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木村沙織と女子バレー日本代表を韓国の選手とメディアはどう見ているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国の選手やメディアも木村沙織や長岡望悠を警戒し高く評価している。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

リオデジャネイロ五輪・女子バレーボールの予選グループの初戦で対決する日本と韓国。韓国メディアは「リオ五輪ライバル熱戦、女子バレー“宿敵”日本を超えればメダルが見える」(『イーデイリー』)などとしているが、その韓国女子バレーの関係者たちは日本女子バレーをどのように分析して警戒しているのだろうか。今回はライバル側の視点から見た、日本女子バレー代表を紹介したい。

■今のチームは日本への恐怖心はない

「ロンドン五輪のことを思い出すと今も悔しい気持ちになる」と語っているのは、妹ハン・ソンイとともにロンドン五輪で韓国の主力を務めたハン・ユミだ。ふたりは“韓国女子バレー界の美人姉妹”として今でも人気だが、ハン・ユミはこう言っている。

「初戦の韓日戦は韓国選手たちにとってプレッシャーかもしれない。前回ロンドンの悔しさを繰り返えしたくないという思いが裏目に出ることもあるので、後輩たちにはいらぬ負担を抱えずにいつも通りにやれと言いたい」

前回ロンドン五輪3位決定戦では日本に0-3で完敗した韓国。通算成績でも韓国が49勝86敗とかなり負け越しており、韓国では「日本の女子バレーは強い」と評価する者が多いが、今の韓国に日本に対する苦手意識はないらしい。

そう断言しているのは、チームを率いるイ・ジョンチョル監督だ。監督は韓国のバレーボール雑誌『THE SPIKE』のインタビューで言っている。

「ロンドン五輪3位決定戦時よりも今年5月のリオ五輪最終予選のほうがチーム状況がいい。今のチームは日本への恐怖心もなくなり、相手に押されることなく日本を制圧できるという精神的な部分も備わった」

(参考記事:女子バレー日韓戦の前に知っておきたい韓国代表の状況と要注意選手

■警戒すべきは木村沙織だけじゃない

このインタビューでイ・ジョンチョル監督は日本についてこんなことも語っている。

「日本は変則攻撃が巧みで、組織的な守備力を備えている。ただ、竹下佳江が引退したあと、日本は苦しいときにセッターが試合を動かすという本来の良さが低下している。我々はそこを多彩な攻撃で突いていきたい」

その攻撃の中心となるのがスーパーエースのキム・ヨンギョンだが、日本がマークしなければならないのは彼女だけではないだろう。韓国メディアに日本戦のポイントを問われた彼女は「攻撃と強いサーブで日本を切り崩していきたい」と語っている。韓国メディアも「組織力が強い日本を揺らすにはサーブで崩していくしかない」とする。『SPOTV NEWS』の日本分析はこうだ。

「5月の最終予選で韓国が日本に勝てた要因は強いサーブだった。日本は韓国のサーブに苦戦していた。それは最高のリベロだった佐野優子の引退による空白も大きかった」

このように、4年前のロンドン五輪時と現在のチームを比較して「日本は4年前よりも戦力が落ちた」という意見が複数の韓国メディアで見受けけられる。韓国のメディアなりに根拠立てしており、ハッとされせるところもあったが、韓国が日本に対して警戒を緩めているわけではない。

(参考記事:木村沙織と日本女子バレーは「強いが怖気づく必要はない!!」という韓国メディアの根拠とは?

特に日本のスーパーエース木村沙織に対しては警戒心を強めている。キム・ヨンギョンも言っている。

「木村選手とは日本やトルコで一緒にプレーした仲。とても素晴らしい選手。日本で最も重要な選手でしょう」

韓国メディアの中には木村沙織に加え、長岡望悠、迫田さおりにも強い警戒を示しているメディアが多い。『SPOTV NEWS』の分析はこうだ。

「長岡の高いジャンプ力と強弱を巧みに調節する攻撃は一級品だ。迫田は過去の韓国戦で強い精神力と集中力を見せてきた。鍋谷友理枝と石井優希も侮れない。ふたりとも背は高くないが、一直線に放たれるスヒーディーなトスを電光石火のようなスパイクで決める。トスが悪いときは連打をはじめとする変則攻撃で相手のブロックを崩すなど、巧みだ」

『SPOTV NEWS』の記事は日本への警戒心の強さを伺える内容だが、それだけ日本女子バレーを評価している裏返しとも言えるだろう。

■日本特有の粘り強い組織力は今も生きている

キム・ヨンギョンも大会前に行われた共同インタビューで日本についてこんなことを言っていた。

「日本特有の粘り強い組織力は今も生きている。日本は点差が開いても最後まで諦めないし、穴がない。 誰かひとりが突出しているわけではなく、チーム全員ひとつになって動く。 つまり、“誰かを防げば勝てる”という相手ではないんです」

そんな日本に対し、韓国もヤン・ヒョジン、パク・ジョンアなどがキム・ヨンギョンに集中するであろうマークを分散させることが重要だとするメディアは多く、韓国女子バレーボール界の“美顔ツインズ”でチーム最年少のイ・ジェヨンにかかる期待も大きい。

リオ入り後はトラブル続きで、一時は腰の違和感を訴えたキム・ヨンギョンの欠場さえも心配された韓国。はたして本日行われる女子バレー日韓戦の勝利の行方はいかに。注目の対決は日本時間で本日8月6日、午後9時半に決戦の火蓋が切って落とされる。

(参考記事:実は日韓戦どころじゃない韓国女子バレーのリオ五輪ドタバタ劇

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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