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わさびテロ、不適切アナウンス、理由なき暴行…それでも韓国人が大阪を愛してやまないワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

韓国で大阪に対する注目が集まっている。

事の発端は、一大騒動となった大阪の寿司屋「市場すし」難波店の“わさびテロ”だ。同騒動を受けて「日本が好きだったのにさすがに反感が生まれた」などと反応していた韓国人たちに、追い打ちをかけるような出来事が起こっているのだ。

南海電鉄で「外国人多くご不便をおかけします」というアナウンスが流れたというニュースが出たと思えば、大阪の道頓堀を訪れた14歳の韓国人観光客が日本の青年にいきなり暴行を受けたという報道まで飛び出した。

(参考記事:「大阪が“嫌韓注意報”で大騒ぎ」…今度は14歳の韓国人旅行者が日本人に殴られた!?

大阪で立て続けに起きているこれらの事件に対して、多くの韓国人がショックを隠しきれない。というのも、日本を訪れる韓国人旅行者にとって大阪は最も人気のある旅行先だからだ。

ホテル・航空券などのオンライン予約を行う旅行会社エクスペディアが発表した2016年上半期の韓国人に人気の観光地トップ10を見ると、日本の観光地が3つもランクインしていることがわかる。そして、東京(5位)、沖縄(4位)を退けて、2位にランクインしているのが大阪なのだ(1位は韓国の済州島)。

では、なぜ韓国人は大阪を好むのだろうか。

最もよく挙げられる理由は、「街や人々の雰囲気が韓国に似ていること」。活気と人情が韓国に近く「大阪にはなぜか親近感が沸く」という人たちが、私の周りには実に多い。スポーツ選手、芸能人、ビジネスマンに古くからの友人まで皆、大阪が大好きなのである。

また、移動時間の短さも挙げられる。ソウルから大阪までは飛行機で1時間40分ほど。ソウルから東京が約2時間15分なので、韓国人にとっては東京よりも大阪が近いことになる。

加えて、格安航空会社が大阪行きの魅力的な格安プロモーションを常時実施している影響もあるだろう。旅行会社「ネイルツアー」のデータを見ても、2015年に韓国人が最も訪れた地域(短距離)は大阪(11%)で、3位の東京(7.2%)よりも上だ。そして同社も大阪人気の理由について「格安航空会社が先を争って、魅力的な特価プロモーションを常時実施している」と明かしている。

食べ物も間違いなく大阪が韓国人に愛される理由だろう。

大阪旅行に関するブログを見てみると、「大阪で人気ランキング1位のたこ焼き」「私の味覚を刺激した大阪のステーキ丼」「大阪旅行:大阪の牛カツ」「食べ歩き:シルクプリン、芋ようかん、大阪焼き」などなど、食べ物に関する記事がずらり。大阪特有の食べ物だけでなく、寿司やスイーツなどを紹介する人も多かった。

また、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどのテーマパークをはじめ、大阪城や四天王寺など歴史的建造物、京都や神戸などへのアクセスの良さ、さらにショッピングできるところが豊富なことなどが人気の理由だそうだ。

(参考記事:「ロイヒつぼ膏」「ほろよい」「アイボン」韓国人絶賛の日本商品はこれ!!

つまり、韓国人にとって大阪は、“近くて安くて、楽しく好感が持てる街”なのだ。

その一方で、消去法として大阪を選ぶという人も少ないながらいる。東京に比べれば放射能の影響が少ないという理由だ。

生まれも育ちも東京の私が呆れ顔で「何をそんなに心配するのか。正直、不快だ」と言っても、韓国の友人たちの中には未だに放射能に対して敏感に反応する人が多い。

先日も「全身が青色のニホンアマガエルが8月以降、埼玉県内で相次いで見つかり、地元で話題になっている」などの日本のニュースに触れて、「東京は終わった」などと否定してたので、思わず口論になってしまった。

(参考記事:「東京で奇形生物」に「ほら見ろ!!」の声…日本以上に敏感な韓国の“放射能アレルギー”

このように、理由を挙げればそれこそキリがないわけだが、とある韓国人は「大阪は観光するのに最高の場所。雰囲気が韓国に似ているし、韓国人観光客も多い。日本と韓国の雰囲気をすべて味わえる」とも。どこか親近感が湧くという韓国人が少なくないようだ。

そんな愛してやまない大阪で、韓国人観光客にも関係する騒動が立て続けに起きてしまっている現在。「短期間で、内容濃く、楽しく安全に」を求めて大阪を訪れている韓国人旅行者にとっては、あまり好ましくないニュースではあることは間違いないだろう。

ただ、真偽が定かではない噂が飛び交うことも好ましくない。韓国も感情的にならずもう少し冷静になるべきだし、日本も問題があるなら解決したほうがいい。一連の出来事がエスカレートしてそれぞれ感情論にまで発展していくことは、両国にとってマイナスであることは確かなだけに、一日も早い問題解決を求めたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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