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韓国でも絶えないスポーツ選手たちの違法賭博

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

高木京介投手の関与が発覚し、ふたたび再燃したプロ野球の野球賭博問題。名門・読売ジャイアンツの相次ぐ不祥事ということもあって、日本のプロスポーツ界に暗い影を落としているが、韓国でも違法賭博問題はあとを絶たない。

記憶に新しいのは、昨年秋に発覚したプロ野球選手たちの違法賭博問題だろう。“韓国の巨人”と言っても過言ではない常勝軍団サムスン・ライオンズの主力選手がマカオで賭博をしていたことが発覚。そこには日本でも活躍した林昌勇(元ヤクルト)もおり、さらに呉昇桓(元阪神)までもが俎上に上がって大問題となった。

「海外のカジノで遊んだだけで起訴されて罰金?」と驚かれるかもしれないが、韓国では刑法で賭博に関する厳しい処罰があり、ふたりは賭博問題でかなりそのイメージを失墜させている。呉昇桓はセントルイス・カージナルスに入団できたが、林昌勇は選手生命の危機に立たされている状況だ。

参考記事:(「日本球界でも活躍した名投手たちが違法賭博でイメージ失墜」

特筆すべきは韓国プロスポーツ界では、こうした不正賭博問題が絶えないことだ。韓国では1982年にプロ野球、1983年にプロサッカー(Kリーグ)、1997年にプロバスケットボールリーグ(KBL)、2005年にはプロバレーボールリーグ(KOVO)が発足しているが、いずれのプロスポーツも過去に不正賭博問題を起こしている。日本以上に職業スポーツが盛んな“プロスポーツ大国”であるが、その一方で不正賭博に手を出す選手が絶えないのだ。

具体的にはどんな違法賭博か。それはインターネット上に存在する違法スポーツ賭博サイトだ。正確な数字は定かではないが、その数、実に500以上。ほとんどの違法スポーツ賭博サイトが携帯番号と送入金可能な銀行口座を登録すれば誰でも会員登録できる手軽な仕組みになっているらしい。

つまり、成人認証もなく、誰でも気軽にできる。韓国では合法・非合法にかかわらず、未成年はもちろん、現役選手のスポーツ・ベッティングは“国民体育振興法”という法律によって禁じられているが、それでも違法スポーツ賭博に手を伸ばす者が後を絶たない。韓国の刑事政策研究所の資料によれば、2013年度の違法スポーツ賭博市場の規模は31兆1000億ウォンもあるという。

深刻なのは、この違法スポーツ賭博が引き金になって、“八百長”まで起きていることだ。違法スポーツ賭博にハマり、うま味を覚えた選手や監督たちが、さらに儲けようと“八百長”に手を染めるわけだ。かつて取材した、とあるKリーガーも言っていた。

「先輩や後輩、知人から“違法スポーツ賭博よりも確実な投資方法がある。もっと大きな金を稼げるぞ”と、八百長を誘われる。断ると、さらに高い金額を提示され、“すでに多くのチームメイトが協力意思を示しているぞ”と促してくる。だから、チームメイトたちも信じられなくなる」

違法スポーツ賭博から始まり、やがて八百長にまで手を染めてしまう負の連鎖。巨人の野球賭博問題を見過ごせないのは、そこにさらなる闇が忍び寄る危険があるだろう。それだけに巨人は徹底的に調査する必要があるのではないか。

ちなみに韓国にも日本の『toto』同様に、合法的なスポーツくじ(体育振興投票券)があり、その事業内容も日本の『toto』と似ているが、その内容は大きく異なる。『スポーツ・トト』と呼ばれる韓国の場合、Kリーグだけに限らず、プロ野球、KBL、KOVO、韓国相撲、ゴルフなど多様な対象競技になっており(海外の公式戦も対象になる場合もある)、広く一般化している。プロスポーツが純粋なスポーツ興行としてだけではなく、ギャンブルの対象として定着してしまっているのだ。その反動から、違法スポーツ賭博が横行しているという指摘もある。

韓国プロスポーツが抱える課題は多い。

参考記事:(「不正賭博と八百長が絶えない韓国プロスポーツ界の闇」

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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