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スーパー女子高生は勝みなみだけじゃない!!低年齢化が進む韓国女子ゴルフ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2014年仁川アジア大会での勝みなみ(左)とパク・キョル(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

昨日行われた女子ゴルフツアーの『ニチレイレディス』。優勝したのは韓国のシン・ジエだった。シン・ジエは大会3連覇で、なんとプロ通算45勝目。韓国ツアーで20勝、アメリカツアーで11勝、ヨーロピアンツアーで2勝、そして日本ツアーで14勝と通算45勝となり、韓国女子ゴルフ最多優勝記録を更新した(それまでは故ク・オッキさんの43勝)。しかも、昨日は父の誕生日。 シン・ジエの父も“ゴルフ・ダディ”として有名だが、“父の日”に最高のプレゼントを贈った孝行娘はシン・ジエとなった。

父の日も返上!?仕事も財産も投げうって娘に賭ける韓国“ゴルフ・ダディ”たち ヤフーニュース個人 2016/06/19

このシン・ジエの快挙もさることながら個人的に印象的だったのは、史上初のプロ2勝目まであと一歩のところまで迫った勝みなみだった。惜しくも優勝はシン・ジエに譲ってしまったが、単独首位で最終日を迎えたその健闘ぶりは“最強アマ”の称号に相応しかった。

ちなみにシン・ジエもかつては“最強アマ”だった。2005年、韓国の各種アマチュア大会でタイトルを総なめにし、国家代表も務めていた当時17歳だったシン・ジエは、KLPGA(韓国女子ゴルフ協会)ツアーの『SKエンクリーン・インビーテョナル』に招待出場し、いきなり優勝を手にしている。シン・ジエも勝みなみ同様に“スーパー高校生”だったわけだ。

このシン・ジエの登場以来、韓国では “恐るべし10代”“プロを食ってしまうアマ”が多数出現している。最近で有名なのは、現在はアメリカLPGAで活躍するキム・ヒョージュだろう。中学3年生で韓国代表になると、韓国の各種アマチュア大会で計14勝を飾って「ゴルフ神童」「シン・ジエの再来」とも言われた。

(参考記事:“ゴルフ神童”と呼ばれる韓国女子ゴルフ界の若きエース、キム・ヒョージュ)

キム・ヒョージュの名は日本のゴルフ・ファンたちの記憶にも強く刻まれているはずだ。2012年にはまだ女子高校生ながら、日本女子ツアー『サントリーレディスオープン』でトッププロたちを蹴散らしてJLPGA記録を更新する圧巻の61ストロークを叩き出し、16歳332日という日本女子ツアー史上最年少優勝記録を大きく更新した(前記録は宮里藍の18歳101日)。

アマチュア時代に勝みなみと何度かラウンドしているパク・キョルも、“スーパー高校生”としてその名を轟かせている。18歳・高校3年生で迎えた仁川アジア大会では韓国チームを団体で銀メダルに導き、個人では金メダルに輝いた。その実力もさることながら、女優キム・テヒに似ている美しい顔立ちとルックスにもプロデビュー前から注目が集まり、“韓国ゴルフ界のバービー人形”と言われているほどだ。

(参考記事:韓国女子ゴルフ界が注目!! パク・キョルに、ニューヒロイン誕生の予感)

今年はイ・ボミ、キム・ハヌル、ユン・チェヨン、アン・シネら歴代美女ゴルファーたちが務めてきた2016年KLPGA広報モデルにも選ばれている人気者だ。

ただ、そんなパク・キョルもプロ転向後はなかなか結果を出せていない。2015年は2度の2位はあったものの優勝なし(賞金ランク22位)。プロ2年目となる今季もまだ優勝に手が届かない。群雄割拠のKLPGAツアーでは大型新人であっても優勝できる保証はないというわけだが、その競争の激しさはほかならぬシン・ジエも認めている。

旧知のゴルフ記者によると、シン・ジエはアメリカ、日本、韓国のツアーでどこが一番過酷かを尋ねられたとき、「ダントツで韓国」とキッパリ言い切ったらしい。ジュニア時代から徹底的に競争し、プロになっても“生きていくには勝つしかない”という意識が選手全般に浸透している韓国では、“スーパー高校生”たちもプロの壁にぶつかるわけだ。

(参考記事:韓国美女ゴルファーたちに聞いた!! 日本から離れられないワケ)

ただ、それでも果敢に挑む“スーパー高校生”がいる。以前、本欄でも紹介したチェ・ヘジンがそのひとりだ。昨年の韓国女子アマチュア選手権優勝者として今年のサロンパスカップに出場した彼女はまだ16歳。サロンパスカップでは22位に終わったが、5月に行われた韓国地域予選では並みいるプロたちを退け、7月に開催されるアメリカ女子オープンへの出場権を勝ち取った。韓国では「新たな10代伝説」を作る逸材としてかなり期待されているらしい。

そんな韓国の“スーパー高校生”の出現や勝みなみの活躍を目の当たりにすると、日韓女子ゴルフ界の低年齢化がいよいよ加速していることを実感せずにはいられないが、 百戦錬磨のプロたちを相手にしても臆さない“スーパー高校生”たちの溌剌プレーは爽快で好感度も高い。それだけに勝みなみの出場が予定されている『サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメント』も楽しみになってくる。

果たして勝みなみは今度こそ2度目の優勝を成し遂げて、プロ転向のチャンスを手にできるだろうか。多くのゴルフ・ファンたちが “最強アマ”の称号から一日も早く卒業する日を待ち望んでいるのではないだろうか。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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