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イ・ボミが韓国メディアに告白「五輪は諦めない。アメリカ進出もない。これからも日本!」の真意

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国メディアに日本ツアー専念を語ったイ・ボミ。その真意は?(写真は2011年)(写真:アフロスポーツ)

鈴木愛の優勝で幕を閉じた国内女子ゴルフツアー『中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン』。昨季賞金女王で今季出場7試合すべてにベスト10入りを果たしているイ・ボミは出場しなかった。オープンウィークとして韓国に戻っていたためだ。

では、イ・ボミは韓国で何をしていたのか。韓国のゴルフ記者に聞いたところ、5月17日には母校・建国(コングッ)大学ゴルフ部の『世界3大ツアー100達成記念パーティー』に参加していたという。

建国大学については、前回コラム「イ・ボミとキム・ハヌルの後輩で韓国女子ゴルフ界の“セクシークイーン”!? アン・シネが注目されるワケ」でも触れた通りだ。同校ゴルフ部は、イ・ボミの同級生であるキム・ハヌルはもちろん、米国ツアー9勝のチェ・ナヨン、日本ツアー20勝のアン・ソンジュなど多数のタレントたちを輩出してきたが、同校100勝のうち、日本ツアー16勝をしているイ・ボミは功労賞も受賞したらしい。

見逃せないのは、その記念パーティーで韓国メディア『NEWSIS』の取材に応じたイ・ボミのコメントだ。久々に韓国メディアの前に姿を見せたイ・ボミは、いくつか興味深いことを語っている。日本では取り上げられていないようなので、紹介したいと思う。

まずはリオデジャネイロ・オリンピックについて。イ・ボミは世界ランキングを15位から14位に上げたものの、韓国メディアは日本ツアーを主戦場とするイ・ボミが、パク・インビ、チョン・インジら米国女子ツアーで活躍する世界ランク上位者を上回るのは難しいと見ているが、彼女はそれでも諦めないと語っているのだ。

(参考記事:“場外騒動”も!!韓国リオ五輪代表争いの熾烈な裏側)

「ランキングや獲得ポイントに差があり、私よりうまい選手も多く、出場資格を得る可能性が低いことは私もよく知っています。ただ、残りの試合をひとつひとつ最善を尽くしていけば、ランキングが上がり、そうしていけば五輪出場権にも少しずつ近づくのではないかという思いで集中しようとしています」

日米のツアーで獲得ポイントに違いがあることは了解済み。越えなければならないライバルが多いこともわかりきっていたこと。それでもイ・ボミはまだまだ諦めていないのだ。改めて彼女のリオ五輪出場への強い想いを感じずにはいられないが、韓国メディアの見方は厳しい。

3月に挑戦した米国ツアー『ANAインスピレーション』のときもベスト10入りは果たしたものの、「比較的善戦はしたが、結果的にイ・ボミが得るものはなかった」と報じるメディアもあった。

ただ、それはあくまでもメディア側の見方で、イ・ボミは得たものもあったと語っている。

「ANAインスピレーションでは自分に足りないことも感じましたが、それとともに自信も一緒に得たような気がします。(慣れないアメリカで戦うときは)何よりも当日のコンディションとグリーンへの適応力が重要ですが、そうした弱点をしっかり補完し、全米女子オープンでは良い成績を収められるようにしたいです」

前回の経験を糧にして、7月に挑戦する予定の全米女子オープンへの意欲と覚悟を語ったイ・ボミ。そもそも韓国時代についた“スマイルキャンディ”の愛称は、いつも明るく前向きな性格がその所以になったと言われるが、何事もポジティブに捉え考える姿勢は今も変わらない。それは師匠チョ・ボムスの影響であり、教えでもあるのだろう。

日本のファンたちにぜひとも紹介したいのは、彼女が語った次の言葉だ。日本で活躍し、昨年は最高の一年を過ごしただけに、今後はもっと大きい舞台、すなわちアメリカ進出も考えているのでないかという記者の問いに、イ・ボミは間髪入れずこう答えたという。

「アメリカ進出の計画はありません。ランキング・ポイント次第でLPGAツアーにも出場できる機会が与えられるので、(アメリカは)それで十分です。これからも日本ツアーに専念する考えです」

イ・ボミが日本ツアー専念を語ったのは今回が初めてではない。ただ、韓国メディアに語ったのは珍しい。しかも、彼女は具体的な理由まで語っている。

「日本の一部のゴルフファンたちの間では、“韓国選手は日本で良い成績を残すとアメリカに行ってしまう”という認識を持っているようですが、そんなイメージを変えたいと思っていますし、日本のファンたちが注いでくださる多くの愛情に感謝したい」と言ったというのだ。

(参考記事:母校の100勝達成記念行事に参加したイ・ボミ「アメリカ進出はない。これからも日本でプレー」)

日本でのプレーを楽しみ、日本への感謝の気持ちを忘れないイ・ボミ。そんな彼女が日本の女子ゴルフ界をさらに盛り上げてくれるのも悪くない。改めてそう思わせてくれる言葉ではないだろうか。

それに練習熱心なイ・ボミのことだ。オープンウィーク期間中とはいえオフを満喫することなく、絶対的な信頼を寄せる専属コーチのチョ・ボムスのもとを訪ねてスイングチェックなどのアライメントを受けていたことだろう。

今週は日本に戻り、5月27日から始まる『リゾートトラスト レディース』に出場予定のイ・ボミ。五輪切符を目指したラスト・スパートがいよいよ始まる。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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