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日本より熾烈で想像を絶する「韓国受験戦争」の知られざる実態

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
試験勉強する韓国の若者たち(写真:ロイター/アフロ)

韓国の受験戦争がピークを迎える。韓国大学統一試験である「大学修学能力試験」、いわゆる“修能(スヌン)”が本日11月17日に行われるのだ。

超学歴社会と揶揄される韓国において、“受験戦争”は日本以上に加熱すると言っても過言ではない。

その本番であるスヌン当日は受験生ばかりでなく、両親や学校、いや警察やサラリーマンまでを含めて、社会全体が“受験生優先の日”になる。騒音防止のために飛行機の離着陸まで調整されるというのだから驚く。

(参考記事:韓国の大学入試「スヌン」がもうすぐ!! “スヌンあるある”をまとめてみた

実際にソウル地方警察庁は11月15日、ソウル地域の受験生のためにスヌン当日に特別交通管理を行うと明かした。地下鉄の駅周辺に「受験生を乗せる場所」を101カ所も設け、パトカーやタクシー454台を配置するという。またソウル地域の各受験会場には、2600人余りを配置して、特別な交通整理を行うそうだ。

逆にいえば、警察が特別な交通整理を要求されるほど混乱するわけだが、実はそうなるのには理由がある。

受験生が試験会場を知るのは、なんと試験前日なのだ。受験生たちはスヌン前日(今年は11月16日)に受験票を受け取って、ようやく自分がどこで試験を受けるのかを知ることになる。カンニング防止のためだという。

その徹底ぶりは、スヌンに携わる出題・検討委員、行政職員、管理要員らにも及ぶ。試験問題の流出などを防ぐために、彼らはスヌン当日までの約1カ月間、合宿という名の“監禁”生活をさせられるらしい。

(参考記事:えっ、そこまで? 韓国大学入試出題委員たちの知られざる「監禁」生活

全大学の入試試験を兼ねているスヌンで高得点を取り、いい大学に入る。そのための一発勝負なだけに社会が受験生を優先するわけだが、先日、とある有名講師が「この国では勉強する必要がない」などと発言して物議を醸した。

ただ、そう感じてしまっても仕方がないかもしれない。

近年の韓国では大学を卒業しても、就職が難しいという現状がある。韓国統計庁によると、大卒失業者は約31万5000人に上り、初めて30万人を突破。大卒失業者が失業者全体の32%を占めているという。

さらに韓国屈指の名門・ソウル大学の世界ランキングの急落や、話題の崔順実の娘チョン・ユラ氏が母親の力で有名大学に入学したことなど、大学への不信感もあるのかもしれない。

そもそも韓国の大学進学率は、OECD加盟国のなかでもトップクラス。2010年基準のデータを見ると71%となっており、日本(51%)に比べると数字の高さがわかりやすいだろう。

ただ超学歴社会であるがゆえに、学歴詐称が話題になることも少なくない。大学教授や芸能人の学歴詐称が発覚することも珍しくなく、昨年も“天才少女”騒動が起こっている。

(参考記事:ハーバードとザッカーバーグが惚れ込んだ頭脳!? 韓国の“天才少女”騒動

いずれにしてもスヌン当日である今日だけは、崔順実ゲートで揺れる韓国も受験生優先になるだろう。一人でも多くの受験生がトラブルなく、持てる実力を発揮できるように願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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