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ACL常連の全北現代に審判買収の処罰が下るも、身内に甘すぎるKリーグ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ACLでは準決勝に駒を進めているが…(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

Kリーグ2連覇中で絶対王者とされる全北現代モータースの審判買収問題に対する処罰がようやく下された。

全北現代のスカウトがKリーグの審判2名に金品を渡して試合で有利な判定をするよう嘆願し、審判2名も1試合あたり100万ウォンの現金を受け取っていたことが発覚したのは5月23日。あれから4か月が過ぎて、ようやく処罰が下された格好だ。

(参考記事:今度は王者・全北現代に審判買収疑惑。Kリーグはなぜこうも不祥事を続けるのか)

本日9月30日に賞罰委員会を開いたKリーグが全北現代に下した処罰は、「勝ち点9の剥奪と制裁金1億ウォン」。Kリーグのホ・ジョンム副総裁は、「Kリーグのファンのみなさんに謝罪する。裏で行われた悪習が繰り返されればKリーグの存在自体が危うくなるという絶体絶命の心情をもって、公正なKリーグになれるようすべての力量を集中させる」と繰り返し謝罪したが、まったく納得できないという声が多い。

というのも、問題のスカウトは9月28日に懲役6か月・執行猶予2年を宣告されているだ。疑惑発覚時、全北はクラブの公式見解を発表したが、あくまでも責任はスカウト個人に押し付け、クラブが関与したものではないとうやむやにしたが、法の場で有罪判決を受けたということは、もはや疑惑ではなく、買収があったということだ。

(参考記事:全北現代スカウトが審判買収!! クラブは公式見解を発表したが……)

関与者が法的に有罪判決を受けた以上、全北も厳しい処罰は免れず、サッカーファンの間ではチャレンジ(2部リーグ)降格を求める声もあったが、「勝ち点9の剥奪と罰金1億ウォン」では正直甘すぎるだろう。

実際、Kリーグは甘すぎる。昨年12月にも慶南FCの審判買収が発覚。慶南FCはKリーグ・チャレンジ(2部リーグ)降格の危機にあった2013年と2014年に、あろうことかクラブ代表が審判に有利な判定をするよう持ち掛け、金品を渡していた。その際も、「勝ち点10剥奪、制裁金7000万ウォン」で収めてしまっている。あまりにも身内に甘いと言わざるを得ない。

前出したが、全北現代はKリーグ2連覇中のチャンピオンだ。今季も第32節を終えた時点で勝ち点68と断トツのトップを走っている。勝ち点9を剥奪されても1位にあるし、ACLでは準決勝に駒を進めている。

FCソウルとのKリーグ対決となったACL準決勝1stレグでは4-1の大勝を飾り、決勝進出もほぼ確実になりつつあるが、どうもスッキリしない。今季は「ACLで改めて問われるKリーグの存在意義」というテーマもあったが、仮に優勝しても3年前の不正は払しょくできないし、「汚れたチャンピン」というレッテルはついて回ってくるだろう。

今回の件でKリーグはダーティーなイメージが降りかかったが、結局、自浄はできないのか。しかも、今年はサッカーだけではなく、プロ野球で八百長、レスリング界で暴力沙汰、水泳界で隠し撮りなど、不祥事続きの韓国スポーツ界となっている。

(参考記事:腐り疲弊し岐路に立つ韓国スポーツ。その病弊の背景にあるエリート主義と拝金主義とは!?)

今回の結果を受けて、メディアやファンから失望や反発の声が上がるのは間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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