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プロ野球では2度目!韓国スポーツ選手たちはなぜ八百長に手を染めてしまうのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
八百長容疑が発覚したイ・テヤン(写真提供:SPORTS KOREA)

韓国球界にまたしても不祥事が起きてしまった。NCダイノスの投手イ・テヤンが八百長に加担した容疑で韓国の昌原(チャンウォン)地検特捜部から調査を受けていたことが発覚したのだ。

イ・テヤンは高校時代からサイドスローの本格派として知られ、昨シーズンは10勝5敗を収め、韓国代表として『プレミア12』にも出場した。そんな彼がどのように八百長を働いたのか。

韓国メディアの情報を総合すると、イ・テヤンは昨季登板した4試合でわざと失点したり、わざと死四球を投げて、ブローカー経由で違法スポーツ賭博サイト運営者から金銭を受け取っていたという。この報道に接して真っ先に思い浮かんだのは、「5年前とまったく同じだ」ということだ。

というのも韓国プロ野球では2011年にも八百長問題が発覚している。人気球団LGツインズの投手だったパク・ヒョンジュンとキム・ソンヒョンが八百長に加担していたことが明るみになり、それぞれ懲役6カ月・執行猶予2年の判決を宣告されたのだ。そのときも八百長に手を染めるきっかけとなったのは、違法スポーツ賭博サイトだった。

韓国には違法スポーツ賭博サイトが500以上あると言われてており、そこから誘われる悪魔の囁きに屈して選手が八百長に手を染めてきた。野球だけではなく、KリーグやKBL(プロバスケットボール)やKOVO(プロバレーボールリーグ)でも過去に八百長事件が起きているのである。

(参考記事:逮捕者に自殺者まで!! 不正賭博と八百長が絶えない韓国プロスポーツ界の闇)

なぜ、韓国のスポーツ選手たちは八百長に手を染めてしまうのか。理由はさまざまだが、多くの場合はまず、違法スポーツ賭博にハマり、大金を失ってしまったりうま味を覚えた選手や監督たちが、損失挽回やさらに儲けようと“八百長”に手を染めるわけだ。かつて取材した、とあるKリーガーも言っていた。

「“違法スポーツ賭博よりも確実な投資方法がある。もっと大きな金を稼げるぞ”と、八百長を誘われる。断ると、さらに高い金額を提示され、“すでに多くのチームメイトが協力意思を示しているぞ”と促してくる。だから自分がやってもバレないだろうと錯覚してしまうのではないか」

(参考記事:韓国プロスポーツ界で多発する“八百長”、根本原因はどこにあるのか)

違法スポーツ賭博が八百長の温床になっており、その温床を壊滅させようと警察側も取り締りに動いているが、運営者もドメインやサーバーを変えるなどして対処するので“イタチごっこ”状態。韓国の刑事政策研究所の資料によれば、違法スポーツ賭博市場の規模は31兆1000億ウォンもあるというのだから深刻だ。

違法スポーツ賭博から始まり、やがて八百長にまで手を染めてしまう負の連鎖を断ち切れないところに韓国スポーツ界が抱える闇があるわけだが、失望してしまうのは、韓国球界で昨今、不祥事が相次いでいることだ。名誉毀損、飲酒運転、前代未聞の公然わいせつと続き、今回の八百長スキャンダルと、昨年秋から韓国球界は不祥事のオンパレードと言っても過言ではない。韓国プロ野球界が厳しい批判にさらされているのは言うまでもなく、選手たちのプロ意識や道徳的責任感の欠如が問題視されている。

(参考記事:八百長、違法賭博、性的暴行の次は公然わいせつ罪!! 韓国プロ球界で不祥事が続出するワケ)

韓国プロ野球は近年、かつてないほどの人気の最中にあり、昨年の観客動員数は歴代最高の762万2494人になった。Kリーグとは対照的な活況で、サッカーファンはもちろん、Kリーグ関係者たちさえも「プロ野球の熱狂が羨ましい」とこぼすほどでもあった。

(参考記事:集中連載/韓国2大プロスポーツ徹底比較 Kリーグvs韓国プロ野球)

今年は800万人動員を目標に掲げ、前半戦を終えた時点(7月20日)で494万4613名を動員。目標達成もほぼ確実とさえ言われている。

そんな中で相次いで発覚する不祥事の数々。今回の八百長スキャンダルがプロ野球人気に影を落とす致命傷にならなければいいのだが・・・・。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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