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「格下だったのは我々だった」現地メディアも自嘲する韓国WBC初戦敗北の衝撃度

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国は前回WBCの悪夢にふたたび襲われるのか(写真:ロイター/アフロ)

昨日から始まった第4回WBC(ワールドベースボール・クラシック)で初戦を落とした韓国代表。その衝撃の大きさは、試合結果を伝えた各メディアのヘッドラインからも見て取れる。

「キム・インシク号、出発が軋んだ…イスラエルに衝撃の敗北」(一般紙『世界日報』)、

「出発から赤信号、韓国、延長戦の末にイスラエルに1-2の敗戦」(スポーツメディア『STNスポーツ』)、「衝撃の坩堝、キム・インシク号がイスラエル戦に敗北(スポーツ新聞『スポーツ・ワールド』)などだ。

戦前予想では、イスラエルがWBC初出場で世界ランクでも41位(韓国は3位)ということから「グループ最弱」と見下していたが、「格下だったのはイスラエルではなく韓国だった」(経済紙『韓国経済』)と自虐気味に報じるメディアもあるほどだ。

ただ、負けるべくして負けたという論調も多い。

例えば貧打に終わった打線だ。イスラエルの先発を務めたジェイソン・マーキーはメジャー通算124勝を誇るベテランで、韓国メディアは「彼がメジャー15年間で稼いだ金額は5297万8000ドル(約600億ウォン)になる。今回のWBC韓国代表の全選手年俸を合計しても歯が立たない」と警戒を強めていたが、案の定、まったく手が出なかった。

(参考記事:チームの“年俸総額”は侍ジャパンの3分の1!? 年俸で見るWBC韓国代表

その後もイスラエルの巧みな継投に翻弄され、7安打6四死球でも得点できたのは1点のみ。その原因として挙げられているのが、3番キム・テギュン、4番イ・デホでもある。2人合わせて8打数ノーヒットに終わったが、「致命的だったキム・テギュン、イ・デホの“同伴沈黙”」(ネットメディア『スターニュース』),「チャンスで沈黙した“中心打者”」(『MKスポーツ』)と厳しい。

戦前予想では3番キム・テギュン、4番チェ・ヒョンウ、5番イ・デホのクリーンアップが予想されていたが、強化試合で調子が上がらないチェ・ヒョンウを先発から外す荒治療も成果がなかった。

「韓国の足首を掴んだ“ヘギョルサ”の不在」とは、スポーツメディア『エクススポーツ』のヘッドライン。“ヘギョルサ”とは漢字で書くと「解決士」となり、言わば “クラッチヒッター”のことだが、一部メディアで懸念されていた「解決士不在」のジレンマが、大事な初戦から浮き彫りになってしまった格好とも言えるだろう。

付け加えると、観客動員でも“解決士”は決め手に欠いた。KBO(韓国プロ野球機構)は、韓国で行われる初の野球国際大会だけにファンの関心や来場への呼び水にしようと、全10球団の人気チアリーダーたちの中でも選りすぐりの“チアドル”たちを応援に動員することを発表していたが、観客数は1万5545名。高尺(コチョク)スカイドームの収容人数は1万6800人だが、満員にすることもできなかった。

まさに最悪のスタートを切ったしまった韓国。そのショックの反動から、一部メディアでは「ふたたび蘇る4年前の悪夢」(総合メディア『クッキーニュース』)という言葉も並んでいる。

韓国は4年前の第3回WBCでも、初戦でオランダに0-5で敗れて躓いている。その後、オーストラリアに6-0、チャイニーズ・タイペイに3-2の勝利を飾ったものの、当該チーム同士の得失点差で下回り、1次リーグ敗退の屈辱を味わった。それだけに今回のイスラエル戦敗北はその悪夢再来の前兆になるのではないかと、メディアは気を揉んでいる。

まして韓国が今日対戦するのは、オランダだ。韓国メディアの多くがグループA最大のライバルと警戒を強めてきた相手でもある。大会前は“小久保ジャパン”に同情したり、大谷翔平の負傷辞退を受けて「韓国の優勝が決まったようなもの」とする韓国野球ファンもいたが、そんな憎まれ口も余裕も吹き飛んでしまうほど、韓国は追い込まれしまった。

(参考記事:小久保ジャパン同情論も!? 韓国メディアはWBC日本代表をどう見たか

(参考記事:「韓国の優勝は決まり」の声も…大谷翔平のWBC“辞退”を韓国はどう見たか

果たして韓国は日本に来ることなく、早々と第4回WBCから姿を消してしまうのだろうか。本日行われるオランダ戦にも敗れ2連敗となれば、韓国球界がさらなる衝撃に打ちのめされることになることだけは、間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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