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月給20万円以下が4割強!韓国サラリーマンの「リアル」と涙ぐましき「防衛策」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

仕事内容が過酷であっても、それに見合う報酬がもらえるのであれば「ブラック企業」ではないのでは――。そんな日本で話題のニュースを見ながら、韓国のサラリーマンの現状を調べていると、興味深いデータが見つかった。

10月26日に韓国統計庁が発表した「2016年上半期地域別雇用調査・就業者の産業と職業別特性」だ。同資料によると、1946万7000人いる韓国のサラリーマンのうち、月収「100万ウォン(約10万円)未満」が11.2%、「100~200万ウォン未満」が34.6%を占めるという。

つまり、韓国サラリーマン全体の45.8%が200万ウォン未満の月収で働いているという結果だ。今現在の韓国経済について、実に90%の人たちが「危機」と答えたという調査結果もあったが、そう言いたくなる気持ちもわからなくもない。

(参考記事:国民の90%が「危機」と答えた現在の韓国経済。その原因はどこに?

韓国サラリーマンの月給で最も多かったのは34.6%を占めた「100~200万ウォン未満」。以下「200~300万ウォン未満」(25.6%)、「300~400万ウォン未満」(14.4%)、「400万ウォン以上」(14.2%)、「100万ウォン未満」(11.2%)の順となっている。前年と比べてもほぼ横ばいの結果となった。

ちなみに、日本のサラリーマンの平均年収が415万円(国税庁民間給与実態統計調査、2014年)なので、単純計算だが12等分すると平均月給は34万6000円となる。日本とさほど物価が変わらない韓国で、月給20万円以下のサラリーマンが半分近い数字となっている今回の調査結果は、韓国社会の世知辛い実態を表しているかもしれない。

実際に、2014年6月に韓国の就職サイトが725人のサラリーマンを対象にした調査でも、97.4%が「ほかの国に移民したい」などと答えている。

(参考記事:財閥一族だけじゃない! 韓国籍から離れ、移民志向が高まっている理由

だからといって、韓国のサラリーマンたちが薄給を嘆いているばかりではない。

会社に勤めていては生活できないと脱サラして、起業する人が増えているのだ。その数は2015年12月の537万人から、今年9月の568万人と、10カ月にも満たない期間で30万人以上も増加している。

特に、サラリーマンのなかでも、最終学歴が大卒の人が起業に乗り出している傾向が強い。昨年は189万人にも上り、韓国統計庁が調査を開始して以来、最多の数字となっている。

とはいえ、起業したとしても成功する人はほとんどいない。それどころか創業1年で潰れるケースが4割もあり、20年以上も企業に務めていたサラリーマンたちの生産性を無駄にしているとの指摘も尽きない。そもそも韓国には、日本のように創業して大富豪になるという夢を描くことすらできない構造的な問題もあるのだ。

(参考記事:日本と韓国の大富豪は何が違う? 億万長者の成り立ちに見る韓国の経済格差

薄給のサラリーマンたちにとって現実的なのは、起業よりも“副業”だろう。

韓国では、本業と別に仕事を持つことを「ツージョブ(2job)」、2つの副業を持つことを「スリージョブ(3job)」と呼んだりするが、サラリーマンたちの副業への意識は高い。とある就業サイトのアンケートでも73.8%のサラリーマンが「副業したい」と答えている。

ただ実際のところ、韓国のサラリーマンたちの多くは日本のサラリーマンと同じように、会社に秘密で副業するしかないという。副業すること自体が本業を疎かにしているように思われ、人事評価に響くと考えるからだ。

日本のロート製薬のように“副業解禁”を望む声も少なくない。ただ、韓国サラリーマンのなかで密かに人気の副業はアダルトグッズ販売などという報道もあり、そんなところにも彼らが秘密にしたい理由があるのかもしれない。

いずれにしても、今回の統計からも明らかになったように、韓国サラリーマンたちの実態は厳しい。抜本的な解決案が求められている。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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