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美しく愛くるしい新体操界の“妖精”美少女ソン・ヨンジェはリオ五輪で輝けるか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
“妖精”“第2のキム・ヨナ”とも言われるソン・ヨンジェ(写真は2012年)(写真:ロイター/アフロ)

「新体操フェアリージャパンに立ちはだかる“第2のキム・ヨナ”」。昨日発売された写真週刊誌の広告にこんな一行があったので雑誌を手に取ってみると、大きく紹介されていたのは韓国新体操界のアイドル、ソン・ヨンジェだった。

記事では新体操日本代表の畠山愛里と比較されていたが、ソン・ヨンジェについてもう少し詳しく紹介すると、彼女は韓国でもっとも期待を集めている女性アスリートと言えるだろう。韓国放送広告振興公社が発表した「韓国人が五輪で見たいと思う選手アンケート」では2位に選ばれているし、通信社『聯合ニュース』は「リオを輝かせるスター」のひとりにソン・ヨンジェを選んでいる。

そもそもソン・ヨンジェは、2010年広州アジア大会で韓国に新体操で初めてメダル(銅メダル)をもたらしたことでその知名度が一気に急上昇。まだあどけなく愛くるしい表情から“国民の妹”“新体操界の妖精”と呼ばれるようになり、アイドル並の人気を誇るようなった。

LG電子、KB金融・損害保険、FILAコリアといったテレビCMはもちろん、プロ野球やKBL(韓国プロバスケットボールリーグ)の始球式などイベントに引っ張りダコだ。ここまでならよくありがちなスポーツアイドルだが、ソン・ヨンジェがスゴイのは、新体操をエンターテインメントにしてしまったことだ。

(参考記事:“新体操の妖精”ソン・ヨンジェの名場面・珍場面・胸キュン場面ベスト32)

というのも、それまで韓国で新体操はメジャーではなかったが、ソン・ヨンジェは競技として新体操をするだけはなく、フィギュアスケートのアイスショーのように彼女の名を冠した新体操の有料ショーを定期的に開催。メディアもその表情を追いかけて、喜怒哀楽をフォトニュースにしてしまうほどの人気ぶりなのである。

そんなこともあってソン・ヨンジェは“第2のキム・ヨナ”とも呼ばれているのだが、そのキム・ヨナとは何かと比較される。出身校、スポンサー、出演するテレビCMの企業まで互いに“ライバル同士”ということもあって、今は現役を退いてさまざまな活動を展開するキム・ヨナとことあるこどに比較にさらされる。

新体操とフィギュアスケケートと競技の性質がまったく異なるにもかかわらず、キム・ヨナのファンからは「実績面ではヨナに到底及ばない」と揶揄されるほどなのだ。

(参考記事:女王キム・ヨナとの因縁多き韓国新体操界の妖精美少女ソン・ヨンジェ)

確かに選手として積み上げてきた実績には大きな開きがある。キム・ヨナは2010年バンクーバー冬季五輪で金メダル、2014年ソチ冬季五輪では銀メダルだが、ソン・ヨンジェがオリンピックでメダルを手にしたことはない。前回ロンドン五輪では個人総合5位だった。

もっとも、韓国人が新体操で個人総合5位入賞を果たしたのは史上初。アジア人としてもかなりの好成績だ。その後も成長を続けており、2014年にはアジア大会で金メダルにも輝いた。

そんなソン・ヨンジェが2度目のオリンピックとなるリオ五輪で目指すのは、個人総合でのメダル獲得。それが実現すれば、韓国人はおろかアジア初の大快挙になるだけに期待は大きい。

しかも、ソン・ヨンジェは今回のリオ五輪を最後のオリンピックと位置づけている。今年で22歳になる彼女は、「成績とは関係なく、後悔のないオリンピックにしたい」と語っているのだ。

冒頭で紹介した写真週刊誌にもあったが、ソン・ヨンジェの豊かな表現力は新体操界でもかなり高く評価されている。その成長過程を見て感じるのは、彼女が成熟さを手にしつつあることだ。

(参考記事:少女から妖艶な美女へ!! 写真で見る新体操ソン・ヨンジェ成長の記録)

10代の頃から“国民の妹”と呼ばれ、常に期待と注目を集めてきた彼女だが、その新体操人生の集大成として挑むリオで、果たして光輝くことができるだろうか。ぜひとも注目しておきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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