点、村上は68・51点だった)。

期待の新星がいないわけではない。今年1月に行なわれた全国男女選手権では待望の“キム・ヨナ2世”が出現した。それも11歳の天才少女で、あのキム・ヨナも「私が小学生のときよりも上手い」と絶賛したほどだ。だが、そんな天才少女は今回の四大陸選手権や3月の世界選手権はもちろん、2年後の平昌五輪にも出場できない。

(参考記事:韓国に待望の“キム・ヨナ2世”出現も平昌はお預けのワケ

それだけに韓国のフィギュア・ファンたちはもどかしい。女王キム・ヨナが引退して以来、それに続く選手がなかなか現れず、浅田真央の復帰や羽生結弦の快挙連発など話題に事欠かない日本フィギュア界を羨望の眼差しで見つめているのも事実なのだ。

特に男子フィギュアの絶対王者・羽生結弦に関しては、個人が運営するファンサイトもあるほど。ネット住民たちの間では「ウセンキョルヒョン」の名で羽生は韓国でも広く知られており、その活躍を嫉妬の目で見つめているフシも若干あるのだ。

(参考記事:韓国でも有名な羽生結弦、別名「ウセンキョルヒョン」とはどんな意味?

開幕まで2年を切った平昌冬季五輪。果たして韓国は残り2年でハードとソフトの両方を解決できるだろうか。

ちなみにキム・ヨナは今でも韓国で抜群の人気を誇っている。とある調査研究所が実施した「人気調査アンケート」でも堂々の1位に輝いた。

(参考記事:韓国で人気の女性アスリート・トップ5は誰!?

現在は平昌冬季五輪の広報大使として活動しており、CM出演も多数。「スケートするキム・ヨナが恋しい」という声は未だに多い。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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