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見知らぬ女性を殴る男…東京で起きた無差別暴行事件が韓国の“女性嫌悪(ミソジニー)”を連想させる

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

「見知らぬ女性すれ違いざま殴る 容疑の45歳男を逮捕」――。10月8日に東京・豊島区で起きたこの暴行事件のニュースを聞いたとき、まっさきに思い浮かべたことがある。去る5月17日にソウルの江南駅で発生した通り魔殺人事件だ。

被害者は23歳の女性。彼女は偶然出くわした34歳の男に刺されて死亡しており、被害者と犯人に面識はまったくなかった。犯人の残酷すぎる犯行動機も衝撃を与え、韓国社会では以降“女性嫌悪”が完全に一つのイシューとなってしまっている。

(参考記事:“女性嫌悪”が招いた最悪の通り魔殺人事件、その残酷すぎる犯行動機とは

日本でも極論になりがちなネットを中心に、女性を卑下するスラングが増えているように感じていたが、韓国でも始まりはネット上だった。

女性を卑下する“キムチ女”や“ルーザー女”などのスラングが作られ、少しずつ浸透。女性政策研究院の調査によると、54%の男性がこういった言葉に共感を示しており、8.6%の男性がSNSなどで拡散行為まで行っているという。

(参考記事:“キムチ女”に“寿司女”…韓国男性たちに蔓延する「女性嫌悪」とは

一方で、最近は韓国人女性も負けていない。

女性専用の掲示板には「韓男虫」(韓国の男は虫のようだという意味)、「6.9」(男性器の小ささを揶揄)、「グンムセ」(軍+エンムセ=オウム。「女性も軍隊に行くべき」とことあるごとに主張する男)などなど、男性を卑下するスラングが並ぶ。韓国男性たちが「韓国ネットコミュニティ界のIS」と呼ぶとある女性コミュニティでは女性ならではの男性攻撃方法までレクチャーしてあり、それを実践してみた感想まで載っているのだから、ゾッとしてしまう。

男性vs女性の構図が浮き彫りになっているからか、韓国の未婚率は1960年の2.1%から、2010年には39.9%(いずれも韓国統計庁)にまで上昇。統計開発院の「韓国の社会動向2015」を見ても、未婚率は30~34歳38.5%、35~39歳19.1%となっており、1995年から2倍以上も上がってしまった。韓国で「一人世帯」が急増しているのは、高齢化だけが問題ではないとの分析もある。

韓国社会でイシュー化されている女性嫌悪は、韓国人だけの問題ではないだろう。

日本の寿司屋で起きた問題を“わさびテロ”などと皮肉っていた韓国だが、韓国を訪れる外国人旅行者、とりわけ女性観光客のトラブルが増えているという。

特にオーストラリアでは、「女性観光客にとって危ない国」ランキングのトップに、韓国の名が挙がるようになってしまったらしい。

(参考記事:外国人女性の被害続々…“女性観光客にとって危ない国”に落ちた韓国

ネットから始まり、現実社会へと蔓延して衝撃事件にまで発展してしまった韓国の女性嫌悪。日本が同じ道を辿らないことを願うばかりでならない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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