Yahoo!ニュース

韓国芸能界で毎年夏に“K-POPガールズ大戦”が勃発する理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今年の“ガールズ大戦”の火蓋を切ったのはSISTARだ(写真:ロイター/アフロ)

本格的な夏の到来を目前に控えた今、韓国芸能界でひとつの戦争が始まろうとしている。その名も“ガールズ大戦”。文字通り、K-POPガールズ・グループたちによる“女たちの戦い”だ。といっても互いに拳を交えたり、いざこざを起こすわけではない。韓国歌謡界では新たな楽曲を発表することを、音楽活動の再開という意味も込めて“カムバック”というのだが、6月下旬から夏に波に乗り遅れるなと言わんばかりにガールズ・グループが次々と“カムバック”しているのだ。

韓国メディアによると、6月最終週から7月第1週にかけて、一日に1〜2組のガールズグループたちが“カムバック”するらしい。その中には日本でも人気のSISTAR やWonder Girlsはもちろん、少女時代のリーダーのテヨンなども含まれている。新鋭アイドルグループたちも7月に新曲を発表することを表明し、それぞれヒットチャートの上位ランクインを虎視眈々と狙っているらしい。まさにこうした状況から韓国では「毎年夏は“ガールズ大戦”の季節」と言われているほどだ。

それにしてもなぜ、この時期に韓国で“ガールズ大戦”が勃発しているのか。一般的によく言われているのが、夏という季節感だ。夏は開放的なイメージがあるため、普段よりも肌の露出度が高い衣装を身にまとっても不自然ではなく、セクシーさを全面的にアピールできる。実際、ガールズ・グループのほとんどが、その美肌を惜しげもなくアピール。ただし今年のトレンドはビギニ姿ではなく、“ラッシュガード”らしい。

(参考記事:韓国アイドルたちのセクシートレンドは、水着ではなく“ラッシュガード”!!

また、ステージの上でも肌の露出が多い衣装やセクシーなダンスを披露。近年、韓国ではガールズグループたちの露出が過激化する傾向にあるが、この夏はその流れにさらなる拍手がかかる可能性もあると言われている。

(参考記事:もはや度を超えた過激ぶり!! 韓国女性アイドルがますますセクシー路線に走っていくワケ

ただ、夏に“ガールズ大戦”が起こるのは、セクシー・アピールだけが目的だけではないらしい。以前、韓国の音楽関係者が教えてくれた。

「夏にヒット曲を出したり人気や知名度を高めることが、秋から冬にかけての下半期を決めることになる。夏にヒット曲を出したグループは秋になると各種イベントに引っ張りだこになり、出演料を稼げるだけでなく、その活動が知名度拡大にも広がり、年末の受賞式レースでも優位に立つことができる。少女時代やA-Pinkなど既存の人気グループに逆立ちしても勝てない新人グループなどは、そうした先を見越して“ガールズ大戦”に参戦しているのだろう」

実際、美ボディなのに天真爛漫というキャラクターでその美脚に5億ウォン(約5000万円)の保険も掛けたというGril’s Dayのユラや、「今、韓国で最も人気の高いアイドル」(スポーツ新聞・芸能部記者)」というAOAのソリョンも、昨年の“ガールズ大戦”で今の人気に火がついた。

ちなみに、ガールズ・グループたちが内心で狙うのは9月にやって来る大学祝祭(テハク・チュッチェ)シーズンらしい。

大学祝祭とは、日本で言うところの学園祭のようなもので、夏に新曲がヒットすれば、当然、大学側から学園祭出演へのオファーが殺到するという。日本同様に韓国の大学・学園祭でもアイドルグループたちのミニライブが学園祭の大きな目玉になっており、夏の“ガールズ大戦”は秋の大学祝祭シーズンを攻略するための布石というわけだ。

以前、取材した韓国の音楽関係者もこんなことを言っていた。

「夏にガールズ・グループがアルバムを発表する理由は、大学祝祭シーズンを考慮している場合が多い。大学側も男子学生たちが盛り上がるので、ボーイズ・グループよりもガールズ・グループを好むのですよ。ガールズ・グループの所属会社も、大学祝祭ライブは出演料が意外と高額なのでそういったことも意識しているでしょう」

(参考記事:学園祭ライブの出演料に1億ウォン!? 韓国の“大学祝祭”をめぐる賛否)

単にサマー・ヒットを狙うだけではなく、夏に知名度を上げ、秋のイベント出演などで収穫も得ようという実利も求めた韓国芸能界の“ガールズ大戦”。今後は清純派系で今年人気急上昇のGFRIEND(=ヨジャチング。韓国語で「彼女」の意味)や、MAMAMOO(ママム)なども“カムバック”を予定しているという。はたして、“ガールズ大戦”を制するのは誰か。その勝者が秋には日本に乗り込んでくるということも、あるかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事