リオ五輪開催中も違法スポーツ賭博が尽きなかった韓国の知られざるギャンブル事情と依存症
リオデジャネイロ五輪開催期間中、韓国のオリンピックに関する報道を見ていると、時たま「五輪サッカー、ブックメーカーは“韓国がホンジュラスに勝つ”と予想」なとど、海外ブックメーカーの予想を参考にしている記事が散見した。
オリンピック開幕日から韓国警察は国内の違法賭博サイトに対する取り締まりを強化していたが、日本に比べると韓国はやはり違法なスポーツ賭博が身近なようだ。
実際に、違法スポーツ賭博は後を絶たず、オリンピック開催中の8月16日にも、日本にサーバーを置いた違法のスポーツ賭博サイトの運営者5人が逮捕されている。彼らは9つのサイトを運営しながら、会員を中心に693億ウォン(約69億円)もの金額を扱っていたという。
韓国のスポーツ選手たちが八百長事件を起こす原因のひとつは、間違いなくこの違法スポーツ賭博にあると言ってもいいだろう。
(参考記事:韓国プロスポーツ界で多発する“八百長”、根本原因はどこにあるのか)
韓国で違法スポーツ賭博が隆盛する背景にはいくつかの構造的な理由があるが、違法スポーツ賭博の控除率、つまり胴元が持っていく“テラ銭”があまりに低いこともひとつの理由だろう。
例えば、韓国の国民体育振興公団が主宰する「スポーツトト」(国民体育振興投票券)の還元率は60%ほどだという。控除率は40%となるので、1000円を賭けて600円が投票者に戻ってくるということだ。
一方、韓国の違法スポーツ賭博サイトの控除率は10%ほど。ギャンブル好きが同じ1000円を賭けて、600円戻ってくる合法ギャンブルと、900円戻ってくる違法ギャンブルのどちらに手を出すかは火を見るよりも明らかだろう。過去にも紹介してきたが、有名スポーツ選手たちの違法賭博も絶えないのだ。
とはいえ、違法は違法。韓国には日本と同様に競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルがあるので、そちらを楽しめば良いのではと思うが、そうもいかないようだ。
例えば、公営ギャンブルの代表格の競馬。韓国競馬にはテレビCMの禁止などの厳しい規制が実施されており、1レース当たりの馬券1枚の購入限度額は1人10万ウォン(約1万円)以内となっているらしい。
さらに韓国競馬には、違法スポーツ賭博のような手軽さもない。以前、韓国馬事会(KRA)の国際協力部長チョン・テイン氏を取材したことがあるのだが、こう嘆いていた。
「競馬の売り上げが下がっている理由として大きいのは、ネット投票が禁止になったことです。スマートフォンの普及率が上がった現在、手軽に馬券を購入できるネット投票がないことは、売り上げに悪影響を与えられていると考えざるを得ません」
(参考記事:韓国馬事会(KRA)部長に聞いた、初めての“競馬日韓戦”と韓国競馬の実状)
日本の馬券は売り上げの5割がネット投票とされていることからも、その規制がいかに利用者にとって不便かがわかる。
そういったギャンブル業界の構造的な問題だけでなく、国民性も関係しているかもしれない。というのも、韓国人には韓国特有の病気・火病(ファビョン)などがあるのだが、ギャンブル依存症の有病率も異常に高いのだ。
韓国のギャンブル産業を総合的に管理する「射倖産業統合監督委員会」によると、韓国人のギャンブル依存症の有病率は、2014年基準で5.4%となっている。
日本の厚生労働省「第2回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会」の資料にあるように、アメリカ(1.4%)、カナダ(1.3%)、イギリス(0.8%)、スペイン(1.7%)、スイス(0.8%)と比べても、数字が群を抜いて高い。日本も非常に高いが、韓国はそれ以上なのだ。
(参考記事:ギャンブル依存症に苦しむ韓国。日本と違ってパチンコもないのに…なぜ?)
リオ五輪で思うような結果が出なかった韓国。その遠因に、スポーツを純粋な目で見られない違法なギャンブルが関係していたら、それほど悲しいことはないだろう。一日も早い改善策が求められている。