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「美女コンテストの邪道系」「セクシーさを競っている」との指摘も出てきた韓国のマッスル・ブーム

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
「筋肉自慢がセクシーコンテストに」との声も(写真:SPORTS KOREA)

空前の“マッスル・ブーム”に沸く韓国で、またしても新たな“マッスル・コンテスト”が行われる。その名は『2016 マッスルマニア フィットネス世界大会選抜戦』。昨日9月23日から2日間、ソウルで行われているが、ここまで書いてお気づきの読者もいるだろう。

言うまでもなく『マッスルマニア』は韓国に昨今の“マッスル・ブーム”をもたらした大会だ。

ボディビル&フィットネスで鍛えた肉体美を競う大会として1991年からアメリカで始まり、“奇跡のDカップ女神ボディ”ユ・スンオクが2011年に東洋人としては初となるトップ5入賞を果たしたことでその大会の存在が知られるようになり、『マッスルマニア』受賞者は“マッスルクイーン”として韓国でも一躍、有名人となる。

ただ、その『マッスルマニア世界大会選抜戦』は今年4月に韓国で行われたはずだった。

4冠に輝いたチェ・ソルファは、これまでの“マッスル美女”とは一線を画する“キュートでチャーミングなマッスル美女”として一躍有名人に。6月にマイアミで行われた『FITNESS UNIVERSE WEEKEND』でもミスビキニ部門で1位に輝き、9月13日にはプロ野球の始球式に登場して大きく取り上げられたはずだ。

(参考記事:新たな“女神”はキュートな美少女“マッスル・クイーン”チェ・ソルファ

それからわずか数カ月でまたしても同名大会が開催されるわけだが、主催者側によるといつもの『マッスルマニア』とは趣向が異なるらしい。なんでも今回は一般的なボディビル・コンテストとは異なり、“ミスビキニ”、“マッスルマニア”、“フィジーク”、“モデル”、“フィギュア”の6部門で構成されているという。関係者も韓国メディアの取材に対して言っている。

「参加者たちの個性を生かせるポーズや演技などもしていただき、それを審査します。通常のマッスル・コンテストとの差別化は鮮明で、よりエンターテインメント要素が強いものになるでしょう」

“マッスル・ブーム”の火付け役となった『マッスルマニア』関係者が「差別化を鮮明に」と力説するのは、昨今、急増するマッスル・コンテストを意識しているからであろう。

5月には「WBFF ASIA CHAMPIONSHIP 2016」、6月には「コリア・フィットネスグランプリ」、7月には「HTVコリアフィットネススター・チャンピオンシップ大会」と有名どころを数えただけでも枚挙に暇がない。

この夏は地方都市でも大小さまざまなマッスル・コンテストが開かれており、小さな大会受賞者でも“牛乳肌のマッスル美女”ソ・リナのようにネットで話題になる地域限定有名人まで登場したほどだ。

まして9月3日からは“世界最大規模のマッスル大会”という触れ込み付の「Top Of Muscles」がスタートした。

出場者を「アマチュア」「準プロ」「プロ」と3つのクラスに分けただけではなく、参加資格欄にわざわざ注意書きで「セクシーバック・コリア大会の出場者は除外」とまで記して出場者を限定させたにもかからず、9月3日に行われた第1次予選の参加者は3000人を超えたという。

それどころか「Top Of Muscles」は “国宝級のアップルヒップ”とされる シム・ウトゥムらが審査員を務めただけではなく、司会者には前出のユ・スンオクがサプライズ登場。ユ・スンオクがほかの“マッスル美女”や“フィットネス・タレント”と競演することは稀なだけに大きな話題になった。

(参考記事:魅惑の“マッスル美女軍団”が参戦!? 韓国で世界最大級のマッスル大会の全貌

ブームの火付け役にして本家本元の『マッスルマニア』としては、雨後のタケノコのように開催されるマッスル・コンテストたちを黙って見過ごすわけにもいかなったのだろう。

話題作りにも積極的で、女優のパク・スヨンも『2016 マッスルマニア フィットネス世界大会選抜戦』への出場も表明しているし、受賞者は11月にアメリカ・ラスベガスで行われる『FITNESS UNIVERSE WEEKEND』への参加が特典として授けられるという。

まさに本家本元の意地を見せつけているようだが、韓国のマッスル大会の乱立はそのまま、美女コンテストの乱立と言わ始めているのも事実である。

韓国のミス・コンテストの多さや、『ミス・セクシーバックコンテスト』に潜む矛盾については以前も指摘したが、このままではマッスル・コンテストも「筋肉美ではなくセクシーさだけを競う大会になってしまう」という懸念の声もないわけではないのだ。

実際、すでに大衆からは「美人コンテストの邪道系」「筋肉美よりも肌の露出を競っている」との皮肉も聞こえつつある。

はたして韓国の“マッスル・ブーム”は今後どこに向かって行くのか。その行方を占う意味でもブームの火付け役となった『マッスルマニア』の新設大会には注目しておきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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