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銃乱射事件でも恐れ知らず!! 事件・事故現場で光る韓国の“勇敢すぎる市民たち”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

10月19日にソウル市のトンネル付近で銃乱射事件が起きた。警察官1人が死亡する悲しい結末となったが、韓国のニューステレビ局『YTN』の報道によると、犯人逮捕の陰には市民たちの協力もあったという。

韓国の警察は、犯人逮捕や救助活動に貢献した市民たちに「勇敢な市民賞」を与えている。各地の警察によって表彰の基準は違うが、一般的に、自らの危険を顧みず、他人のために動き、社会のお手本になるような善行をした人に与えられる賞だ。

おそらく銃乱射事件の解決に率先して動いた市民たちも「勇敢な市民賞」を受賞することになるだろうが、韓国にはこうした市民たちのおかげで事件が解決したり、犯罪を未然に防げたケースがいくつかある。

例えば、市民に身近な事故といえる交通事故だ。

韓国警察庁の統計によると、同国内の交通事故は2013年の21万5354件から、2014年22万3552件、2015年23万2035件と増加傾向にある。最近は怒り任せの“報復運転”も増えているというのだから、問題は根深いだろう。

(参考記事:韓国ドライバーの“報復運転”が多発!! 彼らがブチ切れる些細な理由とは

そんな実状を示すように、去る9月、釜山の道路を走っていた幼稚園バスが転倒する事故が発生した。トンネル内でバスが転倒するという大事故だったが、そこには“勇敢な市民”がいた。幼稚園バスのすぐ後で車を走らせていたチョ・ギョンスさんだ。

彼はすぐに車を止めて、救助活動を開始。バスの窓ガラスを割って中に入り、子供たちや運転手を助けたのだ。チョさんをはじめとする市民たちの素早い対応によって、救助隊が到着する前に幼稚園児21人など全員が無事に助けられたのだった。

毎朝のように通勤で利用する地下鉄も、ときには身近な事件・事故現場となる。韓国の地下鉄は最近、脱線事故を“訓練”と偽るなど、何かと悪いニュースが続き、“地獄鉄”などとも呼ばれているというくらいだ。

(参考記事:韓国の若者たちが自国の地下鉄を“地獄鉄”と呼ぶようになった3つの理由

しかし、そんな問題が少なくない地下鉄にも勇敢な人たちはいた。

去る5月、地下鉄2号線の車内に、刃渡り20センチの凶器を持った男が現れる事件が起こった。夜8時、男は泥酔状態だったという。このままでは怪我人が出ることは必至な状況だ。しかし連絡を受けた駅員はすぐに現場に駆けつけ、男を電車の外に誘導。そして、スキをついて凶器を奪い、男を取り押さえて警察に引き渡したという。

勇気ある駅員によって怪我人はなし。「勇敢な市民賞」を受賞するに相応しいエピソードではないだろうか。

その他に多いのは、痴漢から女性を救ったというケースだ。例えば、9月に「勇敢な市民賞」を受賞したヒョンさんは、20代女性に嫌がらせをする痴漢を撃退している。過去には、女性を襲う泥酔男を捕まえた野球解説者などもいた。

韓国ではネットを中心にした女性嫌悪(ミソジニー)が拡散する一方で、勇敢な男性たちも確実に存在するのだ。

こうして市民の活躍ばかりを紹介すると、「警察がふがいないのか」と誤解を与えてしまうかもしれないが、韓国では警察官という職業の人気はそこまで低くない。

安定した職場を求めるという側面も強いが、警察公務員を目指す人は多く、警察庁によると、今年の2次警察公務員採用試験の志願者は約6万人で過去最高となっている。定期的に美人警官が取り上げられたりする現状を見る限り、決してイメージは悪くないとも言えるだろう。

(参考記事:世界中のネットで話題になった韓国の“美しすぎる女性警察官”の意外な正体

何かと社会問題が指摘されている一方で、勇敢な市民たちの活躍も伝わってくる最近の韓国。多発するさまざまな問題は一刻も早く解決する必要があるが、「勇敢な市民賞」を受賞した彼らには拍手を送りたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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