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日本で火花散らすイ・ボミとキム・ハヌルのゴルフ好敵手物語

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国時代のキム・ハヌル。現在は日本でイ・ボミと好敵手物語を展開中。(写真:ロイター/アフロ)

大江香織の優勝で終わった女子ゴルフツアー『Tポイント・レディース』。大江にとっては4年ぶり2度目の優勝であり、待望の今季初の日本人優勝となったが、韓国でより大きく報じられているのは昨季賞金女王イ・ボミと2週連続で優勝を逃したキム・ハヌルのことだ。

「イ・ボミ、2連勝に失敗、キム・ハヌル2週連続涙」(『JTBC GOLF』)、「キム・ハヌル、2週連続で優勝目前に挫折」(『Newsen』)、「キム・ハヌル、2週連続“悪夢の最終ラウンド”、イ・ボミは共同2位」(『スポーツ韓国』)など、各メディアが優勝を逃したふたりにフォーカスを合わせている。

ただ、それも無理はない。ふたりはともに韓国でも人気選手で、数年前はともにKLPGA(韓国女子ゴルフ協会)ツアーを代表する美人ゴルファーとして絶大な人気を誇っていたのだ。

そもそもふたりがプロデビューする前まで、韓国で人気の“美女ゴルファー”と言えばユン・チェヨンが代表格だった。韓国代表の常備軍(代表候補のようなもの)出身で、2005年に18歳ながらプロデビューした彼女は、今でも“元祖美女ゴルファー”と呼ばれている。彼女なりに悩みもあるようだが、人気は依然として高い。

(参考記事:「韓国の“元祖美女ゴルファー”はユン・チェヨン。そのワケと苦悩とは」

イ・ボミとキム・ハヌルは、ともにデビューと同時にこのユン・チェヨンに匹敵するほどの人気を得た。キム・ハヌルは2006年、イ・ボミは2007年にプロデビューしているが、ふたりはすぐにKPLGAの“顔”になっているのだ。KLPGAは2009年から実力と美貌を兼ね備えた選手を毎年選抜して売り出す“KLPGA広報モデル”を発表しているが、ユン・チェヨンは2009年から2015年まで7期連続、キム・ハヌルは2009年から2014年まで6期連続、イ・ボミは2010年から2年連続で選ばれている。イ・ボミが“スマイル・キャンディ”、キム・ハヌルが“スマイル・クイーン”と呼ばれるようになったのも、この頃からだった。

(参考記事:「実力だけでなく美も競う韓国女子ゴルファーたち」

ちなみにふたりの愛称には、それなりの所以があるらしい。旧知の韓国ゴルフ記者によると、「イ・ボミは感受性豊かで涙いっぱいに喜びを表現することから“スマイル・キャンディ”の名で親しまれ、キム・ハヌルはピンチやミス時も微笑を絶やさないことから“微笑天使”“スマイル・クイーン”と呼ばれるようになった」とか。いずれにしても愛くるしい笑顔が印象的なふたりだが、フェアウェイでは確かな実績も残してきた。

アマチュア時代の実績なら2006年に国家代表の常備軍(代表候補のようなもの)入りしているイ・ボミのほうだが、プロとして最初に頭角を現したのはキム・ハヌルのほうだった。2007年に賞金ランク13位なると、翌2008年は3位に。2007年にプロ転向したイ・ボミは2年間の2部ツアー生活を送った。

ただ、2009年になるとイ・ボミは賞金ランク5位、キム・ハヌルは7位と立場は逆転。その勢いに乗ってイ・ボミは2010年にKLPGA賞金女王に輝き、2011年から日本ツアーに参戦し、日本ツアーに専念する2012年から勝利を積み重ねていく。

一方のキム・ハヌルも、イ・ボミが抜けたKLPGAを盛り上げるべく勝利を重ね、2011年〜2012年と2年連続で韓国ツアー賞金女王に輝き、その実績を引っ提げて昨年から日本にやって来た。キム・ハヌルは“興行の女神”という別名もあったらしく、それゆえにKLPGA関係者の中には彼女の日本進出を残念がる声もあったようだが、それでもキム・ハヌルが日本行きを選んだ背景には好敵手イ・ボミの存在もあったのだろう。

もっとも、フェアフェイでこそ競い合い仲のふたりだが、普段はとても仲が良いらしい。キム・ハヌルは自身のインスタグラムにイ・ボミとのツーショットも公開しているほどだ。

(参考記事:「イ・ボミとの“ミニスカ対決”でも負けていない!! 美女ゴルファー、キム・ハヌル」

同世代でゴルフクラブやゴルフフェアの契約スポンサーも同じというイ・ボミとキム・ハヌル。実は出身大学も同じ。建国(コングッ)大学出身なのである。建国大学にはふたりのほかにもチェ・ナヨン、アン・ソンジュらも通っており、韓国の人気美女ゴルファーであるアン・シネも建国大学出身だ。

ちなみにアン・シネはイ・ボミやキム・ハヌルはもちろん、前述のユン・チェヨンも務めてきたKLPGA広報モデルに5回選ばれ、韓国ゴルフ界屈指の“フォトジェニック”として有名でもある。その美しさはイ・ボミ、キム・ハヌル、ユン・チェヨンら美女ゴルファーたちをも凌ぐとされているほどだ。

(参考記事:「激撮15連発!! ゴルフ界のセクシークイーン、アン・シネの魅力」

いずれにしても、イ・ボミとキム・ハヌルのライバル対決にはこれからも注目だ。同世代のライバルと言えば、日本では宮里藍と横峯さくらが好敵手として有名だが、イ・ボミとキム・ハヌルもそれに匹敵するライバル関係にある。それも舞台が日本ということもあって、韓国メディアも注目せずにはいられないのだろう。

イ・ボミとキム・ハヌルのライバルストーリー日本編。その物語はまだ序章が始まったに過ぎず、これからますますヒートアップしそうな予感だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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