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キム・キョンテも見送り!!男子ゴルフ“リオ五輪辞退者続出”に対する韓国の反応は?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
リオデジャネイロ五輪への出場を見送ったキム・キョンテ(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

リオデジャネイロ五輪で112年ぶりに正式種目として復活するゴルフ。ただ、男子ゴルフは世界1位でオーストラリアのジェイソン・デイや日本の松山英樹ら有力選手たちが次々と出場を見送っているが、ついに韓国からも出場を見送る選手が出た。世界ランキング42位で、昨季の日本男子ツアー賞金王のキム・キョンテが出場を辞退したのだ。

キム・キョンテと言えば、日本ツアーで2010年と2015年に賞金王に輝いた人物。今季もすでに3勝しており、その勝負強さから日本では“鬼”とも言われている。昨今、日本で活躍する韓国の男子プロゴルファーは増えているが、近年もっとも成功している選手で、韓国メディアも「日本のグリーンの支配者」(『朝鮮日報』)と報じている。

(参考記事:男子ゴルフも韓国勢が席巻中。彼らはなぜ日本に来たのか)

だが、そのキム・キョンテもほかの有力選手同様、ジカウィルス感染症(ジカ熱)への不安から五輪出場を見送ることを決めたという。所属事務所を通じてキム・キョンテは発表している。

「家長として、一人の子どもの父親でもある私としては、感染可能性が非常に低いとはいえ、そのリスクを背負うことができません。家族と話し合い、現在、2人目の子作りを計画していることもあって、五輪に出場しないことが最善という結論を出しました」

キム・キョンテとは過去にもインタビューしたことがあるが、とても穏やかで柔和な笑みを絶やさないやさしい男でもある。礼儀正しく、プロゴルファーという職業を会社経営に例える賢さもある。日本と韓国の関係を語るときも思慮深く考え話すだけに、今回も熟考に熟考を重ねた末の結論だったのだろう。

(参考記事:「プロゴルファーは会社で言えばCEO」と語るキム・キョンテから見た日韓ゴルフ比較)

注目したいのは、キム・キョンテが下した決断に対する韓国の反応だ。例えば韓国では松山英樹の評価が高く、「松山英樹について私たちが知らなかったこと」という特集記事が組まれたこともあったほどだけに、松山が見送りを発表したときには「男子ゴルフのアジア最高・松山もリオ五輪不参加宣言」(『東亜日報』)とも報じられたが、その松山に続いて辞退を表明したキム・キョンテを責めるような声は今のところ少ない。

(参考記事:日本ゴルフ界の希望・松山英樹を韓国メディアはどう見ているのか)

ただ、五輪ゴルフ競技を疑問視する声もある。ジェイソン・デイらが同じよう理由で見送りを発表した際には、「スターたちが不参加、気落ちする五輪ゴルフ」(『スポーツ東亜』)、と報じられたが、キム・キョンテもそれに続くことになったことで「トップランカーたちの辞退ラッシュ、“リオ・エクソダス(大脱出)”が現実に」(『マニア・リポート』)とまで報じれらている。

それでも韓国らしいと思ってしまうのは、そうしたトップランカーたちの不在で自国選手のメダル獲得の可能性が高まったと受け止めていることだ。ゴルフ解説者のキム・ジェヨル氏も、「五輪の優勝競争率は世界ランキング50位以内の選手が出場するメジャー大会よりもはるかに低い。つまり、韓国人選手がメダルを獲れる可能性が高まったということだ」と語っている。

そんな中でにわかに期待を集めているのが、アン・ビョンフンだ。世界ランクはキム・キョンテよりも高い31位で、近年の急成長ぶりから“韓国男子ゴルフの新しい希望”とも言われている。その実力と可能性もさることながら、“韓・中ピンポンカップルの息子”ということから話題性も十分だ。

韓国では最近、男子ゴルフよりも女子ゴルフのほうが関心が高いだけに、余計に期待も大きくなるのだろう。リオ五輪でも女子はパク・インビらドリームチームと呼ばれる陣容が揃った。辞退者続出する男子ゴルフで、韓国がどんな存在感を示すかに注目しておきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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