大型連休になるとなぜか整形、うつ病、夫婦ゲンカが増える韓国の“秋夕”裏事情
陰暦8月15日にあたる本日9月15日を韓国では、秋夕(チュソク)と呼ぶ。毎年、秋夕の日は祝日で、その前後日も休日となっている。
今年は、9月14日から日曜9月18日までの5連休。日本のお盆休み同様、秋夕の大型連休には全国に散らばった家族や親戚が故郷へ戻り、祖先の祭祀や墓参りなどを行うのが一般的だが、使い方は人それぞれのようだ。
例えば、近年は“秋夕整形”なるものが流行っているらしい。「美人女優や人気アイドルも大胆告白する美容整形大国・韓国の今どきの価値観」については以前も紹介したが、最近は秋夕になると連休初日に手術を受けて、その後に休めば、連休明けから日常生活を送ることができるということで人気が殺到しているとか。
今年もそうした需要に答えるように、連休初日の9月14日にだけ割引サービスを行う整形外科も少なくなく、実際に予約もいっぱいのようだ。
(参考記事:大型連休を利用した“秋夕整形”に走る20代の女性社会人たちの事情)
大型連休だけにうらやましい限りだが、“秋夕うつ”という言葉が生まれるほど、秋夕シーズンをわずらわしく感じる人々もいるという。
最も憂鬱になっているのは主婦たちだ。夫の実家に帰省し、一日中料理を作り、膨大な量の皿洗いをこなさなければならない。
おまけに、姑や小姑、さらにはその親戚連中からの嫌みに耐えたり気を使ったりと、精神的にも疲れる。この期間、主婦たちの間ではなぜか「偽ギプス」なるものが流行るというのだから笑えない。私の妻も朝から祭祀の準備で忙しそうにしている。
(参考記事:楽しいはずの大型連休に韓国で「偽ギプス」や「休日出勤」が流行る背景)
主婦ばかりではない。既婚男性たちには、帰省ラッシュの運転という試練が待ち受けている。
昨年、サムスン交通安全文化研究所が発表した「秋夕連休、安全運転不履行・交通事故分析結果」によると、過去7年間に帰省の道で起きた交通事故のうち、33.5%が突然の車線変更などの乱暴運転だったという。
また、韓国道路公社によると、去る2014年の秋夕連休中に高速道路に捨てられたゴミは、一日平均23トンで、平日の13.4トンよりも71.6%も増加している。ストレスの溜まり具合が伝わってくるデータだ。
ストレスが溜まるからからか、秋夕シーズンには夫婦ゲンカも多発するという。ある調査によると、秋夕連休明けの離婚率は普段の20%、夫婦ゲンカは60%も増加するらしい。
京畿道南部地方警察庁によると、昨年の秋夕連休期間、管轄内における家庭内暴力の申告件数852件となり、普段の53%も増加していたこともわかった。
ただでさえ、「怒り調節障害」が増えていると指摘される現代韓国人だけに、過度なストレスは毒にしかならないというわけだ。
(参考記事:韓国成人の半数以上が“怒り調節障害”…理由なき事件・事故が急増中)
秋夕に帰省から逃れるために、アルバイトを入れる若者も少なくないとか。「秋夕を忘れた人々」という韓国メディアの連載記事には、「秋夕の連休は就職準備生たちにとって“黄金アルバイト期間”だ。秋夕のような祝日にアルバイトをすれば、故郷に帰らない名分が立ち、休日手当てまでもらえる」と解説されていた。
実際に韓国のアルバイトサイト『albamon』の1014人を対象にしたアンケート結果でも、秋夕連休にアルバイトをしたいという人が81.5%に上っている。休日手当てがつくことなどが主な理由だが、「親戚などを避けることができるから」という理由も10.9%を占めていた。
経済的な不況から韓国大学生の就職難が叫ばれて久しいが、公務員試験などを目指す学生たちは、親戚から「他の仕事をやらないのか」「来年までには合格しないといけないのではないか」などと小言を言われるのを避けるために、アルバイトに走るようだ。
恋愛、結婚、出産、人間関係、マイホーム、就職、夢を放棄したということで“7放世代”などと呼ばれ、自国を“ヘル朝鮮”と呼ぶ一部の若者たちの本音からすれば、親戚からの小言ほど聞きたくないものはないのかもしれない。
いずれにしても韓国最大の祝日と呼ばれながらも、最近はわずらわしいと思う人が増加している秋夕。今年はなんのトラブルも起きず、多くの人が家族・友人・恋人たちと楽しく有意義な連休を過ごしてくれればと思うかぎりだ。