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「A組よりもB組のほうが難しい」という韓国。抽選会出席パク・チソンには“国際的欠礼”の災難!?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
「A組のほうがB組よりも難しい」とした韓国代表ウリ・シュティーリケ監督(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

昨日決定したロシア・ワールドカップアジア最終予選のグループ組み合わせ。各国ともに悲喜こもごもが分かれたが、韓国の反応は大方肯定的だ。通算成績9勝7分け12敗と負け越しており、敵地では2分け4敗とテヘランでは勝ったことがないイランと3大会連続して最終予選で同居することになったものの、「天敵イランと激突、シュティーリケ号、死の組は回避」(『YTN』)、「イランを抜かせばあとは大丈夫!韓国、満足できる最終予選の旅情」(『スポーツ東亜』)と楽観的である。「対戦運が無難なシュティーリケ号、9大会連続ワールドカップは青信号」(『世界日報』)、「シュティーリケ号、ロシアへの足取り軽く」(『チャンネルA』)とまで報じられているほどだ。一般紙『亜洲経済』などは、「B組よりも良いA組、組編成は悪くない」としている。

では、そこまで言うなら韓国メディア関係者たちは日本が属することになったB組をどう見ているのだろう。3人の韓国記者に話を聞いてみた。

「組み分けで見れば、日本より韓国のほうがいいでしょう」と語ったのは『中央日報』サッカー班のソン・ジフン記者だ。かねてからJリーグの総合力を評価し、先日のアフガニスタン戦での日本代表の守備力の向上にも一目を置くソン・ジブン記者はこう語る。

(参考記事:韓国人記者も評価!!「総合力ではJリーグがアジアNo.1だ!!」)

(参考記事:「日本は自信にあふれている。今の状態で対戦したら韓国は・・・」日本対アフガニスタン戦を見た韓国記者の“目”)

「またしてもイランと同じ組になりましたが、そのほかの国とは通算成績で優位に立っているし、“恐韓症”がある中国、国際大会になるとなぜか韓国に勝てないウズベキスタンと同じになった。韓国としてはイラン、サウジ、UAE、イラクがもっとも避けたかった相手なんです。オーストラリアとサウジは言うに及ばず、UAEとイラクは中東への長距離遠征となる。韓国代表が先日、バンコクに乗り込んでタイ代表と親善試合を行いましたが、タイはホームでは強い。日本はアウェーでの勝ち点管理が重要になるのではないでしょうか」

アウェーでの戦いがポイントになると語ったのは、サッカー専門誌『FourFourTwo KOREA』のホン・ジェミン編集長も同じだ。先日のシリア戦での日本代表の集中力を評価していたホン・ジェミン編集長は、「B組ではオーストラリアと日本が本命。対戦相手によって出来不出来の波が激しい韓国とは異なり、日本は安定した試合運びができる。そうした長所をアウェーでも発揮できるかがポイントだと思う」と話す。

(参考記事:「集中力を失わない日本の攻撃力は印象的。ただ、エースが物足りない」日本対シリア戦を見た韓国人記者の“目”)

「最終予選でネックになるのは、移動距離とアウェーの環境。その点で中東勢が3カ国の日本のほうが韓国より不利に映ります。また、オーストラリア、サウジ、イラク、タイはアウェーチームを手こずらせることで有名。日本の主軸である欧州組がアウェーでも良いコンディションで臨めれば、大きな問題はないはず。客観的に見て、B組は日本とオーストラリアの戦力が図抜けていますから」

ただ、「それでも油断は禁物」と語ったのは、韓国で有名なフリーのサッカージャーナリストであるソ・ホジョン記者だ。

「日本の実力は確かですが、B組で難敵となるのはオーストラリア、サウジ、イラクでしょう。フィジカルだけではなく、最近は技術力の高いMFも出てきたオーストラリアは韓国の立場からしても負担多い相手だし、サウジは近年下降気味とはいえ彼らのホームでは厄介な相手。イラクはここ数年常にダークホースです。それに日本は前回のアジアカップでUAEにPK戦の末に敗れている。B組にはアジアカップ4強中、3チームが顔を揃えることになった。日本にとっては油断禁物でしょう」

いずれにしても韓国のメディア関係者たちの意見を集約すると、韓国が属するA組よりも日本が属するB組のほうが厄介だと見ているようでもあったが、韓国代表のウリ・シュティーリケ監督は抽選会後に「A組のほうがB組よりも同じ戦力構成となっており、より難しい」とも語っている。見方や立場によってその印象が変わっているのは間違いないようだ。

ちなみに今回の組み分け抽選会には元韓国代表で現在は引退したパク・チソンの姿もあった。韓国では今回の抽選会にドロワーとして参加すると報じられて注目を集めていたが、彼が各国の運命を決めることはなかった。韓国メディアの報道によると、なんでも同じくドロワーを務める予定だった元サウジアラビア代表のサーミー=アル・ジャビールが急きょ出席できなくなり、パク・チソンがドロワーを務めることも流れてしまったらしい。突然のキャンセルに韓国の一部ファンたちの間では「国際的欠礼だ」と不満の声が上がってる。本来ならばパク・チソンは第1シードから第3シードのドローを担当する予定だったそうだが、彼が担当していたら日本も韓国も違った組み分けになっていたかもしれない。

(参考記事:あの朴智星(パク・チソン)は今、どこで何をしているのか)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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