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日本、ライバル、リオ五輪。イ・ボミが韓国メディアに告白した“熱き想い”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2011年以来の『全米女子オープン』に挑むイ・ボミ(写真は2011年)(写真:アフロスポーツ)

昨季日本女子プロゴルフツアー賞金女王で、今季もすでに2勝を達成し賞金ランキングのトップを走るイ・ボミ。先週の『アース・モンダミンカップ』を制したあと、韓国に一時帰国した彼女が、韓国メディア『聯合ニュース』との取材で興味深いことをいくつか語っている。

例えば今季の目標について。今季は3勝を目標にしていたそうだが、すでに2勝を達成した今、通算5勝に切り替えたという。そして、日本女子ツアー通算20勝を達成すること。『アース・モンダミンカップ』優勝で日本通算17勝としているだけに、あと3勝すればそれも達成できるだろう。

そのためには日本の選手たちだけでなく、シン・ジエ、キム・ハヌルなど同級生の「韓国ゴルフ最強1988世代」たちもライバルとなるが、イ・ボミは「むしろ彼女たちの存在がモチベーションにもなっている」と語っている。

ゴルフ専門誌の記者も彼女たちの関係性について「良き友人であり、互いに刺激し合うライバルのようです」と語っていたが、イ・ボミが改めてその関係性を強調した格好だ。

(参考記事:現場密着のゴルフ記者が明かす!! イ・ボミ&キム・ハヌルの素顔)

ちなみに2012年賞金女王の全美貞も日本通算20勝を達成しているが、KLPGAでは国内ツアーで20勝以上を挙げたり、アメリカ、日本、ヨーロッパツアーでも20勝以上の成績を残せば、KLPGA永久シード権を付与している。イ・ボミのも通算20勝を達成すれば、KLPGA永久シード取得者となるわけだが、彼女は今後も日本で活躍してくれるだろう。

先月も別の韓国メディアの取材で、「これらも日本ツアーに専念する考えです」と語ったばかり。しかも、その理由は単に結果を残すためではなく、「日本でプレーする韓国人選手のイメージを変えたい」という想いを持っていることを明らかにしたことがあった。

(参考記事:母校の100勝達成記念行事に参加したイ・ボミ「アメリカ進出はない。これからも日本でプレー」)

イ・ボミが韓国メディアに日本ツアー専念を語ったのは珍しかっただけに目を引いたが、今回のインタビュー記事はさらに突っ込んで、日本進出を目指す韓国人選手たちにも、メッセージを送っている。以下、翻訳するとこんな感じだ。

「韓国と日本の間には辛い歴史がある。両国間には良くない感情もある。韓国人のイメージが私のせいで悪くなってはいけないという責任感を持たなければならない。謙虚で礼儀正しく、そして堂々と行動しなきゃならない。もちろん、ゴルフの実力も備えてね」

今年4月の『ヤマハレディースオープン葛城』で活躍した“8等身美女ゴルファー”ユン・チェヨン、春先は“勝率100%の女”とまで騒がれた新星パク・ソンヒョンなどは日本進出の可能性を示唆している。

韓国女子ゴルフ界の“超絶セクシークイーン”アン・シネに至ってはファンの間で日本進出待望論も囁かれているが、イ・ボミのメッセージは彼女たちにもしっかりと届いていることだろう。イ・ボミの日本での成功は、韓国女子プロゴルファーたちの挑戦心を大いに刺激しているはずだ。

イ・ボミ自身の挑戦心も衰えることはない。「可能性が1%でも諦めない。オリンピックに出場したいという気持ちは一度も揺れたことがない」とリオデジャネイロ五輪出場への意欲を改めて示した。

リオデジャネイロ五輪で112年ぶりに正式種目として復活するゴルフだが、世界のトッププロたちの一部にはジカ熱への不安から辞退する者も出ているが、「それは家族を守るための選択なので理解する。けど、私はチャンスが与えられるならジカ熱も気に止めない」とまで語っている。イ・ボミがそこまでリオ五輪にこだわるのは亡き父との約束で、そこには知られざる感涙のエピソードもあったようで泣かせる。

(参考記事:イ・ボミがリオ五輪出場に強くこだわる、たった1つの理由)

韓国はもちろん、日本のファンたちがイ・ボミを応援したくなるのは、イ・ボミが単に強かったり見た目の容姿にあるのではなく、健気で純粋なところにも惹かれているのだろう。

そのリオ五輪出場切符を獲得するためにも、来週から始まる『全米女子オープン』で結果を残したいイ・ボミ。2011年以来5年ぶりの出場となる『全米女子オープン』で、果たして彼女は最高の笑顔を炸裂されることができるだろうか。

“スマイルキャンディ”と呼ばれるイ・ボミの挑戦に熱視線を送りたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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