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「死んで蘇っても我が国では作れない」という韓国の『ポケモンGO』フィーバー

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
束草へのバスツアーを企画する旅行代理店のサイト

世界中で爆発的な人気を呼んでいる『ポケモンGO』。韓国では政府が国家の安全保障を理由にグーグルに精密地図を提供していない関係でいまだ未配信の状態だが、『ポケモンGO』関連のニュースがない日がない。アメリカや日本のフィーバーぶりはもちろん、なぜかプレイ可能な束草(ソクチョ)市に人が殺到していることなどが話題になっている。

「ポケモン・シンドローム」「ポケモン・アリ(病)」などの造語も生まれているほどで、芸能人も『ポケモンGO』に夢中らしい。昨今の“マッスル美女・フィットネス”ブームの牽引者のひとりで、そのプロモーションの良さから“リアル版峰不二子”とも言えるイェ・ジョンファも、束草まで行き満足げな笑顔や大胆なポーズで『ポケモンGO』を楽しんでいたことが記事になったほどである。

(参考記事:韓国でも人気の『ポケモンGO』に、美女フィットネス・タレントのイェ・ジョンファも参戦!!)

このほかにも歌手のチョン・ジュニョン、韓国系アメリカ人歌手のエリック・ナムなど、多数の芸能人たちが『ポケモンGO』を楽しんでいることを、それぞれのSNSなどを通じて明かして話題になっている。人気アイドルグループ『EXO』のメンバーであるチャンヨルに至っては『ポケモンGO』の代替としてプレイしていた『ポケモン・ゴールド』が不法ダウンロードだとファンから指摘され、「軽率な行動でした」と謝罪したほど。

この一例でもわかる通り、もともと韓国でも『ポケモン』は人気だった。私の記憶が正しければ、韓国では1999年頃に民放テレビ局SBSで吹き替え版アニメが放送されるようになった。

ちょうど私が韓国と日本を行き来するようになった頃で、ホテルで偶然見かけた『ポケモン』に親近感と違和感の両方を感じたことを覚えている。ピカチュウの声は日本と同じだったが、ハングルを喋るサトシはなぜか“ジウ”と名前を変えられていたのだ。

いずれしても韓国でも『ポケモン』は人気で、当時は韓国の製菓メーカー『シャニー(Shany)』という会社から『ポケットモンスターパン』なるものも発売されていたと思うが、興味深いのは韓国で『ポケモンGO』にもっとも熱狂しているのは、その頃に小学生だった子供たち。つまり、20〜30代の男性たちだという。

この世代は日本文化への親しみも深く、“オドック”も多い。彼らからすると『ポケモンGO』は子供の頃の懐かしさを味わいつつ、AR(拡張現実)を妙を楽しめる待望作だったわけだ。

そのオドックたちが呆れるのは、『ポケモンGO』の爆発的人気ぶりを受けて、『ポロロGO』の開発が進められているというニュースだ。『ポロロ』(正式名『ポンポンポロロ』)とは韓国で絶大な人気を誇る児童アニメなのだが、『ポロロ』と『ポケモン』を同列に語ること自体に無理があることは否めない。

「そういった短絡的な発想だからダメなんだ。だから韓国はいつまで経っても『ポケモンGO』を作れない」と嘆きの声も聞こえて来るほどだという。

(参考記事:韓国が「死んで蘇っても我が国では『ポケモンGO』を作れない」と嘆いている理由)

だが、ゲームマニアや“オドック”たちが自国のコンテンツ文化を嘆く一方で、『ポケモン』の“ポ”の字も知らなかった行政担当者や企業は厚かましく商魂たくましい。

前出した束草市は「ポケモンの聖地にようこそ」という看板をかかげているし、多くの企業が『ポケモンGO』のゲーム画面やキャラクターを露骨に使ってビジネスにつなげようと躍起だという。それも許可なし許諾なしでのやり放題だというのだから、呆れてしまう。

(参考記事:『ポケモンGO』人気に便乗する韓国の“著作権無視”が深刻レベル)

先日は韓国南東部の蔚山(ウルサン)市の一部地域でも『ポケモンGO』がプレイできることが判明し、一日で5000人の観光客が押し寄せていることが明らかにもなったが、蔚山市は7月25日付けで“ポケモンGOサービス支援状況室”を立ち上げるなど、「ポケモンGO特需を逃すな!!」と言わんばかりに鼻息が荒いという。

未配信な上に確かな手順も踏まず、しかし盛り上がるばかりの韓国『ポケモンGO』フィーバー。さらなる問題や騒ぎに発展しなければいいのだが・・・・・・。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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